表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/13

冒険者免許取得試験:前編

それから俺はあれこれと服を着せられた。

何度も何度も試着してやっと、

リリアの気にいるものを5着ほど買い、

その日の買い物は幕を閉じた。


「お前、いくらなんでも買いすぎだ!」


俺が文句を垂れるとリリアは平然と答える。


「仕方ないじゃ〜ん。

服も化粧品も、全部女の子には必要なの、

必要出費よ必要出費。」


それらは全て俺が持つハメになる。

機嫌が良くなったのはいいことだがな。


「…それでお前は、二日後の試験の対策は

万全なのか?

落ちたら冒険者になれないんだろう?」


「まぁなんとかなるんじゃない?

私これでも学校の成績は良かったし〜。」


こいつ、いくらなんでも油断しすぎだ。

足元を掬われそうでハラハラする。

何事もなく試験を終えられるといいんだが…





ついに試験の日がやってきた。

リリアの家で朝食をとり、

時間に余裕を持って出発する。


「二人ともいってらっしゃい、

頑張ってね。」


「はい、行ってきます。」


俺たちは玄関の扉を開けて

試験会場へ出発する。

移動中もリリアは何も対策をしてなかった。

試験までの時間でリリアが勉強してる姿、

戦闘練習を行ってる姿は一度も見ていない。

こいつ本当に大丈夫なんだろうか…?

俺は純粋な疑問をリリアに投げかける。


「試験って何をするんだ?

筆記と実技があることはわかったんだけど。」


俺の問いにリリアは即座に返す。


「筆記は冒険者の基本的な知識の問題が出るよ。

"スキル"の効果とか、

"ダンジョン"の攻略方法とか。」


スキル、ダンジョン、冒険者だけでなく

俺ら魔族にとっても一般的な教養の範囲だ。

学校の授業を受けていたのなら問題なかろう。


「実技は試験用の"ゴーレム"と戦うんだって。」


ゴーレム、岩の巨人の魔物だな。

一般的にはそこそこ強い魔物だが、

それをスキルすら覚えていない

人間と戦わせるのか?

流石に弱い個体が選出されていると思いたいが…

ていうか、


「お前の試験中、俺はどうすればいいんだ?」


俺はどんな扱いなんだろうか。

一緒に試験を受けるのか?

それとも見学するのか?


「多分一緒に受けられるよ。

テイムモンスターは冒険者のスキルの一部として

扱われるって聞いたことあるから。

だからクロは、私の初めてのスキルだね。」


はにかむリリアの笑顔は明るかった。

緊張や自信の無さが見えるよりかは、

今の余裕に満ち溢れた状態の方がいい。

俺はただ、こいつの力を信じよう。


長時間の徒路を介し、

俺たちはやっとの思いで

試験会場にたどり着いた。

リリアは試験前にバテバテだが平気なのか?

というか俺はなんでこいつを心配してるんだ?

リリアが鞄をまさぐり受験票を探していると、

カイト・ブライトがやってきた。


「リリアおはよう、とうとう試験だな。」


リリアはビクンと肩を震わせ、

俺の背中に姿を隠した。


「お、おはよう…」


幼馴染ならここまで怯える必要なんて

ないと思うがなぁ。

カイト・ブライトの目に

一瞬悲しみの感情が写る。


「合格できるように、

お互い頑張ろうな、リリア…」


そう残してカイト・ブライトは去っていった。

リリアはやけに警戒してるが、

悪いやつではないと思うんだがな。


「ほら、いつまでそうしてる。

さっさと試験を受けるぞ。」


「わかってるって。」


リリアは受験票を試験スタッフに提示し、

どこかへ案内された。

俺がリリアについて行こうとすると…


「すみません、あなたはリリアさんの

テイムモンスターの方ですよね?」


スタッフの女が俺に話しかけてきた。


「だったらなんだ?」


俺が聞き返すとその女は

申し訳なさそうに言ってきた。


「実はですね、テイムモンスターは

筆記試験会場には同行できないんです。

なので向こうの、ペットの待機所の方へ…」


「あ、はい…」


ペット、今この女、

俺のことペットって言いやがった。

殺意が湧いたがリリアの

ためになんとか抑え込んだ。

俺は言われた通りに待機所にやってきたが、

そこには俺のような魔族はいない。

犬猫や低級モンスターばかりだった。


(俺はこいつらと同じ扱いなのか…?)


