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神在月  作者: 道成
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神域

『最も新しき神』ってなんかいい響きだなぁ。

始まったオープニングに気分が盛り上がっていく。聞き逃がさないよう、語り始めた目の前のNPC『キク』に意識を集中させる。


「新しき神は古き神の力を受け入れ、来るべき時まで眠りにつくことで創世神への道を歩むことができます」


そこまで言うとキクは考え込むように口元に片手を当てて首を傾げる。しばらくすると「まぁいいでしょう」と両の手を差し出してきた。

それぞれ手の上には拳大の球体が浮いている。右手には鎖を丸く固めたたような球体。左手には様々な色が渦巻きながら輝く球体。


「貴方に用意されたのは私の右手に現れた古き神。貴方を選んだのは私の左手に現れた古き神。望む力をその手にお取りください」


俺のために用意された古き神と、俺のことを選んだ古き神か。これは初期ステータスとか能力に影響が出るんだろうと考えたが、鎖の球体のほうがなんかかっこ良くなりそうだなと思う。けど、どちらかというと用意されものよりも、俺を選んだという言葉に惹かれるものがあることも否定出来ない。しばらくどうしようと悩むが目の前で手を差し出しているクキの無言にさっさと選べと責められてる気分になる。

意を決して心に決めた球体に手を伸ばす。俺が手を伸ばしたのは、俺のことを選んだという様々な色が渦巻く球体だ。俺の左手が球体に触れた瞬間、景色が切り替わる。


見回すと視界は明るく、先ほどと異なり地面や構造物がある。円型の地面は様々な色の、透明度のある石でステンドグラスのようだ。地面の淵からは放射状に8つの道が伸びている。道の先は円型の窪みのようになっておりそれぞれの巨大な球体が浮かび、球体のさらに奥の地面が途切れた先には巨大な石の柱だったり光の柱のようなものが天地に伸びている。


白色の球体と白く輝く光の柱

黄土色の球体と大理石のような石の柱

緑色の球体と吹き荒れる竜巻

青色の球体と雪の舞う氷の柱

黒色の球体と静謐な闇の柱

赤色の球体と燃え上がる炎の柱

水色の球体と滝のように流れ落ちる水の柱

紫色の球体と轟く雷鳴の柱


そういえばイベントが始まってるのだから下着一枚じゃないはずと自分の格好を確認するが、ゆったりとした腰布を一枚まとっているだけだった。触れたはずの輝く球体も消えている。


「ようやくか」


男の声が響いてくる。

こっちもようやくイベントの続きかってとこですよ!


「よもや我等の望む番いが本当に現れるとは」

「これで我等の望む終わりを迎えられる」

「終わりだが、始まりでもある」

「奴が現れた時はどうなるかともおもったがな」


今度は複数の男女の声が響く。声が混ざり始めたので確認しようとチャットウィンドウを見るが何も表示されていない。そもそも最初の男の声も記録されていな。チャットウィンドウに残っている記録はキクのものだ。


「我らがインクナビュラを選び、インクナビュラもまた我らを選んだ」

「ああ、これで終わりだ」

「そうだな、これが始まりだ」


それぞれの球体が急速に輝いていく。その後ろの柱もまたそれぞれに輝き始め存在感を増していく。やがて光は道をも包んで行き俺のいる床もまた共鳴しているかのように朧げにそれぞれの色の光を発し始める。

8色の輝きが俺を包み込もうとするところで突然輝きが収まった。球体も柱もステンドグラスの床も、先ほどの輝きほどでは無いが光を発し続けている。先ほどの光景との一番の違いは、球体へと続く道の入り口に巨大な生物がいることだ。しかもそれぞれの道に一体ずつの計8体。俺は威圧感に押され尻餅をついてしまった。というか腰が抜けたっ!


白い虎

黄土色の蟻

緑の鳥

青い鹿

黒い狼

赤い蜥蜴

水色のイルカ

紫の蛇


ちょっとイルカさんってば空飛んじゃってるんですがどうなのって皆さん俺から目を離さなくてちょと怖い。このままこの巨大生物に蹂躙される負けイベントとかマジ勘弁なんですが。


「そう怯えるな、何もとって食おうというわけでは無い。ただ我らの番いとするだけだ」


突然目の前に微かに透けるような黄色い衣を纏った女が現れる。よく見ると衣に描かれた幾何学模様と同じものが女の肌にはある。美人だが胸がでかいし露出度も多めだ。透けてる衣を纏っていてなんとも扇情的だ。だがしかし残念ながら巨乳も露出多めも好きでは無くむしろ苦手な俺にとっては無用の長物である。


