串焼き屋の手伝い
「なんだよ、串焼き屋の騎士って。お前腹でも減ってるのか?」姿は変わっても、失礼な所は変わらない。
文句を言おうとしたら、今度はミラちゃん一家がやって来た。
ミラちゃんは金髪のジョンを見た瞬間。
「あーー肩車の騎士さん」と叫んで飛びついた。
カイルさん達は天気のいいうちに屋台を開きたいと言うので、私達も買い物があるし、もしかしたら街の方がジョンを知っている人がいるかもしれないと、一緒に荷車で街に行く事になった。
ジョンはできたばかりの赤の帽子と手袋をしてむすっと座っている。
「じゃあ俺は迷子のミラを保護して、お前にもその時会っているのか?」
「そう、その時同じような騎士服を着た人に、団長って呼ばれてた」
ジョンは真剣な顔をしているが、赤い帽子で全て台無しだ。可哀想だから、今日違う色の毛糸を買ってあげよう。
「ジョンは何色が好きだったか覚えている?」
「赤以外!」
「わかったわよ、新しい毛糸で帽子作るから、後で毛糸屋さんで何色がいいか教えてよ」
「俺は帽子なんかいらないし、何色でも良い。赤以外なら」
本当にあの時あった騎士さんはすごく感じが良かったのに、本当にあの時の人なのかな?
「あの黒い騎士服の騎士団は吹雪の前も見かけないし、何処かに遠征とかに行っているのかもな。まあ屋台で騎士の人がきたら聞いてみるのも良いかもしれない、ジョン。今日は屋台を手伝ってくれないか?」とカイルさんがにこやかに言うと、
「勿論だ」と快諾していた。私にはあんなにツンツンなのに、カイルさんには素直よね。
「じゃあアイラちゃん、私達は買い出しに行けるわね。また山の方に黒い雲があるから、明日から雪になりそうよ」
私達が食料品の買い物から帰ってくると、屋台はそれは大繁盛していた。特に女性客で。
「お兄さん、串焼き3本ください」
「私は5本で、こんなにかっこいい人が焼いてくれるなんて絶対に美味しい」
カイルさんは私たちを見て、
「手伝ってー!!」って叫んでる。
結局今日の分はお昼までに全て売れてしまった。
「すごかったな、ジョンの客寄せ効果。おかげさまでいつもの余る分まで売れたから、はいこれ、今日の賃金」
カイルさんはジョンにお金を渡す。
「これで、アイラちゃんに何か買ってあげたら。お家にお世話になってるんだし」とこっそり言っているが丸聞こえだ。
「欲しいものはないんで大丈夫です」と私が言うと。
ジョンは無言だった。
「ジョンの好きなもの買えば良いでしょ、また雪で外に出られなくなったら、暇になっちゃうから、鍛錬用の木刀でも買ったら?」
「お前にしては良い考えだな。武器屋はどこだ?」
私が探索すると毛糸屋さんの近くだった。ついでに毛糸を選んでもらおう。
「こっちよ。カイルさん。私達は歩いて帰るので、今日の食料品だけ。家の前におろしておいて貰って良いですか?」
「わかったよ、アイラちゃんも手伝いありがとうな」と言って、カイルさん家族は去って行った。
少し歩くと武器屋さんについた。
武器屋さんなんて入った事がないから、私はワクワクしている。
「お前も入るのか?」
「え?ダメだった?危ないの?」
「いや、お前にはつまらないだろうと思って」
「そう?入った事ないからワクワクしてたの」
「。。。なら良い」
武器屋さんはゲームで見るみたいに、壁に色々な武器が飾られている。あんなでっかい斧とかどうするんだろう。
「いらっしゃいませ、本日は何を?」と店主がびっくりした顔をして私達を見ている。やっぱり女の人は武器屋に来ないんだな。
「鍛錬用の木刀を探している。なるべく重いのが良い」
「ではこちらへ」
2人が細かいことを話し始めたので、私はお店の中をうろうろする。たまに鑑定とかして、値札と比較して掘り出し物がないか探す。この能力楽しいわ。
店の奥に気になる剣があった。雪の結晶のモチーフに青い石が付いていて、ジョンのつけているネックレスに似ている。
「鑑定」
イリオス家の氷の魔剣
価値:計測不可
また。。計測不可だ。でも値札には大銅貨5枚って書いてある。
これはお買い得?ジョンにいいかもと思って持ち上げようとするが、私には重くて無理だ。
カウンターに行くと木剣を素振りしては、まだ軽いと言っているジョンがいた。
「ジョンーー、むっちゃ重い剣がお買い得でこっちにあるよ。どうせならこっちにしたら?」
「お前に剣の何がわかるんだ」と言いながらついて来た。とりあえず文句言わないと行動できないのかね?
「ほら、デザインもネックレスとお揃いだし」とついて来た店主とジョンに見せる。
「あーーこれ、赤のクロークを着た人が売りに来たんだけど、重くて誰も持ち上げられないから、安くしてるんだ」
「赤??いつだそれは」
「3-4日前かな?吹雪の前だから」
ジョンは剣の柄を握り、スッと鞘から取り出す。まるで重さなんかないみたい。
「君すごいね、俺は両手でここまで運んでくるのが精一杯だったよ、それあっても邪魔だから買い取り金額の大銅貨4枚でいいよ」
「これにする」とジョンはお金を払った。店主さんは一緒についてきたというベルトもおまけしてくれた。
早速、ジョンは腰に剣をつける。身長的にもぴったりだった。
「ネックレスと同じっぽいし、これはジョンの剣だったのかな?イリオス家って聞いて何か思い出す?」
「わからないな。。探索はしたのか?」と真面目な顔で聞いて来た。
「してみたんだけど、不明って出たの。
家名があると言うことは、きっと貴族よね。貴族の名前が調べられる所がないのかな?」
「国立図書館ならあるかもな」
「じゃあすぐ行こう!」
「待て、お前は毛糸が欲しいんだろう。買ってから行こう」
「え?でも早く知りたいでしょ?」
「俺はそこまで狭量な男ではない。それぐらい待てる」と毛糸屋さんのドアを開けてくれた。
私は自分の帽子と手袋用の毛糸を選んでから、店の片隅に立っているジョンの所に行った。
「帽子はいらないって言うけど、薪割りの時にジョンが寒いのは嫌なの。好きな色を選んで?」
ジョンは黙ってる。
やっぱりダメか。。本当の目の色に合わせて、青にするかな。
「。。。クリーム色、その右手に持っているのが良い」
「これ?いい色よね。わかった。これで作ろう!お会計してくるね。外で待ってて!」
私がお店の外に出ると、ジョンが険しい顔をして立っている。
「アイラ、俺の後ろに」
ジョンが私の名前を呼ぶのは初めてだ。どきっとしたが、ジョンの声が真剣で、すぐに言われた通りにした。
ジョンの目線の先には、赤いクロークを着た人がいる。
「こんな所で会うとは、あの吹雪の中氷漬けになったと思ったよ」
「お前は誰だ、俺に何をした?」とジョンが噛み付くように言う。
「おや?忘却の魔術は効いているのか。それは面白い。お前の剣も売り払ったが、もう取り戻したようだな。ここは場所が悪い。今日は見逃してやろう」そう言って、赤いクロークの人は消えた。
「だから、俺は赤は嫌いなんだよ」




