大きな落とし物
串焼き肉はすごく美味しかった。
買ったワインにも良く合う。
また買いに行こう!ミラちゃんにも会いたいし。
それから、毎日私は街へ出かけた。
お財布はフィレーナさんが言ったように、使った分は毎日補充される。
お金の心配がないのはいいわね。
街に行くと段々と探し物の依頼をされるようになった。家の鍵だったり、家に伝わる大切なアクセサリーだったり、お礼は価値が低い物はは食べ物や日用品でもらったり、価値が高い物はお金で貰ったり。
フィレーナさんからのお財布を普段の生活費に使い、探し物の仕事で貰ったお金で洋服や嗜好品とかも買えるようになって、日々の生活も落ち着いて来た。
私が来てから数ヶ月もすると季節は冬になった。
雪はたまに降る程度だけど、とにかく寒い。家の中は暖炉で暖かいけど、街に買い物に行くのはきついのでブーツとコートなどの防寒着が欲しい。
暖炉は薪なので、ディーノさんにつけ方を教えてもらったがまだ苦手だ。
仕事の方は順調で、この前は貴族様のお屋敷で数十年前になくなったと言われる魔法の指輪を探した。指輪は屋敷の書斎の隠し棚にしまわれていた。どうやら先代が亡くなる前に場所を伝えるのを忘れていたようだ。
物凄く感謝され、大銀貨5枚もいただいてしまった。
これで数ヶ月は家に篭っていても大丈夫そう。牛乳とチーズはディーノさんからで買えるし、街に行って防寒具と乾物の食料品をまとめ買いしたい。
今日は珍しく天気もいいし、今はがチャンスと思ったが。
玄関のドアが重くて開かない。
全身を使って押して見たがダメだった。
窓から見てようとしたが、角度が悪くてよく見えない。
しょうがない。。。キッチンから裏庭に出て、家の前に回ると。
「嘘でしょ?落とし物?」
玄関のドアにもたれるように黒髪の大柄な男性が倒れていて。
頭の上に紙が載っている。
そこには「落とし物」と一言だけ書かれていた。
誰がこんなの落とすのよ。
「もしもーし、大丈夫ですか?起きてください」
しかし起きる気配はない。怪我とかはしてないみたいだし、触ってみると暖かいので生きている。
どうしようか悩んでいると、ミラちゃんの家族が荷馬車で通りかかった。
この家族はうちよりもう少し奥の方に住んでいて、毎日街に行って串焼き肉の屋台を出して商売をしている。すっかり私に懐いたミラちゃんは、よく遊びにきてくれるようになった。
「あーーカイルさん、ちょとお願いが」
ミラちゃんのお父さんに助けを求める。私1人じゃこの人を動かせないし。
「落とし物なの?」とカイルさんが困惑したようにいう。
「そうみたいですよ?紙にも書いてあるし」と私が紙を見せる。
2人でなんとか家に運び入れて、ソファーに寝かせた。今日は天気が良くても寒いから。
とりあえずこの人が誰か調べないと。
「鑑定」
名前: ????
職業:騎士
年齢:25歳
探し物:???と????????
