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EP:7 そうだ、賃貸借りよう!

俺はリリアに手を引かれてエリオスの

不動産屋に足を運んでいた。

リリアはご機嫌な様子で扉を開け、

店の中に入る。

入店を示す鐘の音が鳴り響くと同時に、

店のスタッフが俺たちのもとへ駆け寄ってきた。


「いらっしゃいませ!

本日はご来店ありがとうございます!

物件をお探しですか!?」


この店員勢いがすごいな。

目をキラキラさせてやがる。

確実に買わせるという気概を感じる。


「は、はい、賃貸でお願いします…」


リリアは少し押され気味に答えた。


「承知しました!

こちらにおかけください。」


俺たちは流れるままに席についた。

その瞬間に背後を三人の店員が囲む。

絶対に逃さないとでも言うかのように…

リリアはキョロキョロとして不安そうだ。

そんなリリアにお構いなしに店員は尋ねる。


「本日はどのような物件をお探しですか!?」


不動産屋の元気な声にリリアは

びくつきながら返す。


「えっと、冒険者ギルドの近くで、

一軒家がいいです…」


完全に縮こまってしまった。

やはりリリアは人付き合いが苦手な様子だ。


「冒険者ギルドの近くの一軒家ですと、

これらの物件がおすすめですよ!」


そう言って何枚かの間取り図と

絵を提示してきた。


(よくできた絵だな。)


物件の外装から内装まで丁寧に描かれていて

実際に足を運ばずともある程度理解できる。


「どれもいいですね。

それぞれ説明もらえますか…?」


リリアがワクワクしながら尋ねると

スタッフは快く説明してくれた。


「はい!まずはこちらの物件ですね。

冒険者ギルドからは徒歩5分なので、

とても通いやすいかと思います。

冒険者の方にも人気な物件ですよ!」


いきなりなかなか良さそうなのがきた。


「ただ、築150年ものの

長寿物件でございまして…」


住むわけがない…!

リリアはそれを聞いて不満そうな顔を浮かべた。


「ほ、他には…?」


「で、でしたら!

こちらの物件などいかがでしょうか!?

冒険者ギルドからは徒歩7分、

二階建てでお庭付き、新築でございます!」


「すごい!めっちゃいい!」


リリアの目にキラキラが戻った。

確かに、俺としてもかなりの好条件だと感じる。

間取り図や内装絵も悪くない。


「ここいいですね!」


「左様でございますか!

こちらの物件になりますと、

家賃は一月金貨5000枚になります!」


払えるか!!

そんなの払えるのは大富豪くらいだぞ…

リリアは再び顔が引き攣った。


「そ、その、他には…?」


リリアのその言葉を聞いて俺たちを囲んでいた

スタッフどもが二歩近づいてきた。

リリアの顔がどんどん青ざめていく。


「そうですね、他になりますと、

あとはこの物件のみになります。

冒険者ギルドからは徒歩12分と、

少し遠くはなってしまいますが、

築50年のお庭付きの一軒家となっております。

家賃は一月金貨20枚となっております。」


その条件を聞いて俺はリリアを問いただす。


「お前この額毎月払えるか?」


「助成金使えば平気。

クエストちゃんとやれば余裕できる。」


「よし!ここにするぞ。

契約しないと帰れなそうだしな。」


「そうだね。」


俺たちの小声の作戦会議が終わったところで、

リリアはさっそく契約の手続きを始めた。

無事に住まいが見つかってよかった…


じゃない!よくない!

冒険者のくせして何一軒家借りようとしてんだ!

贅沢にも程があるだろ!

これからもっと、たくさんの街を訪れて、

たくさんの敵と戦って、

あわよくば部下たちと再会できたらなって

思ってたのに…


俺が憂いているとリリアが満面の笑みを

浮かべながら駆け寄ってきた。

契約書を握りしめて…


「クロ終わったよ、帰ろ!」


「…ああ。」


俺たちは不動産屋を後にして帰路につく。

今夜はリリア家で寝泊まりし、

明日荷物を運び出すようだ。

なんで魔王のこの俺が、

勇者の引っ越しの手伝いを

しなければならないんだ…






次の日の朝、


「財布持った?忘れ物ない?」


リリアの母が尋ねる。


「大丈夫だよ、何回も確認したから。

それじゃ、行ってきます。」


「あっ、ちょっと…!」


「たまに顔見せに来るから〜!」


そう言ってリリアは家を出た。

俺も後に続いて出ようとしたとき、

リリア母に呼び止められて、


「クロちゃんちょっと…」


「クロちゃん言うな。」


もう完全にクロちゃん呼びが

定着してしまった。

リリア母は俺に哀れみの

視線を向けながら言った。


「ごめんなさいね、荷物全部押し付けちゃって…

リリアのこと、これからもお願いね。」


「ああ。」


まったくだ。

リリアの部屋にあったベッドや机など

全ての家具を荷台に乗せて、

俺が引っ張って行かねばならない。

これが大魔王の姿か…?


