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Run away!3

休日。

作者: 貴幸

カナとハルトが遊びに行くだけ。

「んんぐぁあああ〜!!!!」


顔を床にふせる。


急に決まったが明日はなんと、ハルトさんと遊びにいく!


「ど…どどどどうしよう!!!!」


こんな、こんな幸せなことがあっていいのだろうか!

なんとなく言ったらなんとなくokされてしまった!!


「デート…」


これで恋人同士だったらデートなのに。


「デートじゃダメかなあ」


とにかく、ハルトさんと何処かにいける事実が幸せでしょうがなかった。


「…寝れない。」


遅刻しませんように。








「嘘だ…」


目を覚まし時計を見ると待ち合わせの時間になっていた。


「え…?あの…え?」


汗がタラタラと流れる。


やばい。

これは帰られた。

どうしようスマホを見るのが怖い。

ハルトさんに嫌われる。


「…」


「映画、チケット買っちゃったし…」


一人ででもいいから、行こう。










ふと、待ち合わせの場所を通りかかる。

三十分過ぎてる。

もういないだろうなあ。


「あ、いた。」


振り返るとそこにハルトがいた。


「は…ハハハハルハルトさハルトさん」


「落ち着けよ。…しかしよく待ってたな。」


「本当ごめんなさい、遅刻して…」


…ん?

よく、待ってたな?


「実はさ、さっき起きたんだよね。遊びに行くこと忘れてて。」


「……なんですかそれ…!」


なんだ、ハルトさんも遅刻したんだ。


「じゃあ、どこ行く?」


「あ、えっと…」


改めてハルトの格好を見る。

この人は何を着ても似合い過ぎじゃないだろうか。

イケメンと言うなのオーラが…


「俺さ、飯食ってないから腹減ってるんだよね。」


「あ、じゃあ食べましょう!私もお腹空いてたんです!」


手を繋げないのがもどかしい。


「そういえば時人にデートがんばってって言われたけどこれデートなの?」


「え?」


デ、デート!?

真顔でハルトに言われる。

え、デート、え!?

どうしよう、時人だけには一番言われたくないかもしれない!


「ハルトさんは…その、どっちだと…」


「んなの遊びに決まってるだろ。」


「ですよねー…」


少しでも期待してしまった。


「でも、お前がデートって思うならデートで良いんじゃね?」


そう言って少し、笑われる。

デートって思っていいのかな。


「思いませんよ、付き合ってもないのに!」


「へぇ。」


余裕のあるその表情になんだか負けた気がした。


「何食べます?スパゲティーですか?それとも和食?」


「甘いもの食いてぇ。」


本当、不良から口にでなさそうな言葉だ。

甘いもの好きなんて可愛い。


「朝から甘いものですか?」


「言っとくけどもう昼だからな。」


「…」


いや、そんな時間に起きたのはハルトさんだって同じだから!


「じゃあパンケーキとかどうですかね」


「何それうまそう、アレか、パンケーキにイチゴとかたくさんのってるのか!」


目が輝き始める。

あぁ、可愛い、本当可愛い!


「アイスものってますよ〜」


「はやく行こう。」


そう言ってハルトは早歩きになり始める。

デートなんだからゆっくり歩きたいのに…


「待ってくださいよ…!!あっ」


早く歩こうとすると足が絡まった。

そのまま前のめりになる。


「おっと。」


転ぶのをハルトに肩を支えられ、なんとか阻止した。


「ごめん、急ぎ過ぎた。」


「あ、ありがとうございます…」


近くてハルトの匂いがする。

ダメだ、これ以上近くにいたら頭がどうにかする。


「ほ、ほら、行きましょう?」


「転びやすい奴の為にもゆっくり歩かなきゃな。」


嫌味は言わないでほしい!

