ぱわーれべりんぐと門番竜蜂再
遊べる時は一緒に遊ぼうと約束した俺たちは桐花と景臣をビシバシと鍛えることにした。
まぁビシバシといってもアクティブな敵が巡回する付近でだらだらしてれば、俺の可愛い卵たち(といっても俺の成長に合わせて最近卵から色々はみ出し気味だけど)が勝手に戦ってくれるから楽なものた。
操作の練習がてら俺も戦闘に参加するがバフやらデバフのタイミングもなんとなくわかったのでもういっかなーと。
割とこういうのは得意なんだよね。
プルや景臣の前衛組と桐花は操作感がまだ難しいらしくほぼ動きっぱなし。
いやプルはもう充分だと思うけど「まだまだー!」と言って暴れてる。
景臣と桐花も俺たちと一緒に遊ぶようになって一気に成長してせいで、負けるという危険はないがレベル差で無理やり倒してる感がまだまだあるから丁度いいのかもしれない。
まぁ俺だってこうしてごろごろしているが、無駄にごろごろしてるわけじゃない。
皆の連携や動き、癖を観察してるのだごろごろ。
改めて俺たちの編成を考えるとなかなか微妙だよな。
プルはバリバリの近接戦闘系。スタイルは格闘。
景臣も同じく近接戦闘系。スタイルも同じく格闘。
ただ景臣の場合は近~中距離に対応した魔法系もあるっぽい。
桐花は中距離以降のデバッファー。敵の邪魔をしたり障害エリアを形成したりと攻撃力は低いがなかなか嫌らしい性能だ。
そして最後に俺が……なんだ万能系なのかな。
回復攻撃バフデバフなんでもござれにしては強すぎてバランスブレイカーな気もする。
プルもどうやらかなり強いっぽいんだよな。
敵がいないときにプルが景臣相手に練習相手になってるんだけど、同じ近接系でもプルとかは明らかに景臣より強くて清々しいほどにぼこられてる。
まぁ桐花と景臣に強い強いと褒められたり懐かれたりするのは悪い気はしないな、うん。
話してる感じからリアルは中高生っぽいんだよなぁ。
妹とか弟とかいたらこんな感じなのかなと思わないでもない。
ログイン率がいいので勉強とかちゃんとしてるのかおにーさんは心配だよごろごろ。
とまぁのんびりしているときにソレは現れた。
轟音と共に景臣が周囲の木々と共に薙ぎ払われ生命力をごっそり削られる。
「いったぁぁ」
「景臣!」
吹き飛んだ景臣に桐花が駆け寄る。
門番竜蜂だ。
それも前よりでかいし強い奴っぽい。
「きたきたきたきたー」
背を低くして門番竜蜂に突貫したのは言わずもがなプルだ。
門番竜蜂の腹部を殴り蹴りと打撃を浴びせていく。
ジッジジジ
門番竜蜂の羽根から小さな光球が舞い散り、その一つ一つが竜蜂となる。
1、2、3、4……っとまだまだ増える。というか増え続けてるのかこれは。
「ふふふ。飛んで火にいる夏の蜂とはこのことよ。数さえいれば勝てると思うなよ。なんてったってこっちは4人なんだから4人」
ちょっちプルの目が怖い。
「桐花と景臣は門番竜蜂の攻撃範囲に入らないように竜蜂の相手をしてくれ。プルは門番竜蜂をがっちり固めとけよ。」
『風神召喚:発動』でごっそり減った景臣の生命力を回復しながら
「おうけーいてか絶対逃がさないぜ。あの時の俺とは一味も二味も違うとこを見せつけちゃる」
いや、違う奴だろっていう突っ込みが、なんだかどっと疲れたからしない方向でいこう。
「プルさん、雑魚は俺に任せてくださいっ」
「もう、景臣っ。危ないから無理しないで」
プルに向かっていこうとする竜蜂を遠隔攻撃で引き付ける2人。
近接しか出来ないプルと違ってこういう釣り方が出来るのがいいな。
どうやら竜蜂ぐらいなら2人でなんとかこなせてけそうだ。
プルも強くなったから吹き飛ばされたり一撃で半分以上削られたりすることはないとはいえ、
確実に削られていってる。
だが1対1では勝てないとしてもさっきプルが言ったようにこっちは4人だ。
景臣と桐花が沸き続ける竜蜂倒し、プルが門番竜蜂を削る。
景臣と桐花が門番竜蜂の中距離にいると範囲攻撃が怖いので、
中距離には氷神卵さんを設置する。
「2人とももうちょっと下がってくれ、氷神が釣った敵をさらに引っ張って戦うんだ」
氷神卵さんが釣った竜蜂を景臣と桐花がさらに釣ることで、
門番竜蜂から遠距離にいつつ竜蜂を叩くことができる。
「はい!ほら、景臣さがるわよ」
「インクナビュラさんお願いします!」
氷神卵さんの攻撃は竜蜂が増えすぎた時は竜蜂に、それ以外は門番竜蜂を攻撃させ、
指示の合間に回復やらバフデバフを飛ばしていくという忙し楽しい役だ。
うーん、この状態だと俺が支援役頑張らないとなぁ。
俺も思う存分攻撃魔法を打ちたい……。
しかし安定してくるとすぐ飽きるな。