俺の心を虚しさが覆う。

俺は端っこの方の壁にもたれかかり

リリアがやってくるのを待つ。


(あいつなら大丈夫、大丈夫だ。)


なんでこんなに心配してるんだ俺は、保護者か。

俺の周りに犬が集まってくる。


「なっ、おい!」


数匹の犬が俺に飛びついてきた。

嫌われている、というよりむしろ

圧倒的に好かれている。

ペット扱いを受けた俺の心を

暖かく癒してくれるのだった。





二時間ほど経った頃…


「クロ〜、おいで〜。」


リリアがカイト・ブライトと共に迎えにきた。

カイトは俺のことを見て笑いを堪えている。

マジで殺してやろうかな。


「ほら〜クロ〜、一緒に行こ〜。」


そう言ってリリアは俺に手を差し伸べる。

こいつ、俺のこと犬か何かだと思ってやがる…


俺たち三人は実技試験会場、

"第一訓練場"にやってきた。


「リリア、絶対合格しろよ!」


カイトはリリアを激励して去っていった。


「言われなくても…」


リリアは小声で返した。

リリアってカイトが怖いってよりも

話すの苦手な…


そんなことを考えていると、

一人の試験監督者が俺たちの

もとへ駆け寄ってきた。


「テイムモンスターを連れている方、

リリア・エヴァンスさんですね?」


「えっ、あっ、はい…」


「はい、それでは試験の説明を

させていただきます。

試験内容は例年通り、ゴーレムとの戦闘です。

ここで伝えておきたいのは、

たとえゴーレムを倒せなくとも

合格の可能性はある、ということです。

私たち試験スタッフからあなたに

最低限の初期装備をお貸しします。

あちらの部屋に用意されているので、

試験が始まる前に準備をお願いします。

試験開始は15分後です。

開始5分前になったらまた来ますので、

それまではご自身で準備の程をお願いします。」


「あの、クロ…

えっと、テイムモンスターはどうすれば…?」


リリアが不安そうに尋ねると

スタッフは優しく答えてくれた。


「実技試験は同行可能です。

もちろん戦闘も共に行うことができます。

それにより評価が

下がるなんてこともありません。

テイムモンスターの実力も、

あなたの実力とみなします。」


リリアはそっと胸を撫で下ろし、

安心した様子を見せた。

なんだこいつ、俺に頼る気満々だったのか?


「ありがとうございます。

もう大丈夫です。」


リリアがそう言うとスタッフは 

明るい声で挨拶をして

別の試験者のもとへ向かった。


俺たちは初期装備とやらが

用意されている部屋へ向かう。


「筆記試験はどうだったんだ?」


俺が尋ねるとリリアは頬を掻き

目を逸らしながら答えた。


「えっ、余裕、ダッタダヨ…?」


「嘘つけや。」


こいつわかりやすすぎる。


「…うぅ、51点だった。」


「ふむ、その点が高いのか

どうか俺にはわからん。」


「合格点は50点…」


「ギリギリじゃねえか。」


俺がそう言うとリリアの顔は真っ赤に染まり、

熱を帯びた林檎のようになっていた。


「お前、試験なんて余裕だわ!

とか言ってたなかったか?」


「そ、そんな言い方してないし///」


学校の成績良かったとか

言うからもっと高得点で、

トップの成績で合格してくるもんだと

思ってたが…


「筆記はギリギリだったから、

実技で絶対に失敗できないの。

だからクロ、力を貸して…」


リリアは小さく唇を噛み、

足をモジモジと揺らしながら

上目遣いで懇願してきた。

俺はリリアの命令に背けないから

否が応でも手伝うことになるんだけどな。


「そうだな、このままだと実技でも

酷い成績とって大恥かきそうだしな。

勇者のくせに落ちたのかよって。」


俺が揶揄ってやるとリリアは

再び顔を真っ赤に染めた。


「う、うるさい///

免許さえ取れたらいいんだよ///」


リリアはそう言って武器を選び出した。

リリアはこぞって杖ばかり見ている。

杖?スキル何も使えないのに?


「お前なんで杖ばかり見てる。

"魔法スキル"なんて覚えてないだろう?

そんなもの使ってもただの棒切れだぞ?」


俺が忠告するとリリアは

きょとんとした顔で答えた。


「えっ、だって剣使いたくないし…」


「はっ?」


こいつは何を言ってるんだ。

石のゴーレム相手に木の杖で殴ってどうする。

いくらなんでも無茶だろ。


「こんな棒切れでどう戦う、

殴りつけるのか?」


「うん。」


「うんじゃねえよ。

そんなんで勝てるわけねえだろ。」


俺は当たり前のことを言ったはずだが、

リリアは文句を垂れてきた。


「ええ〜、私剣嫌〜い。」


「子供か。」


「だって重いし、汗かくじゃん。

私汗かくの嫌いなんだよね。」


「お前それでも勇者かよ。」


これが今の冒険者の価値観なのか?

おかしいのは俺なのか?

汗かきたくないから剣を使わないなんて

聞いたことがない。

こいつ、本当に合格する気あるのか?


「今回は大人しく剣を使え。

筆記がボロボロだった以上、

実技くらいはいい結果を出して見せろ。

ゴーレムを倒すくらいはしてもらう。」


「ええええええええええええええええええ…」


「ええが長い。」


リリアはぶつくさ言いながら

渋々石の剣を手に取った。

そして俺たちは再び試験会場へ向かう。

俺とリリアの、初めての共闘が

まもなく幕を開ける…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