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EP:12 黙示録の四騎士 飢饉のラヴェリシア

この気配、間違いない。

まさかこんなにも早く出くわすとは…!


「冒険者が5人…

いいえ、4人と1匹でしょうか…?」


暗視スキルのおかげで、

ラヴェリシアの獲物を狩る獣のような顔が

はっきりとわかる。

リリアたちは依然姿を捕捉できていない様子だ。

俺は小声でリリアたちに耳打ちをする。


「お前ら、今すぐ上に戻れ。」


「クロ?なんで?

私たちも一緒に戦うよ?

アンデッドだったらクロも危ないでしょ?」


「そうだ、俺たちが力を合わせれば。」


(頼むから早く逃げてくれ!)


俺の想いは虚しくも届かず、

ラヴェリシアは俺たちの

すぐ近くにまで迫っていた。


「逃がしませんよ、誰一人。

冒険者は皆殺し、それがあの方の願い…」


お前の目の前にその方がいるけどな。


「クロ!戦おう!今の私たちなら平気だよ!」


リリアは杖を構えて戦闘態勢に入る。

その姿に引っ張られるように

カイトパーティーも各々武器を手に取る。


「…手に紋章がある冒険者、

まさかあなたは、伝説の勇者…?」


リリアの持つ松明の火が天の紋章を照らし、

ラヴェリシアにリリアの正体が割れた。

ラヴェリシアは強く地を蹴り出し、

俺たちに急接近してくる。

俺はリリアの前に立ち塞がり、

ラヴェリシアの放った重い拳を受け止めた。


「「……っ!」」


俺とラヴェリシアは互いに感嘆する。


「私の攻撃を受け止めるだなんて、

あなたはかなりの実力者のようですね…」


不気味に微笑むラヴェリシアを見て

リリアは怯えて後退りした。

そんなリリアを守るようにしてカイトは

剣を振るい、ラヴェリシアに攻撃を仕掛ける。


「"フローズン・エッジ"!」


カイトの氷を纏った斬撃が

ラヴェリシアに襲いかかる。

しかし彼女はその斬撃を片手で受け止めた。


「なっ…!!」


「あらあら、お可愛いこと。」


ラヴェリシアはカイトの腹に鋭い拳を突き刺す。

カイトはもろに喰らってしまい、

ダンジョンの壁に叩きつけられてしまった。


「「カイト様…!」」


「がはっ、あ…」


俺はすかさずラヴェリシアに飛びかかり、

ダンジョンの奥、そのまた奥へと押し飛ばす。


「リリア、そいつらを連れて逃げろ!

こいつは俺がなんとかする!」


「えっ、でも…!」


「でもじゃない!

今のお前では足手纏いになるだけだ。

早く行け!」


リリアは何も言い返さずに

カイトたちを連れて地上へと戻っていった。


(そうだ、それでいい…)


俺は改めて、ラヴェリシアの方へ向き直る。

先ほどの攻撃では大したダメージは

与えられなかったようだ。


「レディに手をあげるだなんて、

なんて野蛮な魔族なのでしょうか。

その上人間に与するだなんて。」


「…………」


こいつは俺に気がついてないのか?

あんなに俺に懐いていたのに?

いや、無理もないか。

こいつからしたら

俺と離れてから500年の年月が経っている。

さらに明かりの一切ないこの暗闇、

俺の顔を視認することもできていないだろう。

このまま、真正面から戦り合うしかない、か。


「人間どもは逃がしましたか…

二人きりになったところで、

あなたに一つお尋ねしてもよろしくて?」


「…内容次第だな。」


「あなたはなぜ、人間と行動を

共にしておられるのですか?

先ほどの一撃、かなりのものでした。

それほどの力があれば、

あんな人間など敵ではないはずです。」


確かに、俺ならリリアたちを

いとも簡単に惨殺できるだろう。

だが、俺はそんなことはしない。

なぜなら…


「…愛着が湧いちまったんでね。」


そう答えるとラヴェリシアは

心底軽蔑したような目で告げてきた。


「なんとも愚かしい。

あなたには魔族の誇りがないようですね…」


おいおい、お前が軽蔑してるのは

その魔族の王だぞ。

それがかつての主君に向ける眼差しか?


「お前は俺が誰だかわからないようだな。

俺は魔族の頂点に立つ男、

大魔王バアル=クロウだぞ…?」


これでラヴェリシアは俺の正体に気がつき、

再び従者として俺に仕えるものだと思っていた。

だが、500年の軋轢は大きいらしい。


「ふざけないでください!!

人間に与するあなたごときが、

バアル様であるはずがありません!!

バアル様はそんな、

情けない真似は絶対にしません!!

私が誰であるか心得てその言葉を吐いたのなら

あなたを絶対に許しません!!

我が主人の名を語った罪、

ここで晴らしてくれましょう!」


(だからその主人は俺なんだってぇ…)


どうやらラヴェリシアの琴線に

触れてしまったようだ。

悲しいものだな…

昔はどこへ行くのにもついてきて、

バアル様バアル様言って

まとわりついてきたってのに。

だからこそ今の俺が許せないのかもしれないな…

今にも襲いかかってきそうな

ラヴェリシアに向けて俺は告げる。


「教えてやるよ、格の違いってやつをな。」


ラヴェリシアは激昂して返す。


「その言葉、そっくりそのまま

お返ししますよ!」


俺たちは同時に地を蹴り拳を振るう。

二つの拳が衝突し、

ダンジョン内に鋭い衝撃波が轟き渡る。


(力は互角か。

いやすでにスキルを発動してるのか…?)