こんなん作業だ作業。
釣って渡して回復してバフはってーっと。
ほらほらパンチだキックだーっと
プルの攻撃に合わせて脳内で吹き出しをつけてみたりする。
うん、ばれたら殴られる。
という事で門番竜蜂2体目撃破完了ッ
油断しすぎて途中あれ?負けるかもっという場面もあったので事故が起きてたら壊滅する危険はあったかな。
「うおおおおー!勝った!勝ったよ姉さんっ」
「きゃっ、景臣!わかったから落ち着いて」
「やったー!!」
「ふっふ~。ドロップアイテムドロップアイテム~っと。王蜜こいこい」
よっぽど嬉しかったのか桐花を抱きしめてぐるぐると振り回す景臣。
その微笑ましい姉弟に混じって1人物欲を隠さないプル。
ちょっとは隠そうぜオイ。
「良しドロップきたぞー」
「きたー!王蜜っっと。あれ……と、取れない。イン君とれないぞーーーー!!」
プルが俺の肩を掴んでガクガクと振ってくる。
取れないって何いってんだよと俺も取ろうとするがシステムメッセージに弾かれる。
「うん。俺も取れん。何々?システムメッセによると一度この竜蜂を撃破して王蜜を手に入れたプレイヤーは取れないっぽいな」
というか所持してない俺も取れないって判定厳しくないか、これ。
「まじかー!うう、俺の王蜜……ということは俺たちじゃなきゃ大丈夫か。オミオミ取れる?」
オミオミって誰だよオイ。
と思ったら景臣が反応をしてる。
景臣の臣でオミオミか。プルのセンスだと桐花はとーちゃんとかになりそうだな。
「と、取れました!」
見ると、景臣がプルが以前見せてくれた王蜜が少し入った瓶を両手に抱えている。
「よーしよくやった!これで後6体分だね」
「だけどさ、この様子だと俺たち4人はもう王蜜持てないっぽくないか?」
プルは一つの瓶に8体分の王蜜を集めると思っていたようだが違うようだ。
「8パーティーがそれぞれ王蜜を手に入れて竜蜂の巣に行けるようになる、そういうことだろう」
「私や景臣みたいに誰かを誘って見るのはどうですか?」
「確かにそれも一つの手かな」
「むー、独占禁止かー!」
といっても……誘えるあては無いかなぁ
「俺とプルは誘えそうな知人とかはいないけど桐花ちゃんと景臣君は?」
「すみません、俺たちもいないです」
「オミオミはなんでそこで謝るかな。友達がいないのは一緒だぜっ」
そこ、空しい発現はやめろ。
そして「このゲームでは」と前につけるんだっ。
「友達がいるいないは置いといて確かにパーティーバランスとしてはイマイチかもしれないな。俺が回復と強化も出来るけど、専任の盾役と回復役がほしいかな。特に現状の盾役がプルっていうのが今は大丈夫でも先のことを考えるとね。柔らかいし」
「そうだよー。この柔肌に傷でも残ったらどうするのさ」
プルがわけのわからないことを言って凭れかかってくる。
景臣!その羨ましそうな目はやめなさい!
何故か桐花の視線も痛い。
俺は無実だ。
「はいはい離れて離れて」
「なーにーさー。イン君は俺の事どうでもいいんだろ、ぐす」
「プ、プルさんには俺がついていますっ」
お、景臣君の漢アピール。
「プルは置いといて、とりあえず竜蜂の巣の入口を探しながら考えるのもありかなぁ。下手に変な人を勧誘するのもヤダし」
「確かに1PTで1つしか取れないものを私達は2つ持っていますし、焦って誰かを入れる必要もないですよね」
「俺もまだ4人のままがいいっす」
うーん、桐花は人を増やすのは嫌そうだな。
今まで誰にPKされてたかわかららない状況だったから他のプレイヤーを警戒しているんだろうけど、景臣君は直球で4人がいいと言ってしまってるし、まぁ確かにそれだけ本人達としては嫌な思い出だったんだろう。
「おkおk。連携も取れて来たししばらくは訓練やら竜蜂探しはやめて竜蜂の巣探しをしよう、イン君もそれでいいよね」
「勿論、俺もそれでいいと思うよ」
「よーし、明日からはまた森を探索だーっ」
方針が決まると、またプルが1人盛り上がってるがそれと比べて桐花と景臣の表情は暗い。
「プルさん、インクナビュラさん、すみませんわがままいって」
「ほら謝らない謝らない。そんなの気にしちゃ負けっぽいってね」
「はい!」
「俺たちはもう仲間だしな」
プルはほんとこういうの上手いよなぁ。
「取りあえず時間もいい感じだし今日は解散にしよう」
「そだな、岩戸神殿に帰るか」
「あ、俺たちはまだ時間あるのでもうちょっと頑張ります」
「了解、岩戸神殿に帰るときは気を付けてね」
「はい。今日は有難うございました」
その日はここまでで解散となり、プルと俺は岩戸神殿に帰還、桐花と景臣は森にまだ森に残ることになった。