あれ?名前と探し物に????がついているのは初めてだ。
「名前も探している人も見えないわ。一応騎士とは出てるけど」
「アイラちゃんでもわからないなら、相当だな。まあこの騎士服は王都でたまに見かける。でもそんなに数は見ないから、何処か違う地域からきてるかこの国の騎士団でも人数が少ないのかもしれない」
そうねえ、この国の騎士団は深い緑の騎士服だけど、この人は黒だものね。
「アイラちゃん、俺たちは仕事に行くけど。同じ騎士服の人を見かけたら、行方不明の騎士はいないか聞いてみる。アイラちゃん買い物に行きたかったんじゃないか?アンナが買い物を代わりにして、帰りに届けようか?」
「え?いいんですか?この人が起きるまで家を離れる事はできないし。あ、ミラちゃんを預かりますよ。そうしたらアンナさんも買い物しやすいかと」
「それは助かるな。じゃあそうしよう」
私は買い物リストとお金を渡した。アンナさんと私は服も靴もサイズが一緒なので、防寒具も一緒に頼んでおいた。どれがいいとかわからないし、元々アンナさんに相談するつもりだったし。
カイルさんとアンナさんが街に行ったので、私とミラちゃんはクッキーを作る事にした。
ミラちゃんは一生懸命クッキーの型抜きをしてて可愛い。
クッキーの香りが家中に漂う。
オーブンでクッキーを焼いている間、ミラちゃんは騎士さんを見に行った。
「アイラちゃん、お兄ちゃんの鼻がピクピクしてる」
「ふふふ、寝ててもクッキーの匂いがわかるのかもね。もう出来たけど、ちょっと冷まさないといけないから、先にお昼にしようか?手を洗って来てね」
「はーい」
私が作ったクリームシチューとパンでお昼ご飯を食べていると。
ミラちゃんがふと顔を上げて。
「お兄ちゃんおはよう。お腹すいた?」
え?と思って後ろを向くと、騎士さんが私の後ろに立っていた。
「お前は誰だ?ここは。。。??」
私が何かを言う前に騎士さんのお腹が鳴った。
「「。。。。きゃはははははは」」
ミラちゃんと私は大爆笑だ。
騎士さんはむすっとした顔をしてるが、ほんのり顔が赤い。
「笑うな、お腹すいた」とどかっとテーブルについた。
私はまだ笑いながら、シチューとパンを出した。
彼はすごい勢いでシチューとパンを食べる。
「おかわり」
私とミラちゃんは呆気に取られる。今。。多分1分もかかってない。。
結局、お鍋いっぱいのシチューは全て騎士さんが食べた。
どんだけ食べるのよ。
そして、騎士さんはチラチラとクッキーを見てる。
「お兄ちゃん。これはミラがお父さんとお母さんに作ったのよ。だから食べちゃダメ」とミラちゃんがいうと、騎士さんはしゅんとしてしまった。
「ミラちゃん、もう一回クッキー作りましょう。騎士さんも手伝ってくださいね」
「俺がか?」
「働かざるもの食うべからずですよ。食べたかったら手伝うんです!」
「俺を誰だと思っているんだ。。。俺は。。俺は。。誰だ?」
。。。。。え?
なんの疑問もなくランチを食べてたけど、まさかの記憶喪失?
「俺はなんでここに来たんだ?何か持ってなかったか?」
「頭に落とし物って書いてある紙があっただけです」
「お前は俺が来た時に何も気が付かなかったのか??」
「私の部屋は奥ですからね。さっきドアを開けようとするまで気が付かなかったです。そして、私の名前はお前じゃなくて、アイラです。こちらはミラちゃん。あなたは名前がないと不便だから。。どうしましょうかね」
「ポチとかは?私の家にいる犬に似てるし、食いしん坊なとこも同じ」とミラちゃんが真面目な顔で言う。
「あら可愛い」
「ふざけるな!俺は。。。。もっとかっこいい名前がいい」
あら、ツンデレ系?
「名無しの権兵衛じゃいやよねきっと。あ、英語だとJohn Doeっていうのよね。ジョンにしましょう」
「ジョン。。。ダサいな」
「嫌なら権兵衛にするわ」
「ジョンでいいです。。。」
「じゃあ、ジョンお兄ちゃん。クッキー作ろう!」
「お?おぅ」
ミラちゃんの勢いに負けてジョンは一緒にクッキーの生地を混ぜて、ハートマークの型抜きを使ってる。
クッキーが焼けた頃はちょうどおやつの時間だったので、みんなでティーパーティをした。
「何でティーパーティなんだよ。普通に飲めばいいじゃないか!」ナプキンやドライフラワーで髪を飾られたジョンが怒ってる。
「あ、言葉遣いが悪いとクッキーあげません」とミラちゃんがまたジョンにビシッと言っている。
「俺も作ったのに!」
クッキーをなんとか貰えて嬉しそうに食べたり、ミラちゃんと昼寝しちゃったり。
本当にこの人は騎士なの?
「鑑定」
名前: ジョン-仮
職業:騎士
年齢:25歳
探し物: ???と??????家族
なんか増えてる。この人の家族は何処にいるんだろう?
ガタイが良くて、カッコつけているけど甘党の人って、意味もなく信用できる気がします。




