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 「えー、俺にもキスして欲しいなぁ。シンフォアだけなんてズルイ」


 フォーレルが人差し指でつつー……とスカーレットの唇を撫でる。

 その手つきは色めいていて、情事の始まりすら匂わせた。


 色事に慣れきっていることを示すかのような、フォーレルの甘い声と表情はしかし、スカーレットには効いていない。

 逆に彼女は、男を落とすための悪い顔で微笑みかけた。


 「何を言っている。昨晩、閨でやっただろう?」


 唇にあてられたフォーレルの人差し指を、甘噛みして、舐める。


 「まだ、欲しいのか?」


 「……貴女に囚われた哀れな男に、救いの手を差し伸べてはくれないのですか?女帝サマ?」


 スカーレットの口内に這入り込んだ人差し指で、彼女の上あごを擦り、にやにや笑顔で顔を近づけるフォーレル。


 「ふふ……お前のそういう所が好きだよ。良いだろう。今晩も私を楽しませてくれ」


 そう笑ったスカーレットに肩を落とすもの三名。

 ガッツポーズをするもの一名。


 「ううう~途中までは私が上手い事いってたのに! フォーレル様の馬鹿ぁ~!」


 「くっ! 私はいつになったら順番がまわってくるのだ!」


 「貴方より私の方が切実ですよ……ほとんど一緒に居れないのに夜も別々なんて……! フォーレル許すまじ……っ」


 「はっはっはぁ~! 俺の一人勝ちだぜ!」


 語尾に星マークでもつきそうな口調でいってのけるフォーレルは、閨に侍る事を許されなかった三人の恨めしそうな視線を気にも留めない。

 細かいことはあまり気にしない。それがフォーレル。大味な性格をしている。


 「だってー、俺の悲しみはまだまだ癒えないんだもーん」


 「だもーんとか言うな気持ち悪い」


 「ランファちゃん冷たい」


 「まぁ、でも実際フォーレルの絶望は大きかったですよ。だってこいつ、目の前で女帝様に消えられたんですから」


 「あぁ……そういえばそうだったな。お前と風呂に入っていた時に、私が召喚されたんだった」


 思い出した。という表情をするスカーレット。


 そう、スカーレットが召喚されたあの日、あの時。

 フォーレルは勝ち取った『ご一緒にお風呂』の権利を使い、楽しく過ごしていたのだ。

 それがどうだ。楽しかったのは途中までで、行き成り姿が霞みはじめたスカーレットを前に、動揺していたら数秒後にはもう彼女の姿は、影も形もなかった。

 フォーレルは多大な衝撃をうけた。

 女帝付き第一騎士の自分が一緒にいながら、スカーレットただ一人を連れて行かれたという事実に。女帝付き、なのに一緒に行けなかった事、騎士なのに守れなかったこと、諸々が彼を苦しめた。

 そして何より、自分の目の前でスカーレットを失ったという絶望。


 フルチンで浴場を飛び出し、レレームドたちを招集したのは言うまでもない。


 「グスン。本当にショックだったんですよ。だって女帝サマなら絶対俺を連れて行くことも不可能じゃなかったはずなのに、俺をあっさり捨てて行った」


 「拗ねるな。ちゃんと拾ってやっただろう?一番に」


 わざとらしく拗ねて見せるフォーレル。

 三十路前の男がやっても可愛くもなんともないが、彼の性格のおかげでまぁなんとか愛嬌はある。

 ……それが良いのか悪いのかは、判断のし辛い所だが。




バレバレかもしれませんが、私はフォーレル贔屓です…っ!←

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