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第十話「王都」

お気に入り登録4200件以上、読んでくださる皆様ありがとうございます!!

 第二王女暗殺。

 偶然に舞い込んだこの情報をもとに、今後どう行動すべきか。

 俺はそのことを、王都までの馬車の中でずっと考えていた。


 非情だが、俺が一番に大切にし、守るべきものは、我が両親であり、公爵家だ。

 第二王女を救うことで、両親に危険が迫るかもしれないというのなら、俺は第二王女を見捨てるべきだ……なんて考えは、すぐに消えた。


 必ず、第二王女、セレーネ姫を助けてみせる。

 俺の関わるところで、幼い命が失われるのは、一度だけで十分だ。


 両親や公爵家ももちろん大切だが、ここでセレーネ姫を見捨ててしまえば、俺は俺でなくなってしまう。

 それだけではない、利益や楽しみのために、セレーネ姫を犠牲にすれば、俺はあの天使たちと同類だ。


 ただ、彼女を暗殺者から救うと決めたものの、俺が取れる手段は多くない。


 父上に相談するという手も考えたんだが、情報の出所について話せない以上、信じてもらうには説得力がない。

 そもそも、この情報の真偽自体が怪しいから、下手をすれば、俺に妄言癖があるなんてことになりかねない。


 他にも相談しにくい理由はある。

 まず、父上に危険な真似をしてほしくない。

 グリフォンを従える父上が、遅れをとることなどまずないだろうけど、万が一ということもある。

 加えて、セレーネ姫を狙う輩から恨みを買う恐れもあるし、気付かぬうちに政争に巻き込まれていました、なんて笑えない状況もありえる。


 他の者に伝えて、警戒させるという手もあるが、残念ながら、その伝手もない。


 さきほど雇ったばかりの影など、まだまだ信用はできない。

 あれは、今のところ情報収集程度しか任せることがない。

 情報収集ならば、あいつらに頼らずとも自分である程度は行えるし、たいして使えなくとも、影響は出ない。

 もし、思った以上に影たちが使えて、信用ができるのなら、手元で使える駒としてもいいし、約束通り、父上に仕官させてもいい。

 影は影で、何らかの目的から、こちらを利用しようとしているのだろうし、そちらがそのつもりなら、こちらだって利用するだけの話だ。


 閑話休題。

 結局、俺自身が動くという方法しか、選択肢が思いつかない。


 公爵家嫡男とはいえ、いまだ5歳。

 両親ともに若く健在で、俺の公子としての政治的価値もまだ少ないだろう。

 公爵である父上が動くよりは、はるかにましのはずだ。

 そして、政治的価値こそ少なくとも、公爵家嫡男であることには変わりはなく、もし暗殺者からセレーナ姫を救えば、もれなく王女を救ったという名誉まで手に入る。

 この名誉は、公爵家の家名を高めることにもなるはずだ。

 

 まぁ、こうやっていろいろ屁理屈を並べているが、本音を言えば、俺が自分の力であの従妹を助けたいだけなのかもしれない。

 俺だって男だ。

 お姫様を助けるなんてシチュエーションに憧れないわけではない。


 あまり目立つことはしたくないけど、今回は人の命が懸っているから、そう悠長なことも言っていられない。

 一度救うと決めたからには、全力を出す。


 まずは、父上からセレーネ姫の使役獣の儀について、詳しい話を聞こうと思ったが、あいにく父上は、馬車の座席に座ったまま眠ってしまっている。

 馬車から見える空はすでに白み始めていた。

 随分と長い間、考え込んでしまっていたようだ。

 そのことに気が付くと、一気に眠気が襲ってきた。

 王都に付けば、父上か誰かが起こしてくれるだろう。

 睡眠も必要だし、少し眠るか……。


 体を揺すられて目を覚ますと、馬車は大きな屋敷の前で停まっていた。

 

「着いたぞ、アレス。ここが、王都にある私たちの家だ。疲れただろう? 夜は明けたが、まだ朝早い。使用人たちへの顔合わせは後で行うとして、お昼くらいまで屋敷でゆっくり休むといい」


 父上の言葉を聞いているうちに、ぼんやりとしていた頭が冴えてきた。

 寝ぼけていた俺は、いつのまにやら父上に抱きかかえられて、屋敷の中へと運ばれている。


「王都のお屋敷? 父上、私はいつの間に王都に入ったのですか?」


 せっかく王都の街並みを見るチャンスだったのに、寝過ごしてしまったとは、不覚。


「気持ちよさそうに、ぐっすり寝ていたから起こさなかったんだよ。使役獣の儀は明後日だ。それに、王都の街を見る機会はすぐくるはずだから、今は休みなさい」

 

 俺が残念そうな顔をしているのを見た父上が、苦笑しながら言う。


「はい、父上。私もまだ眠いようです。お昼まで休ませていただきます。それで父上、もう歩けますから、降ろしてください」

  

「はは、赤ん坊からずいぶんと大きくなったものだ。丈夫に育って私も嬉しいぞ! 」


「いや、ですから、重いでしょう? 降ろしてください」


「なんの、これくらい軽い軽い、ははははは!! 」


「ちちうえーーーーー」


 父上に部屋まで運ばれた俺は、その一部始終を、初めて会う使用人たちに、目撃されることになった。

 顔面から火が出る思いでした。


 俺のために用意されていた部屋のベッドで寝ていると、部屋の外が騒がしくなって目を覚ました。

 呼び鈴を使うと、今まで見たことのない使用人がやってくる。

 若い女性で、美人というほどではないが、理知的な顔立ちををしている。

 着ているのは、公都の使用人たちと同じお仕着せだ。


「これは坊ちゃま、お目覚めですか? お起こししようと、準備していたところでした。お外が騒がしく申し訳ありません。ただいま、大変なお客様がお出ででして、坊ちゃまをお待ちです。あ、それと申し遅れましたが、私、この屋敷にてお坊ちゃまのお世話をさせていただく使用人のトリアと申します。王都ご滞在の間、よろしくお願いします」

 

 丁寧に頭を下げ、挨拶をする使用人トリア。

 とりあえず、坊ちゃまは、やめてほしい。


 というより、誰か客が来ていて、俺を待っているらしい。

 誰だか知らないが、あまり待たすわけにもいけない。

 着替えをするために、起き上がった時、俺のいる部屋のドアが吹きとび……はしなかったが、勢いよく開いた。

 このドアの開き方、なんかデジャビュを感じたが、気のせいか?


「王都にようこそ、アレス!! それで、そなたの使役獣はどこじゃ!? 」


 矢のように部屋に飛び込んできたのは、小柄な人影、というか、セレーナ姫だった。

 きょろきょろと探しているのは、俺の使役獣たちだろう。

 セレーナ姫、随分と懐いてたからなぁ、龍たちに。


「これは王女殿下、残念ながら使役獣たちは、公都で留守番ですよ」


「何!? 留守番じゃと!? ……むぅ」


 あ、なんか、かわいいぞ。

  


評価、感想、お気に入り登録等があれば作者は感動のあまり死んでしまうかもしれません、ご注意ください。


次回更新は一週間後かもです、早ければ四日後くらいです。遅筆申し訳ありません;

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