ふと、掴まれた肩に意識が執着する。

これだけでドキドキしてしまうなんて、意識しすぎではないか。


「ハルトさん、すみません。」


「いいよ、別に。時間ならまだまだあるハズだから。」


ハルトは、優しい。

そんなハルトが好きだ。

二人で歩いていると、あの日のことを思い出す。

ハルトがいなかったら、きっと死んでいた。


「なんかさ、久しぶりだな。」


「何がですか?」


「こうやって街を歩くの。」


ああ、同じことを考えていたのかな。


「本当そうですね。あの時はハルトさんが怖くて怖くて…」


「一番怖かったのは今すれ違っているこの、人間だったけどな。」


…思い出すだけで震える。

あの、恐怖。


「も、もっと楽しいこと考えましょうよ!」


「いいだろ、お前と会った日なんだからさ。」


嬉しいことを言わないでほしい。

ちゃんとそうゆうふうに捉えてくれているんだ。


「ハルトさんは変わりませんね。」


「お前の方が変わらないよ。」


「じゃあどっちも変わらないじゃないですか。」


「俺は違う。」


何故か誇らしげにこっちを見る。

すると何も言わず私の手をとった。


「ひぇ!?」


「ほら、こうやって手を掴んでも大丈……ダメだわ」


手を離される。


「大丈夫じゃないんですか。」


「だ、大丈夫だし…!」


また、離した手を掴まれそのまま引っ張られる。

ああどうしよう、手汗が異常なほどにでてそう。

これは俗に言う手を繋いでると言っていいのだろうか。


「ハルトさん無理しなくても…」


「してないしてない!」


今だけはハルトに耐えてもらっても良いかもしれない。







「パンケーキのストロベリーセットで。」


真顔でパンケーキと言う名のスゥイーツを頼む不良。


「あ、じゃあ私は抹茶セットで。」


抹茶が関わるものは大体美味しいと決まっている!

あの苦味と甘さのハーモニーは最高だ。


「抹茶って美味しいの。」


「ふふふハルトさん、抹茶を舐めてはいけませんよ。」


「…そんなに美味しいのか。」


ハルトはiPhoneから顔をあげると話に食いついてきた。


「お茶にアイスを入れる…そんなの想像出来ないかもしれませんが、想像できないからこそ、これまでに体験したことのない素晴らしい味覚がですね!!」


「や、やばいな…」


「すいません、いいですか?」


店員がにこやかにこちらを見てきた。


「あ、すみません、なんでしょうか!」


抹茶トーク聞かれてたのなら、恥ずかしい。


「今カップル限定でクッキーをお配りしています、どうぞ食べさせ合いに使ってください!」


ハート型のクッキ二枚がのった皿が渡された。


…カップル?


「ち…」


ハルトが口を抑える。


「ありがとうございました。」


やばい、この人甘いものにめがない!


「カナ、俺たちはカップルだ。」


「!?!?」


本当に甘いものに目がない!!!


「しかしまだ食べる時間じゃない。」


「…え?」


ハルトはそっとメニュー欄のさっき頼んだものを指した。


「考えてみろ、パンケーキにのってきたアイスANDソースをクッキーにかけて食べるその光景を。」


「あぁっ…!!まぶしい!!まぶしいです!!!」


ふと、このやりとりはバカのすることだと気づいた。


「じゃあ、それまで待ちますか…」


「そうだな。」


沈黙。

そういえばハルトとのこの沈黙は気まずくなくなった気がする。

ほら、私だって変わってるんだ!


「そういえばハルトさん、最近アキトくんとはどうなんですか?」


ハルトの眉がひくりと上がる。


「…アキト?」


アキトとはよくアカラギの家であう。

…そこでハルトの日常を盗み聞きしている。


「別に…いつも通りだよ。」


「兄弟らしいこととかしないんですか〜」


「兄弟らしいことなんてわかんねぇし…」


あぁ、そうか。

ハルトはハルトでいろいろ考えてはいるんだ。


「一緒に何処か遊びに行ったり…家で映画見たりとか!あと、ゲームとか…学校の話とかはどうです?」


可能な限り思いつくことを言っていく。

正直兄弟姉妹がいない私にはまったく縁のない事ではあるが。


「まず一緒にって言うのが無理そうだけどな。」


そんなことない。

アキトくんだって今度兄貴とパフェ食べに行きたいとか、意外と可愛いこと言ってたりするのに!!!


「大丈夫ですよ、案外承諾してくれますって!」


「じゃ、じゃあパフェに誘う…」


似すぎか!!

何二人してパフェに行くって意思疎通!?


