第十八話「魔法」
時差(八時間)のことうっかり忘れてて、予定が少し遅れてしまいました。
すみません;
スペイン語わからないけど、スペインでの生活は楽しいです。
「アレス様、今日は祈祷法の授業です」
「はい、先生。よろしくお願いします」
先生の言った「祈祷法」という耳慣れない言葉、これは前世でいうところの魔法のことだ。
魔法と言ってしまってもいいと思うんだが、この世界の理論というか常識だと、魔法というのは神の奇跡らしいから、俺もとりあえずは「祈祷法」という言い回しを使うことにした。
「さて、祈祷法とは文字通り、善神に祈りをささげ、願いを叶えてもらう方法のことです。善神がお認めになったことならどんな願いでも叶うために、万能の力とも言えますが、でたらめに祈っても善神は願いを聞き届けることはありません」
あれ? 魔法って願ったことがそのまま叶う、夢のような力ではないのか?
俺、今まであんまり失敗したことなんてないんだけど?
「一般的に祈祷法は、神に願いを請う文言があり、それを起点にして神に祈りをささげることで発動します」
あれ? 文言なんて使ったことないぞ?
「試しに明かりを灯す祈祷法を使ってみましょう。闇夜を照らしたまえ」
先生の手の先に光を放つ球体が現れた。
「この程度の祈祷法ですと、文言は簡単でアレンジも可能ですが、願うことが複雑になればなるほど、文言も複雑になっていきます。また、複雑な祈祷法は文言を唱えても、必ず願いが聞き届けられるわけではありません」
あれ? だから失敗したことなんて数えるほどしかないし、文言なんて一度も使ったことないぞ?
「先生、文言を使わないと祈祷法は使えないのですか? 」
「いいえ、簡単な祈祷法なら文言を口に出さずとも、発動ができます。あとは、危機的状況に陥った時に善神が力をお貸しになることがあるそうです。これは例外ですが、ごくごく稀に、愛されし者と言われる善神の加護が人一倍強い者たちは、文言を使わずとも祈祷法を使えるそうです。これは、愛されし者の先祖が、過去の大戦で目覚ましい働きをしたからだと言われています」
俺をこの世界に転生させた神が、この世界の善神と同一神かはわからないが、俺はどうやら愛されし者とかいう存在らしい。
「先生は、その愛されし者を見たことがありますか? 」
「いいえ、愛されし者は世代を重ねるごとに少なくなっていくらしく、私は今まで見たことがありません。それゆえ、愛されし者が生まれるということは、その家にとって大変名誉なことですので、過去の文献には名もない平民の家が一気に貴族になったなどということも多々あったようです」
善神だろうがなんだろうが、神に愛されるなんて反吐が出るが、俺が愛されし者だということを公表すれば、我が家にますますの栄光が約束されるんじゃないか?
「なるほど、次の質問なんですが、祈祷法でやってはいけないことてあるのですか? 」
「祈祷法にタブーはありません。なぜなら、祈祷法が発動した時点で、神がそれをお認めになったということだからです。たとえどのような願い事でも叶った時点ですべて正しいのです。善神の采配に間違いはありません」
「人を殺したり、贋金を作るような祈祷法であってもですか? 」
「はい、祈祷法で殺された人間は、神に裁かれたのと同様で、最も恥ずべき死に方の一つということになります。また、贋金も祈祷法によってつくられたのであれば、それは神によって創られた本物以上のものとなります。ただ、そういった祈祷法はとても複雑なものとなるので、使えるのは教会でも数人の高位聖職者か、愛されし者くらいのものでしょう。基本的に祈祷法とは、生活を楽にする程度のもので、複雑なことには使えません」
な、なんということだ。
俺の作った贋金は、合法だと!?
しかも、祈祷法なら殺しまでも許されるなんて、とんでもなく宗教じみてる……いや、宗教だったな、これ。
扱える人数が少ないからか問題は起きていないみたいだが、そんな何をやっても許されるような存在がいるのを許している思想がまず危ないものに思えてならない。
俺が愛されし者だと公表することも、当面の間は隠しておこう。
その事実を公表したらどうなるかが、俺にはまだわからない。
教会とかに保護するという名目で、拉致される可能性だってあるかもしれない。
いやぁ、魔法の特訓とか秘密裏にやっててよかった。
誰かに見られていたら、厄介なことになっていたのはまず間違いないだろう。
これからはカモフラージュのために、祈祷法の文言も教わらないとな。
次回更新も一週間後を予定中です。