俺はリリア母に挨拶をしてリリアを追いかける。

重い思い荷物を運びながら。


相変わらず長い徒路を経て、

昨日契約した一軒家にやってきた。

絵で見た通りの物件だ。


「うおおおおおお!」


リリアは両手を上げて叫びながら中に入る。


(子どもか!)


俺も後に続く。

リリアはどこから出したのか

わからない笛を加えて、


「さぁクロ!一仕事行くよ!

それはこっちの部屋に、

寝室はここにするからベッドは

ここに運ぶのよ!」


軍隊長かのように指示を出してくる。

こいつ、全部俺にやらせる気じゃないだろうな…

俺の心配は完全に的中し、

持ってきた荷物の整理を

全てやらされるのだった。


それから30分ほど、

俺は休まず荷物を運び出し、

やっとの思いで引っ越し作業を終えた。


「はぁ〜、つっかれた〜。」


「お前何もしてねえだろ!」


「何言ってるの、

ちゃんと笛吹いて応援してたでしょ。」


「うるさくて仕方なかったわ!

バカにされてる気分だったよ!」


「わかったわかった、ごめんごめん。

ちょっと休も、ね?」


リリアはそう言って俺の頭を撫でてきた。

さながらペットを愛でるかのように。

この扱い、屈辱だ…





リビングで少し休んでいたとき、

リリアが俺を呼び出して言った。


「クロ、ギルドに行こ。

クエスト受けにいくよ。」


「クエスト…!」


俺は思わず飛び跳ねて起きてしまう。

冒険者として働く以上、

クエストを引き受けるのは避けられない。

俺はなんだかんだ楽しみにしていた。

これまでは冒険者免許取得試験を除いて

退屈な日々が続いたからな。


俺は浮かれながらリリアについていき、

冒険者ギルドのクエスト掲示板を前にする。

クエストの張り紙には星が書かれている。

見たところ、星の数が多いほど

難易度が高いようだ。

俺が星5つの討伐クエストを

提案しようとしたとき、

リリアはすでに張り紙を持って受付にいた。


「あ、あの、すいません…

このクエスト受けたいんですけど…?」


リリアの呼びかけに応じてスタッフがやってきて

クエスト受注を受理したようだ。


「はい、スライムの討伐クエスト、

受注完了しました。

健闘を祈ります。

"進め、その先に栄光あれ!"」


いつぞや聞いた激励の言葉を受けて

リリアが戻ってきた。

ていうか、スライムの討伐クエストだと?

スライムとは街の周辺に生息する

ゼリー状の魔物で、

雑魚と呼ぶのに相応しい魔物だ。

そんな雑魚を、俺に狩らせようとでも言うのか?


「さっ、人生初のクエスト、

こなしに行きましょ〜!」


「ちょっと待て。

これはどうだ?"上級ゴーレム"の討伐、

星5つだぞ?」


リリアは淡々と答えた。


「却下、そんな危ないやつやりたくないし。

それに私、ゴーレムはしばらく見たくない。」


どうやらこの前の戦いで

ゴーレムが怖くなったらしい。

大魔王のこの俺が、

スライムの討伐をやらされるのか?


「俺がいればどんな相手だろうと負けはしない。

報酬金は必然的に上がり、

お前はより早く強くなれるんだぞ?」


「今はまだいいよ。

もっとレベルを上げて、

いろんなスキルを習得してからね。」


俺はなんとかして高難易度クエストを受けるよう

促してみるがリリアには通じない。

俺はリリアに手を引かれて冒険者ギルドを出る。

仕方なくクエストを引き受けてやろうと

思い始めたとき、

俺はある疑問が湧いたためリリアに聞いてみた。


「そういえばお前、装備は?

素手でスライム、

いやスイラムと戦るつもりか?」


「スイラム言うな!

もうその話忘れてよ。

装備は確かに忘れてた。

今から買いにいこっか。」


冒険者なのに装備を買い忘れるって

どういうことだ。

俺は思わず頭を抱えてしまう。


(こいつには冒険者のノウハウがまるでない。

これから先、こいつはやっていけるのか?)


鼻歌を歌うご機嫌なリリアに反して、

俺はこれからの冒険者生活への不安を

隠しきれないまま、

エリオスの武器屋へと足を運ぶのだった。


「これでいいのか、俺たちの冒険は…」

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