「それ!それが良いと思います!」


「お、おう…」


真剣に悩む姿だけでもちゃんと兄らしいとは思う。

そんな事を離しているとちょうど良いタイミングでパンケーキが届いた。



「美味しそう〜!!!」


究極に腹が減った私の目にこのパンケーキは後光がさしているかのように見える。


「いただきます!」


「いただきます。」


一口食べるが、抹茶の苦味とアイスの甘さ、そしてパンケーキの味が見事に上手く混ざり合う。


「美味しい〜!!」


「そんなにうまいの?」


「すごい美味しいです!」


「一口ちょうだい。」


ハルトはそう言って口を開けた。


…これは?


まさか、この場で食べさせると言うのか!?


「ん!」


舌を出して物欲しそうにこっちを見てくる。


「あ、あ〜ん。」


一口分とり、ハルトの口へと運ぶ。

やばい、本当にカップルじゃん!


「うま!」


ああ、にやける。

今日は私へのご褒美デーかな?


「俺のもいる?」


「え、良いんですか?」


「ほら、口開けて。」


テーブル越しだからか、ぐっと身を寄せてくる。


「あ〜ん。」


私は緊張しながらも口を開けた。

あああハルトさんのDNAのついたものが口に!!!


「美味しい、です…」


味よりもいろんな部分に集中してしまって何がなんだかわからない。


「うまいよな〜。」


「そうですね…はい…」


なんでこんなに意識に差があるのか…

悔しいような恥ずかしいような。


「そういえば、この後どうする?」


「そうですね〜映画は何時からでしたっけ。」


「あと三十分後。」


「…ま、間に合いますかね?」


冷や汗が流れ始める。

まさか、見れなくなるなんて…


「いざとなったら走ればいい。」


「また転ぶかもしれませんよ。」


「そうなったら俺がお前を持つ。」


それはお姫様抱っこですかね!?

なわけないな。

前持ってやるって言われた時は脇したに完全に物を持つと言う感じで持たれた。

…スカートの中が他の人に見えてしまう!


「前みたいな持ち方はやめてくださいね〜」


「じゃあどうすればいい。」


「お姫様抱っこ〜…」


なんて。


「わかった。」


ハルトは真顔で受け答える。


「ま、待って待って!?そ、そんなこんなとこでお姫様抱っこをするつもりで!?」


「そうだけど?」


そして忘れかけていたクッキーを不意に口に入れられた。

む、美味しい。


「ひほのなはではれふのははふはひいへふ(人の中でされるのは恥ずかしいです)」


「ごめんいってることわかんねえ食べてから言え。」


飲み込んでハルトの口にクッキーを押し込む。


「だから、時と場所を考えてくださいよ!」


「そうだな、じゃあそれはまた今度で。」


また今度、お姫様抱っこをしてくれるのだろうか。


「そ、そうですね…」


それまでに痩せなきゃ。












映画を見終わり外に出るともう暗くなっていた。


「はぁ、もう帰らなきゃですね。」


「そうだな。」


…それで終わりか。

まあそうだよね、恋人じゃないし。


「今日は楽しかったです、できればまた一緒に何処か行かせてください。」


ハルトは困ったような顔をする。

なんだろう、嫌なのかな。


「お前、俺先に言おうと思ったのに。」


「先に…?」


今の事を?


「あ、も、もう一回、ハルトさんの口から言えば良いのでは!」


どうしよう、嬉しい!


「いい、なんかこうゆうの慣れてないし。」


「ハルトさん〜!!」


腕をつかむ。


「触るな。」


真顔で離される。


「今日は楽しかった、また何処か、行きましょう……せんか。」


「はい…!!行きます!もう毎日行きたい!!」


「それは嫌だな。」


苦笑いされる。

こうゆうとき、ハルトと前より仲良くなれたと実感する。


好きだ、この人が。


「あ、じゃあ私駅から帰るんで。」


「カナ。」


名前を呼ばれる。

なんだろう。

顔を上げるとハルトがじっとこっちを見てきていた。


「また今度な。」


そのまま頭を撫でられる。


「わっ!……はい、また今度!」


私は撫でられた頭を抑えながら、ダラダラと帰っていくハルトをしばらく眺めていた。

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