表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

(3)

 高校は、花栄とは違う場所にした。


 花栄は、中学2年に付き合った彼女とすぐに別れた。でもすぐに別の子と付き合い始め、何人かを経て、受験期間に入り、私も、花栄も、厳しい現実に押し流されていた。


 花栄の高校は自転車で15分。私の高校は、電車で15分の場所にある。

 その違いは登校時間にも差が出る為、花栄よりも先に家を出る私には、もう花栄の姿を見る機会さえない。


 私に彼氏が出来たのは、高校1年の夏のことだ。

 サッカー部の先輩に告白されたのは、夏休みに入る直前のこと。もしやからかわれているのかと思い、返事を保留にしたけれど、それからも彼は私を追い掛けてくれて、どうやら本気なのではと思い始めた頃、付き合いをOKした。


 背が高くて細身ながらにしっかりとした体躯で、笑うとふんわりとした印象になる先輩は、私にとって初めての彼氏であり、男として認める初めての相手でもあった。

 一緒に帰るのも、休みの日に約束をするのも、おやすみのメールも、手を繋ぐのも初めてで、ふわふわとした感覚に包まれ続ける何とも言えない幸せな日々。

 たとえ花栄に悪いうわさが立っていようとも、私の心には響かない。そんな私だけの特別な時間。


 花栄が喧嘩をして入院しても、私には関係のないことだった。


 花栄はバカだ。

 先輩と彼女を取り合ったという噂。

 女がらみの噂ばかりが聞こえて来る花栄は、男であり、現実の中にある。

 現実の中の花栄は、私と違う場所にいる。

 私は幸せな私の現実の中にいれば良かった。


 花栄のイメージは夏の夜空だ。

 深夜の満点の星空の下、夢を見続ける花栄だけが、私の中の花栄だった。

 私だけが知る、花栄の真実だった。


 先輩とは冬に別れた。

 飽きられたのか、飽きたのか。

 なんとなく距離が空いたまま、連絡を取り合わなくなった。その期間が長くなり、空白を埋める手立てを見いだせないまま、先輩に彼女が出来たと噂で聞いた。

 手を繋いで歩いた日々が、まだ背中側に張り付いている。でも先輩はもう、私の先輩ではなくなった。

 無言の別れは、何とも言えない空しさを私に植えつけて行った。


 花栄は腕を骨折し、ギプスをはめていたのだと母から聞いた。


 冬、私は窓を開けた。

 そこにない、花栄の姿をイメージして、そっと窓を閉めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