全盛期の俺ならば、

こいつなど片手でねじ伏せられたというのに…

召喚されてからの弱体化が致命的だな。


俺たちは互いに撃ち合い、互いに防ぎ合う。

今はまだ力は互角だが、こいつのスキルは…


「お腹がガラ空きですよ!」


「ぐふっ!」


ラヴェリシアの拳が腹に突き刺さり、 

周囲に鈍い音が響き渡る。

すでにラヴェリシアの力は

俺の力を上回っている…!


これがラヴェリシアの固有スキル、"飢饉"。

相手の魔力を吸収する

"ドレインスキル"の最上位版で、

敵味方問わず周囲のラヴェリシア以外の存在から

永続的に魔力と身体能力、体力を吸収し、

自分のものとするスキル…

敵対した今だからこそ理解できる。

こいつの戦法はクソだ…!


「もうあなたに勝ち目はありません。

大人しくその命を差し出しなさい。

そうすれば苦しまずに終わりますよ。」


ラヴェリシアは勝利を確信した

顔で俺を嘲笑する。

後で正体に気づいた時が楽しみだ。


「舐めるなよ?

この魔王、部下相手に遅れはとらんぞ!」


「まだ言いますか…!!」


ラヴェリシアの繰り出す攻撃を前にして、

俺は回避スキルを発動する。

すると俺の体は瞬時に身を翻し

その攻撃を回避した。


「…ほう。」


回避スキルは相手の攻撃を

見切らねば効力を発揮できない。

大抵はダンジョンのような暗い空間では

役に立たなくなるスキルだ。

しかし、俺の持つ暗視スキルと探知スキルを

組み合わせれば、

俺の視界は360度にまで広がってかつ、

暗闇でも一方的に動きを捕捉できる。

すなわち今この場において、

俺はラヴェリシアの全ての攻撃を

魔力が続く限り回避し続けられる。


"無限吸収"と"絶対回避"、

《《クソ》》と《《クソ》》の押し付け合いだ…!


俺はラヴェリシアの連続攻撃を悉く回避し続け、

毎度毎度カウンターを叩き込む。

命懸けの戦いとはいえ、

かつての部下を殴るのはあまりいい気はしない。

なんとか気づいてくれ…


「はぁぁっ!!」


「ごふっ…!!」


ラヴェリシアの蹴りが脇腹に直撃した。

全身が悲鳴を上げるように痛い。

体感、残り3分足らずで、

勝負にならないほどに俺は弱体化し、

ラヴェリシアは強くなる…!


「このクソアマ…!」


「口が悪くなったのは

焦りの現れでしょうか…?」


ラヴェリシアは悪意に満ちた笑みを浮かべる。

さすがは黙示録の四騎士、俺の幹部に相応しい。

我ながら、名采配だったと思う。


「天に感謝して逝きなさい。

私という、絶世の美女の

手にかけられることを!」


確かにツラはいいんだよなぁ。

中身が大幅にマイナスなんだけど。


「もう勝ったつもりなのか?

これから負かしてやるのが楽しみだ。

今までにないほどの屈辱を味わわせてやるよ!」


「おやまぁ、楽しみですこと…」


と言いながらラヴェリシアが

放ってきた拳を回避して、

俺は懐に入り込む。


「なっ!」


俺はこの戦いでずっと、

何も考えずに攻撃を

叩き込んできたわけではない。

ずっと同じ、一点にのみ当て続けてきた。


「塵も積もればなんとやらだ。」


再び俺は同じ部分、右脇腹に鋭い拳を突き刺す。

確かに力は奪われていて

刻一刻と拳の威力は落ちている。

だがしかし、ラヴェリシアの

この一点においてはダメージを与え続けられる!


「…んっ!」


拳を受けたラヴェリシアは艶やかな声をあげる。


「……いい顔じゃないか。

その方が、痛めつけ甲斐がある!」


俺は拳を捻りじわじわと痛めつけていく。


「んうぅ!くっ!いい加減にしてください!」


「がっ!」


ラヴェリシアの手刀が首を

直撃してしまい、脳が揺れた。


(これは、まずい…!)


なんとか後退りして距離を取ろうとするも、

足元がおぼつかない。


「ぐふぅ…!」


思わず吐血してしまう。

今のは喰らってはいけない攻撃だった。

頭に敗北の二文字がチラつく。


(この魔王、バアル=クロウが

負けてたまるかぁぁ…!)


地面に倒れそうな体をなんとか

気合いで立ち上がらせる。

その様を見てラヴェリシアは驚嘆した。


「あなた、まだ立てるのですか…!?」


「諦めが、悪いもんでね…」


魔王たるもの、敗北は許されない。

魔王としての矜持は当然あるが何よりも、


(ここで負ければリリアが危ない…!)


という思いが何よりも強かった。

この数日間で、俺はかなりあいつに

入れ込んでしまったらしい。


「はぁ、はぁ、はぁ…」


(せめて、"あの指輪"があれば…)


視界が朦朧としてきた。

もう、限界が、近い…

膝をついてしまった俺のもとに、

一筋の光が差し込んできた。

その光は俺を救ってくれるのだった。


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