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第三話「魔法の代償」

すみません、初回投稿から随分と間が空いてしまいました。言い訳をしたらきりがないので言い訳はしませんが、これからは一週間に一回くらい更新していく予定です。改めてよろしくお願いします。

 生きて恩返しをすることを決めたのはいいのだが、俺にはこの世界の知識が全くと言っていいほどない。


 わかっていることはこの世界の文明基準は中世ヨーロッパ程度の文明で、生まれた国はそこそこ大きな国だということ。

 魔法が存在する世界らしいこと。

 後、俺は貴族で公爵家の長男だということ。


 そもそも中世ヨーロッパ程度って言われてもヨーロッパの歴史や文化にそこまで詳しいわけではないのでどんな暮らしなのかよくわからない。


 それにこの世界には魔法という未知の力が存在している。

 その力がどの程度文明に影響しているのかわからない。

 魔法が文明に関わることで俺の知る暮らしとは全く違った生活が行われている可能性もある。


 まずは情報収集から始めようと思う。

 赤ん坊である俺に出来ることはまだ少ないが、やらなければならないこと、いや、やりたいことは多い。

 一秒として時間を無駄にはできない。


 情報収集をするのにまず問題となったのはこの世界で使われている未知の言語だったが、これは結果的にあまり障害とならなかった。

 幸いにして俺はこの世界の人たちの言葉を容易に理解することができた。

 前世でも語学はそれなりに得意だったので、これが神から与えられた能力なのか、俺に元々備わっていたものなのかはわからないが、この際そんなことはどうでもいい。

 使えるものは何でも使う、出し惜しみはしない。


 まぁそれでも、いくら俺に理解力があろうとそれを学ぶ手段が必要なわけで、立ち上がって本を読むことすらできない俺がどうやって言葉を理解しかというと……。

 

「ほ~ら、高い高~い。ほら、見たか? 今の笑顔を! 君に似てまるで天使だ!」


「貴方ったら私が天使だなんて照れちゃうわ。でも、この子の笑顔は本当に天使のようね! それにこの子の横顔なんて貴方に似て英雄譚に出てくる英雄のように凛々しいわ」


 このお二方こと、我が愛すべき両親である公爵夫妻のおかげである。

 決して単なる親バカップルではない。

 

 余談だがこの両親、年齢はまだ若く白銀に輝く髪と碧眼を持った絶世の美男美女である。

 その容姿は神に選ばれたとしか言いようのないほど整っている。

 案外、俺を観察してるっていう悪趣味な神が二人の造形をいじっているのかもしれない。

 自分の目に入る者を出来るだけ美しくしようなんて、いかにも奴らが考えそうじゃないか。

 

 とにかく、この二人が長い時間こうして構ってくれるおかげで、俺は多くのことを学ぶことができた。

 具体的には読み聞かせてくれる絵本から文字を、二人の会話からこの世界の常識をといった具合だ。


 魔法についてもざっくりとではあるが理解できた。

 なんでも魔法に必要なのは魔力や魔法陣ではなく、想像力と祈りの強さらしい。

 人は魔法を使用するのではなく、神(?)に祈るのである。

 たとえば、人差し指の先にライターほどの火を出す魔法を行使するには、まず頭の中で自分の人差し指の先からライターの火が出ているのをイメージする、そして祈るのだ。

 何に祈るのかと問われれば、この世界の人々はこの世界を創った神にと答えるが、これに関しては俺は間違っていると思う。

 だって神っていったらあいつらだぜ?

 祈った程度で、願いを叶えてくれるような奴らか?

 違うだろ、泣き叫んでも願いなんて聞いちゃくれない、むしろその姿を見て腹を抱えて笑いながら高みの見物をきめこむ、これが奴らだ。

 じゃあ、なんで想像と祈りなんてお手軽な方法で魔法が使えるのか、これはあくまで仮説だが、あの胸糞悪い天使サマが言っていた上位世界の恩恵ってやつなんだろう。

 元の世界では祈ったところで魔法なんて使えなかったしな。


 とりあえず理論は置いておくとして、ここで重要なのはまだ赤ん坊でもある俺でも、すでに魔法が使えるってことだ。

 けれど、今の状態では使用できるだけ……このままでは駄目だ。

 力は利用や、活用ができて初めて自分のものになる。


 ということで、さっそく魔法を使ってみようか。

 習うより慣れろっていうしな。

 俺は部屋に誰もいない時を見計らい、魔法の練習をすることにした。

 

