第十三話「ドア」
話が進まない\(^o^)/
展開の遅さにやきもきされていたら申し訳ありませんorz
暗殺者たち襲撃から一夜明け、今日はセレーナ姫、いや、セレーナの使役獣の儀だ。
あの後、俺たちを見つけた護衛たちに事情を説明している間も、セレーナは何も言わなかった。
具体的には、ただ暗殺者たちを前にしても、俺が勇敢だったことを褒めるのみで、俺が一人で暗殺者たちを生け捕りにしたことなどは黙っており、俺の考えた話に話を合わせてくれた。
もちろん、お礼のことも秘密である。
護衛たちは、見失っていた間にそんなことがあったことに驚き、自分たちの仕出かした失態に、真っ青になっていた。
護衛たちからの証言によると、二人でクレープを買うところまではしっかりと確認が取れていたが、その後すぐに俺たちの姿を見失ったという。
なんでも、何人もの護衛が俺達を見守っていたにもかかわらず、誰も俺達があの広場に入っていくことに気が付かなかったとか。
護衛たちの話が本当なら、暗殺者がなんらかの方法を使った可能性もある。
俺が知らないだけで、人目を欺くための魔法なんかもあるのかもしれない。
それにしても、人の目を欺く魔法というのはあれば便利だ。
これから行動するうえでいろいろと使う機会もでてくるだろう。
もしそんな魔法がこの世界になかったとしても、俺が一から創ればいいだけの話である。
これからの特訓に取り入れてみるのもいいかもしれない。
そんなことも考慮に入れて、今回の暗殺未遂事件は、結果的に俺が招いた事態でもあるため、護衛たちの失態については父上たちに減免をお願いするつもりだ。
ただ、見失ったことはどんな理由があろうと、護衛の責任であるため、ある程度の処罰は免れないだろう。
それについては、セレーナの命をより確かに守るためだったということで大目に見てもらいたい。
実際、今回の事件でセレーナには傷一つないし、暗殺者たちは全員生け捕りにした。
それに加え、公爵家嫡男が体を張って王女を助けたという名声のおまけ付き。
もう少しうまくやれればよかった気もするが、上々の結果といえるはずだ。
ただ一つ残念なことは、あの後も王都観光を続けることができなくなったことだ。
まだクレープ屋くらいしか見て回っていないし、まだまだ日も高かったが、セレーナを狙う者たちがこれだけとも限らないからと護衛たちが猛反対した。
セレーナは不満そうだったが、護衛たちに我が儘をいうつもりはないらしく、意外と素直に従った。
まぁ、別れ際に、また二人で王都と公都を巡ることを有無を言わさない感じで約束はさせられたが。
というか、何気に一か所増えている。
屋敷に帰って、護衛たちにも話した事件のあらましを父上に話すと、よく女の子を守ったと褒められた後に、無理はするなとそれは心配された。
セレーナのことを王女と言わず、女の子といったのがなんとも父上らしい。
簡潔にすればたったこれだけの内容なのだが、帰ってきてからの父上との会話は本当に長かった。
俺としても、父上に心配や不安に思われるのは本意ではないから、今後はもっと上手くやらないといけないな、いろいろと。
今回の暗殺の首謀者や、その目的については父上や王家に任せることになった。
真犯人をねっとり懲らしめてやりたいと思わないではなかったが、王女の暗殺には、高度に政治的な問題が絡んでくることはまず間違いなさそうなので、今の俺にこれ以上出来ることはなかった。
はやく、父上や母上の役に立てるようになりたいものだが、時間ばかりはどうしようもなさそうだ。
以上、回想終わり。
さっきも言ったように、今日はセレーナの使役獣の儀である。
昨日の事件もあり、セレーナの使役獣の儀は少数の身内だけでやることに決まった。
連日暗殺を企てるとは考えにくいし、これで今日の儀式はかなり安全になったはずだ。
ちなみに、我が公爵家も王家の身内に含まれるようで父上と俺の参加は決まっている。
俺とセレーナとは従妹だと父上が言っていたし、我が家は王家と近しい家柄なのかもしれない。
ただ、今回のために領地から王都へやってきていた他の貴族たちはこれに参加できない。
それゆえ今回は特別に、王家主催の舞踏会が開かれることになったらしいが、まだ舞踏会に参加する年齢ではないので、俺には関係ない。
さて、というわけで今日は夕方に王宮に行き使役獣の儀に参加するわけなのだが……なぜ俺の寝ているベッドに3龍が寝ているのか?
本当なら今頃、公都の屋敷で仲良くお留守番をしているはず。
昨日、セレーナとこいつらの話をしたので夢を見ているのかとも思ったが、両腕にしがみつくローザとブランシュの重みに、胸の上で眠るヴェルの暖かさが夢ではないことを知らせている。
3匹とも気持ちよさそうに眠っているが、もう朝である。
事情は分からないが、とりあえず皆を起こさなくてはならない。
といっても、両腕と胸を押さえられてしまっているので、俺が起き上がることすらできない。
声をかけても、誰も目を覚まさない。
声に反応して、俺の体にグリグリと頭を押し付けてくるだけである。
あれ?
ひょっとしてこれ、もう皆起きてね?
悪戦苦闘していると、ドアが開いて誰かが入ってきた。
ベッドから首だけを起こし確認すると、使用人のトリアだった。
顔を洗うための水や、タオルなどを持っている。
まだベッドにいる俺たちをみると目を丸くさせて驚いたような顔をする。
「あらあら。これが噂の三龍ですか? 本当に可愛らしい」
「あ? 俺は三流じゃねぇよ!? 」
「え?」
「あ、いや、なんでもない……すまない、寝ぼけていたようだ」
三流が可愛らしく見えるとは、トリア、駄目男好きとはなかなか厄介なもの好きである。
それにしても、朝起きれないだけで三流認定は厳しいんじゃなかろうか。
う~ん、まだ寝ぼけている感じがする……。
トリアに手伝ってもらいなんとか三龍を起こし、着替えや洗顔ができたが、こいつら、まったく俺から離れようとしない。
「どうしてこいつらがここに? トリア、何か聞いていないか? 」
「はい、それに関しましては……「アレスッ!!!!」」
もう何度目か、またドアが吹き飛んだ。
ドアを吹き飛ばすのは我が家のデフォですか?
「ああ、アレス、大丈夫? 怪我はない? 襲われたって聞いて、夜も眠れなかったわ!! 本当に無事なの? 顔をよく見せて? 」
なんというか、母上だった。
強烈に抱きしめられて、呼吸がしにくい。
昨日の襲撃よりも窮地に陥っている。
というか、母上も公都にいたはずでは?
次回更新は週末を予定してます。