episode1 ―2―
声の主は、僕のすぐ側に立っていた。
側にいたのは、意外にも女の子だった。
年は僕と同じか、少し年上で十四歳かそのあたりに見える。
服装は、赤地に黒のチェック模様が入ったワンピース。肩に黒のケープを掛けていて、結構というか、かなり派手な服装だった。
『ようこそここへ』
彼女は暗めの一本調子で言った。
結構美少女なのだが、彼女からは不気味、恐怖といった感情一本しか伝わってこない。
それは一瞬、僕に他の感情を忘れさせた。
『用件は何でしょうか』
彼女の声で、我に返った。
僕の胸から、また鉛の固まりが押し寄せてきた。
「…………」
『まぁこんな所で伺うのも何ですから、こちらへどうぞ』
そう言うと、彼女は奥にある部屋の一室を案内した。
『あ、土足で結構です。どうせもう使われてない屋敷ですから』
靴を脱ごうとする僕にそう言うと、部屋へと向かった。
『では改めまして、ご用件をどうぞ』
向かい合わせのソファにそれぞれ座ると、再び彼女が言った。
しかし、何も言えない。
話そうとするたびにあの鉛が喉の近くまで押し寄せてくる。
話したい、話したい、話したい、話そう、話そう………………………
長い沈黙が続いた。
その間、僕はただ一人の人物の名前を連呼していた。
『……分かりました』
再び彼女の言葉で我に返った。
『ご用件は何となく察しました。』
さっきと同じ一本調子で淡々と話し続ける。
『あなたはいじめを受けていますね。』
……!!
瞬間、鉛が一気に押し寄せてくるように、胸が苦しくなった。
『主核は…浅原青柳………貴方が今連呼していた人物です』
!!
『いじめは二ヶ月ほど前…主に学校で………ふーん、そうですか』
何かつぶやいたかと思うと、こちらをむき直した。
『この程度なら何ともありません。さっさとケリをつけてしまいましょう』