 このタイミングを見極めるのがなかなか大変で、俺の周りにはいつも両親や使用人たちの陰があった。


 ちなみに、当分俺は普通の赤ん坊の態度を貫き通そうと思っている。

 将来的に両親の役に立ち、我が公爵家を繁栄させる必要があるので、ある程度の利発さをアピールしておこうとは思うが、赤ん坊の頃からおかしなことをして異端、化物扱いされるのは避けたい。

 それに、あの二人に限ってそんなことはないと信じたいが、才能ある我が子を疎ましく思うようになられては非情に困るし、さすがに辛い。

  

 そんな訳で一人になる機会を辛抱強く待っていたのだが、ようやくチャンスを掴んだ。

 日々の行動パターンからすると両親も使用人たちも当分ここに来ることはない。


 俺のターン! 魔法発動!

 といってもどんな魔法を使おう?

 イメージ的には火の魔法が簡単そうなんだけど、俺は今ベッドにくぎ付けだしなぁ。

 威力ミスって布団なんかに引火したらこの俺のベッドが揺りかごから墓場までになってしまうのでそれは避けたい。


 最初は水系でいこうかな、イメージするのは前世で見た無重力状態でふわふわと浮かぶ水の球。

 我が想いよ成れ、とこの世界に祈る。

 どうでもいいんだが、なにかを強く願う時ってギュッと目を瞑ってしまうのって俺だけ?

 恐る恐る目を開くと広げた手のひらの上に浮かぶ大人のこぶしほどの大きさの水の球体。

 おお、見事に成功してる、さすが俺。

 神が認める期待のホープ! ……全然嬉しくないけどなっと、余計なことばかり考えていると、浮かんでいる水の球の形が崩れ始めた。


 バシャリ!


 結局水の球の制御し直すことはできず、制御を失った水が俺の下半身を濡らす。

 うへぇ、気持ち悪い。

 濡れたままでは不快だし、このままでは風邪をひいてしまう。

 赤ん坊を演じる俺は声を出して助けを呼ぶこともできないので、泣き声をあげ使用人さんたちに気が付いてもらうことにした。

 泣き始めること十秒、普段は静かな屋敷に響くズドドドドドドドドドドという凄まじい二つの足音。

 だんだん音は近づいてきて、ドアが吹き飛んだ。


「大丈夫か!? 愛しの我が子よ!!」


「どうしたの!? 私の可愛い赤ちゃん!!」


 うおっびっくりした! ドア大丈夫かよ? ていうかこっちがどうしたのだよ!

 心配してくれるのは本当に嬉しいけど、もう少し威厳持とうよ?

 我が家、これでも公爵家だよ? 使用人たちだってたぶん行儀見習いの下級貴族だよ?

 俺なんかのせいで、二人とも軽く見られたらどうするんだよ……っていくら言っても無駄なんでしょうねぇこの二人は。

 まぁ、愛すべき両親だし、二人を軽く見るような輩なんかがもしいたら、俺が駆逐すればいいよな。

 本当は二人の態度を正すべきなんだろうけど、俺はこの二人にあんまり変わってほしくないしなぁ。


「あらあら、お漏らしちゃったの、気持ち悪かったね~オムツしてたのにこんなに外まで濡れるなんて元気ねぇ、フフフ」


「元気なのはいいことだ、よしっ! この元気さを家中や領内の者たちにも自慢せねばな!!」


 ……ちょっと待てええええええ!!

 少し考え事をしてる間に大変な誤解が生まれている!?

 俺が濡れてるのはお漏らしのせいじゃないですよ母上!!

 父上もなに俺のお漏らし(誤り)を領内にまで広めようとしてしているのです!?


 母上、ちょっとやめて!オムツは大丈夫、大丈夫だから……アッーーーーーーーーー


 その日から公爵家への贈り物に吸水力が従来よりも強力なオムツが山のように送られてくるようになり、洪水公子という不名誉な二つ名がはやることになった。

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