第六話「幻想種」
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ありがとうございました!!!
でもこれ心臓止ります;
大広間にあふれた光がだんだんと収まっていく。
もしかして失敗したのか!? なんて内心焦っていたんだが、目が慣れるにつれて目の前にきちんと何かがいるのを確認できた。
それも3匹も。
使役獣の数は召喚者一人に対して1匹という決まりがあるわけではない。
ごく稀にではあるが、1回の儀式に2匹以上が召喚されるということがないわけではない、らしい。
ただ、使役獣の儀という儀式そのものを一生に一度しか行うことができないために、その確率は非常に低い。
加えて、複数召喚される使役獣は、群れで行動するものが多いと聞いたことがある。
この時点で俺の使役獣は基本的に1匹で行動することの多い幻想種ではないということだ。
幻想種は無理だったかぁ、というすこし残念な気持ちになりながらも新たな仲間たちをよく見てみることにする。
1匹目はコロコロと肥えたピンクの豚(?)にしては少しごつごつしているし、背中には小さな羽がある。
もう1匹も肌の色が白っぽいコロコロと太った似たような奴。
最後の1匹は豚ではないが、緑青色の毛をしたリスみたいな小動物、額には赤い突起。
なんだか前世には馴染みのない生き物ばかりで戸惑う俺。
使役獣の儀は年齢に応じた獣が現れることが多いのでこいつらもまだまだ幼生なのかもしれないが……正直なんか頼りない。
周りの貴族たちが俺の使役獣を見てざわざわと騒ぎ始めた。
この世界で立派な使役獣を連れているというのは、貴族だけに関わらず一種のステータスであるといえる。
そして、ここにいる貴族たちはその大多数が我が公爵家より家格の劣る者たちである。
次期公爵家当主の俺の失敗を目撃したら気まずいことこの上ないのではないのではなかろうか。
陰でならば俺を嘲笑い、馬鹿にすることができるのかもしれないが、面と向かって公爵家を敵に回すような迂闊なことを言う奴はこのなかにはいなかった。
まぁ、俺自身はまだ失敗だとかこいつらが不満だとかそういった思いはないのだけれど、というよりも自分でこいつらを召喚しておいて使えなさそうだから失敗だなんて思えるほど、俺は腐っちゃいない。
ただ、父上や母上の使役獣のような幻想種を召喚できなかったことと、公爵家の威光に傷をつけてしまうことになりそうなところは少しまずったかな、と思わないではなかった。
この状況を打開すべく、この大広間で俺の使役獣を見た輩に、不慮の事故に遭って貰おうかなんて物騒なことを考えていると、静まり返った大広間に一人の少女の声が響いた。
「レッドドラゴンとホワイトドラゴンの幼生に、その小さいのはカーバンクルの幼生か? これだけ幻想種がいるのならわらわにも1匹譲ってほしいくらいじゃ」
少女の周りから潮が引くように貴族たちが離れていくが、少女はそれを気にした様子もなく堂々と俺のいる魔方陣の内側へと歩み寄ってくる。
我が一家と同じ白銀の髪に、美しく整った顔立ちがどことなく母上と似たような印象を受けるが、少し吊り上り気味の目じりが気の強さを表しているようで母上とはそこが大きく異なっている。
沈黙を破って近づいてくる少女に目を奪われていると、我に返ったらしい父上が少女に向かって話しかけた。
「それはいかに王女殿下といえども無理ですな。それに殿下の使役獣の儀が2ヶ月の後に執り行われることが決まっております。それまでお待ちになれば殿下もかけがえのない友を得るでしょう」
父上は口調こそ丁寧だったが、少女に向けられた言葉には親しみが込められていた。
「おじう……いや、公爵、その通りじゃったな。だが、少しくらいこの子らを触ってみてもよかろう? わらわも竜の幼生を見るのはこれが初めてなのじゃ」
「ええ、構いませんよ、といってもこの使役獣たちは我が息子のものですがな。そうだ、王女殿下にはまだご紹介しておりませんでしたが、我が自慢の息子、アレスです。年も同じですので、これから使役獣ともども仲良くしてやってください」
「アレス、こちらはセレーネ第二王女殿下だ。アレスとはいとこ同士でもある。これから仲良くするんだよ」
「アレスです。セレーネ王女殿下にお会いできて光栄です、これからよろしくおねが……うわっ」
父上の言葉を聞いた俺は慌てて貴族式の礼を取ろうとするが、足元と背中に思わぬ衝撃がきて無様に転がった。
倒れた俺に伸し掛かって顔中を嘗め回してくる使役獣たち、いや、新たな家族たち。
「ふふ、気に入られておるようじゃな。これからよろしく頼むぞ、アレス」
王女殿下を中心に、大広間は暖かな笑いに包まれた、のはいいが、顔中、涎だらけなんですけど、こいつら思ったより力強い、誰か、誰かとりあえず俺を助け起こしてくれ~。
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次回更新は年明けです。具体的には4日か5日ぐらいかな?
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