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軽い百合表現有り。ご注意ください。
「それで、どういうことですか」
米神をぴくぴくさせたセイがスカーレットに問う。
セイは些か、冷静さを取り戻したようだった。
「ふむ……簡単にいうと私の部下たちだ」
「女帝付き第一騎士フォーレル・ギルヴェントだ。どうぞよろしく?」
ぱちりとウインクなんてしてみせる、騎士には見えない整った容貌の赤毛の男。
その雰囲気はガキ大将をそのまま大きくしたような、茶目っけのあるものだ。
「女帝付き政務官のレレームド・シンドシンです。」
金髪碧眼と美形要素を取りそろえているにもかかわらず、どこか地味めな男だ。
神経質そうに、じろじろとセイを見まわしている。
「女帝付き第一魔法士、ランファだ。よろしくしてくれなくて良い」
キリリとした美男子のような、銀髪の女が言う。
膨らんだ胸以外で、一切女らしさを感じさせない男らしい女。
「女帝付き女官のシンフォアでーす。セイちゃんって割とイケメンだけど女帝様には完璧に負けてるね!」
黒髪で凹凸の少ない体の少女が、馬鹿っぽくそう言う。
馬鹿っぽいというよりは能天気なのかもしれない。いや、何も考えていないのかもしれない。
「って、名乗られたからって納得するわけないでしょうが!!」
机を思い切り叩き、立ち上がるセイ。
落ち着きなんて宇宙のかなた。
「なんで異世界人がこんなに増えてるんですか! おかしいじゃないですか!!」
「おかしいのは貴様だ神官長。名乗られたのだから、名乗り返したらどうだ?貴様はアユゥーミ殿よりも劣っているな」
「うるさいですよ! わけのわからない奴らに名乗れるもんですか!」
「だからそういうところがダメだと言っているんだ」
やれやれ、と言わんばかりに首を振るスカーレット。
「貴様は誰が相手だったらちゃんと挨拶をするんだ?貴様はまだ私に対しても名乗っておらんぞ?貴様より偉い、この私にだ」
二国を治める皇帝と、一国の神官長。
どちらが上位かなど、子供でもわかる話である。
「その何の役にも立たないプライドをさっさと捨てることだ。もっと大事なことがあるだろうに」
「っ、帰ります」
セイは、特に反論をするわけでもなく退室した。
彼ももう二十代後半。自分が直すべき点ぐらいは気付いているのだろう。
ただ、これまでに形成された性格が、簡単に直らないだけで。
しかし、スカーレットはそう簡単にセイを思いやったりはしない。
セイがただの町民であったなら、仕方ないなと優しい目でみたかもしれないが、彼は仮にも人の上にたつ存在。
神官長という、神官たちを統べる立場にあるのだ。
そういう人間がいつまでもただの子供のように振る舞うのを、スカーレットは認めない。
「帰っちゃいましたよー?」
「あぁ、仕方ないさ。奴はプライドは高いくせに意気地はないという、ダメダメ人間だからな」
シンフォアがクッションソファーに座るスカーレットの足元に座り込む。
「じゃーなんで、助言してあげるんですかー?女帝様が助言してあげるほどの人間じゃないと思いますー」
ぷくうと頬を膨らませるシンフォアは、凹凸のない肉体と相まって幼い子供のようだが、これでもセイと数歳しか変わらない。
合法ロリとは彼女のことである。
「ハハハ。何を妬いているのだ?ん?」
スカーレットが屈んで、シンフォアの顎をすくい上げる。
「だってー」
「お前は本当に可愛いな?シンフォア」
シンフォアの唇の横に、ちゅ、と軽いキスを落としたスカーレットは笑う。
「ただの―――××××さ」