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神在月  作者: 道成
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プロローグ-1

「ボスの前座が同じプレイヤーになるとはな」

「なんかこう、これからってときに水を差すよ奴らだな」


思わずぼやいた俺に、隣に立つ友人が同意する。


「やっぱりいたか。さっさと潰すぞ」

「まぁ最初に倒したパーティーの特典が大きいですし、こればっかりは仕方ないですね」


もう慣れっこと諦め気味の仲間もいれば大歓迎蹴散らすぜと燃える仲間もいる。

このボスは実装後初めて倒したパーティーには、基本のドロップ以外にも、専用装備を大幅強化出来るアイテムが全員に手に入る。

専用装備の成長は塵も積もれば的に地味な成長が基本なため、多くのプレイヤーが喉から手が出るほど欲しい。

だから、大手のプレイヤーなどは自分たちがボスを倒せる戦力を整えるまでこうしてボスエリア前で他プレイヤーの排除を行うこともある。


「というか今回は数が多くないか?」


それにしても数が多いというかこれだけ人数揃えてるなら人の邪魔するよりボスにチャレンジしたほうがいいんじゃないかと思える。


「来たか!ここにいるのはお前たちチートプレイヤーを倒すために集まった俺の仲間だ。公式にも通報はしたし。録画もしてるし、勿論外部に放送もしてる。ここでお前らがチートプレイヤーであることを証明してやるっ」


先頭にいる眼鏡姿の幼女騎士が叫ぶ。

どうやら彼女たちは俺たちをチート認定しているプレイヤーらしい。

録画と放送によって俺たちがチート、所謂違反行為をしてる証拠を掴もうというのだろう。


「って俺たちの中にチーターなんていないよな?」

「いやいないだろ……俺たちはゲームにある程度適正があったのと運がよかっただけだし」

「いやぁ嫉妬っていいですね。彼らは生き生きとしてますよ」


実際俺たちを含めた一部のプレイヤーは、その他のプレイヤーとは大幅に強さに差がある。

それを妬む一部の連中が時々こうして集団で挑んでくることも珍しくない。

彼らもその例に漏れず俺たちと同ランクのプレイヤーは一人もいない。

人数はいるが実力者が一人もいない奴等がリンチのような真似したりなど、酷い話になると対人戦が嫌いな実力者が1人でいる所を、抵抗しないのをいい事にプレイヤーキル、所謂PKと呼ばれる行為をするといったこともある。やられた側も殺されてやれば満足するだろうと放置してわざと殺されたらしい。


「俺が1人で行く、いいだろ?」

「それじゃ任せるよ。残りは大人しく留守番だよ」


リーダーである友人がそれを支持してくれる。

彼らランクのプレイヤーには負ける気が全くしないし外部に放送もしてるらしいから1人で彼らを蹴散らしても違法行為を何もしてない俺がアカウント剥奪などの罰則を運営から受けない事実を見せたほうが観衆にも印象が残るだろう。


「後衛職のお前が1人でくるなんてな。なんだ大人しくチート行為を認める気になったか?」

「そんなわけないだろ」


何故か自分の都合のいいように解釈し偉ぶる幼女騎士を醒めた目で見下すと召喚魔法を詠唱破棄で発動する。

俺の目の前に黄土色の魔法陣が展開されそこから土神、人間より一回りほど大きな、下半身が蟻で上半身が豊満な胸を持つ美女が現れる。同時に土神は澄んだ声で歌うように詠唱を始める。


「地に潜みし我が眷属よ、地に眠りし我が子等よ」

「詠唱を完了させるな、攻撃開始!」


幼女騎士の号令のもとに俺たちの元へ津波のように敵が押し寄せてくる。

土神の詠唱時間を稼ぐために今度は詠唱破棄で相手の動きを短時間封じる召喚魔法を発動する。

俺の目の前には紫の魔法陣が展開され雷神、紫の鱗を持つ大蛇でが現れると同時に地表を蛇状の紫電が走り幼女騎士一味を襲い動きを封じ、紫電が収まると共に大蛇は紫の粒子となり消滅する。


「我が声に応え、我が命に応じ、此処に集え」


その隙に土神の詠唱が完了し、地面に巨大な魔法陣が描かれ、そこから土神の眷属である人サイズの無数の蟻が這い出ると幼女騎士たちに遅いかかる。

戦いは一瞬にして一方的な蹂躙に変わる。


殺戮 殺戮 殺戮


幼女騎士は行動不能状態のまま最初に土神の眷属に砕かれ殺された。

残りの連中も行動不能状態は解除されたものの烏合の衆となっておりすでに半数近くが土神の眷属により殺されている。

眷属自体はそこまで強くないから上手く立ち回れば幼女騎士たちでもいい戦いを繰り広げられたのだけど結果はこれだ。

このまま畳みかけてもいいけど、それだと今一つ派手さにかけて観客もつまらないかなと土神に指示を出す。


「見ろ!こんな事が出来るのは明らかにチーターしかいないだろ!運営は早くこいつらのアカウントを剥奪すべきだ!」


目を向けると最初に殺された幼女騎士が仲間の蘇生を受けて後方で叫んでいる。

観客と運営に向けたパフォーマンスにちょっとイラッとする。


「ただお前がこのゲームを下手なのと運が無いだけだろ。それに人を集める能力があっても統率する能力の無さを全世界公開して恥ずかしい奴だな。さっさと退場してくれ」

「なっ、ふざけるな!」


幼女騎士を挑発している間に土神の詠唱が完了する。

幼女騎士たちの頭上にオベリスク型の石柱が現れ落下、轟音と共に幼女騎士たちを完全に壊滅させる。


「掃除お疲れ様」


労いの言葉と共に肩を叩かれ振り返ると友人、仲間たちがいた。


「遅い、さっさと行くぞ」

「召喚魔法は見た目が派手でいいよね~、土神さんも美人だしさ。あ、お触りはおっけーだっけ?」


仲間は俺の肩やら頭やらを叩いて先へ進む。

勿論、土神はお触りされる前に帰還させましたとも。


「よし、それじゃ行こう。明日は月曜だしさっさと倒して寝ないとだもんな」


友人は俺の手を掴むと走り出す。

その先には仲間たちがいて、さらに先にはボスエリアの光が見える。


友人に誘われて始めたとはいえ、俺もすっかりこのゲームに嵌ってしまったもんだ。

ふと友人に誘われた時のことを思い出す。

そう、確か大学の授業の後に誘われたんだっけか―――

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