「ふむ、この姿はあまり好みでは無かったか。といっても本来の姿であの様だからな、半神の姿をとって完全に拒絶されても困るのだ。許せ」


女は膝立ちになると座り込んでいた俺の顔を胸に抱いた。

柔らかい胸に顔が埋れ息が苦しくなる。慌てて押し返そうとするが両手の指が女の胸に埋れ、その暖かさと柔らかさに思わず手を離してしまう。


「やめ……苦し……っ」

「おやおや、そのまま掴んで押し返しても良かったのだぞ。我らが番いは可愛いな」


笑いながら頭を撫でてくる女に顔が赤くなるのを感じる。よく見ると俺を抱いている女以外にも、いつの間にか7人の男女に囲まれていた。

人の姿をしたものから異形の姿をしたものまでいる。異形のものは所々身体を鱗や獣皮が覆っていたり角や翼が生えていたりと半獣人といった姿だ。


「番いってなんだよ、とりあえず離してくれ」

「新しき神よ、我等は力を継ぐものとして其方選んだ。そして其方も我等を選んだ。あの女も言っておっただろう。『新しき神は古き神の力を受け入れ、来るべき時まで眠りにつくことで創世神への道を歩むことができます』と、そういうことだ。二つ目については済まないが離すわけにはいかぬ。まずは我から契るからな」


女は俺の髪を弄りながら抱きしめた腕を緩めようとしない。どうやら彼らは滅びたという古き神なのだろう。契るってなんだよこれってエロゲーじゃないだろーてかそもそもこんな周りに見られながらする趣味は俺には無い!


「古き神は滅びたんじゃ無かったのか」

「ああ、其方らが古き神と呼ぶ神々は一柱残らず滅びた。勿論我らもすでに滅んでいる。このように滅びた後もまだ続いているのは我らのように力の強い神だけだ」


それも時間の問題だがなと女は静かに付け足した。

それに続くように周囲を囲んでいた古き神たちも語り始める。


「本来ならば新しき神への力を継がせることが出来るのはは一柱につき一柱のみであった」

「だが我等は最も古き真なる神である」

「その力が千々にされ神ならざるものにも与えられるという事は認められぬ」

「神の力は神のために」

「ゆえに我等は八柱にして一柱となった」

「神以外の存在へ一滴であろとこの力を注ぐことは許されぬ」

「我等八柱の力を余さず受け入れられる器をもつ新しき神がいなければ無へ消えることを選んだのだ」


なんとなく言いたいことは分かるが7人一遍に喋られても消化できないんだって!女は俺の髪に指を通しながら呆れたような顔をして周囲の連中を見ている。


「まぁ待て。まずは土の神たる我に任せるという話であったろう。其方もそう戸惑うな。其方には我等と契り子を成してもらうだけだ」

「子供ー!?」


女……土の神は俺のことを見つめながら話を続けていく。


「ここでいう契りとは交わることであり、子とは力のことだ。安心しろ、土の神たる我が最初に交わることで内から其方の器を保護、強化することができる。次に治癒が得意なものから契っていけば最悪の結果になったとしも壊れてしまうということはあるまい」


交わるって何!?壊れるって何事!?

不穏なこと何背筋が寒くなるが、駄目だ、土の神の柔らかさと体温にもう思考が働くなってきている。いつの間にか手は土の神の胸と腰に添えられていた。土の神はニヤニヤとしながら「この胸も腰も其方のものだ、遠慮するな」と耳元で囁く。


「元より新しき神として創世神へとなろうというのなら必ず古き神と交わらねばならん。ならば我等でかまわんだろう。何より我等は八柱で一柱であるゆえ、万が一欠片などでなく我等のように存在を保っている古き神を受け入れた新しき神がいたとしてもその座は其方が最も近いくなるだろう」


俺は元々上半身裸な上、土の神も露出が多いため素肌が密着しすぎててさっきから身体の芯が熱いし、耳を擽る土の神の吐息にもう俺はどうにかなってしまいそうだ。目を瞑り鈍った頭を必死に動かす。このゲームにおいて他のプレイヤーに対して大きなアドバンテージを得られるが危険らしいということが今の話から推測されるけど、危険度ってどれくらいなのかが気にかかる。

ゲームスタート時から他プレイヤーと大きな差をつけるのもバランスが崩れるだろうし初期にちょっとボーナスがつくくらいいじゃないだろうか。失敗してステータスか何かにペナルティを背負ってもどうせ祝と一緒に活動するだろうしそこはある程度なんとかなるんじゃないか。

というかキクの所で選んだ選択でそもそも決定だったんじゃないだろうか。


「まぁその通りだな。だが心の問題というものがあるだろう」


土の神が笑いながら答えたということは口に出てたのかー。


「おっけーおっけーもうみんなまとめてどんとこいだっ」

「さすが我等が選んだ番いだな。では早速始めよう」


やけになって叫んだ俺の唇を土の神がその唇で塞いだ。


だからそうしてそうなるんだー!


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