表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/13

EP:11 魔王式ダンジョン攻略法

「リリア、俺たちと一緒に

クエストを受けないか?」


カイトはそう提案してきた。

肝心のリリアはと言うと、

顔が引き攣っていて見るからに嫌そうだ。

その様子を見て取り巻きの女の一人が喋り出す。


「カイト様からお誘いを受けるなんて、

とても光栄なことなのよ!

断ることは許さないわ!」


キーキーうるせえな。

相当カイトのことを崇拝しているらしい。

それにしても、冒険者になったのは

リリアと同じタイミングなのに、

こいつにはもう

"パーティーメンバー"がいるのか。

人脈の差だろうか。


「リリア、どうする?

お前が好きに決めろ。」


そう言うとリリアは恐る恐るカイトに尋ねた。


「え、えっと、なんで私と…?」


それは俺も少し疑問だった。

二人も仲間がいるのならわざわざ俺たちと

同行する必要はない。

リリアに苦手意識を持たれていることに

気づいてないのか?

カイトは言葉を慎むようにその理由を語り出す。


「いや、その、あのな。

昨日のクエスト帰りに

たまたま二人を見かけてさ、

リリアがベッタベタで背負われてたから、

平気なのかなぁと…」


それを聞いてリリアは耳まで

真っ赤に染めて俯いた。

どうやら昨日のこいつの

醜態を見られていたらしい。

あれを見れば心配するのも無理はない。

完全に合点がいった。


「わかる?あなたたちを

手伝ってあげるって言ってるの。

私たちが!よ。

カイト様の助力を得られることを

光栄に思いなさい。」


うざい。

なんなんだこの二人の女は。

一人は高い声で喚き散らかすし、

もう一人はカイトに抱きついたまま

何も言葉を発さない。

おいカイト・ブライト、

仲間はもっと選ぶべきだったな。


一連の話を終えて依然リリアは考えていた。

苦手なやつと一緒に行く必要はないと思うが、

スライムに負けた手前不安なのだろう。

俺はどっちに転ぼうとも構わないが…


「カイト、その、お願いします…

私たち明日、ダンジョンに行くから…」


リリアがそう返すとカイトは嬉しそうに答えた。


「ああ!明日、ギルドで待ち合わせな!」


そう言ってカイトは女どもを

連れて去っていった。

リリアは座り込んでため息をつく。


「はぁぁぁぁぁ…」


「嫌なら断れば良かっただろうに。」


「だって仕方ないじゃん…

私、星1クエストでも惨敗だったんだよ?

明日の星3クエストなんて、

命が何個あっても足らないよ…」


完全に自信を失っている。

無理もないか!

スライムに二度も大敗したら

普通なら冒険者なんてやめるわな。


「…なんとかなるだろう。

今のお前はスキルを3つ覚えた。

どれも役に立つものばかりだ。

あいつらにしっかり頼っておけ。」


リリアは無言で頷いた。

こいつにもパーティーメンバーができる日は

来るのだろうか?

口下手話すの苦手だと厳しいような気がする。

冒険者という職業柄、

一人で成り立たせるのは

なかなかに難しいだろう。

今度俺が募集してやろうかな。


その日はレストランに直行し、

何事もなく眠りについた。

そして朝、ついにダンジョン探索の

日がやってくる。


「クロ、準備できた?」


「ああ、問題ないよ。」


俺たちは家を出てギルドに向かう。

ギルドの入り口のそばに、

カイトとその取り巻き3人が待っていた。

何やら多くの荷物を持っているようだ。

俺たちは合流して例のダンジョンに足を運ぶ。


「ここが、ダンジョン…」


リリアが不安そうに目を向けるその先には、

俺たちが探索するダンジョンがある。

洞窟というより遺跡に近いダンジョンだった。

そもそもダンジョンとは、

敵や宝箱が配置されている地下迷宮を指す。

アンデッドが出没しやすい空間で、

内部は入り組んだ迷路のようになっている。

今回のクエストの目的は、

ダンジョンの内部を探索して

内部構造を調査すること。

見つけたお宝は半分ずつ

ギルドと山分けとのことだ。


カイトはダンジョンを前にして

火のついていない松明を手に取った。


「誰か火をつけてくれないか?」


その言葉を聞いてリリアが

わかりやすくソワソワしだす。

やりたそうだ。

その様子を見て察してくれたのか、

カイトがリリアに頼む。


「リリア、頼めるか?」


「…うん。」


リリアははにかみながら

初級炎魔法スキルを発動する。


「"ファイアショット"」


初めてリリアが活躍してるところを見た。

こいつはこれから勇者らしく、

強く、なっていくんだな…


さっそく俺たちはダンジョンに入る。

明かりひとつない真っ暗闇だ。

俺とリリアは臆せず先頭を歩く。


「ねぇクロ、こんなに暗いのに、

なんでそんなにズケズケ入っていけるの?

怖くないの?」


リリアは松明を手にもち、

ゆっくり怯えて階段を降りながら聞いてきた。


「ああ、俺には全部"見えている"からな。」


「うん?どういうこと?」


「俺はバインドと回避の他に、

"暗視"スキルと"探知"スキルを持っている。

暗視のおかげで明かりがなくても見えるし、

探知のおかげでダンジョン内の

魔物、宝箱の位置が筒抜けだ。」


リリアは驚きながら言った。


「ええっ!そんな便利なスキルあるなら、

なんで言ってくれなかったの!

フラッシュいらなかったじゃん!」


「そうか?

暗視なんて暗闇でしか使えない。

フラッシュの方が役に立ちそうだがな。

探知を隠していたのは謝ろう。

だが、俺の持つスキルはこの4つで終わりだ。」


俺の言葉にいち早く反応したのは

リリアではなくカイトだった。


「そんなスキルしか持ってないのか?

どれも冒険者にとっては便利だが、

魔物にしては弱くないか?」


その反応は至極真っ当なものだ。

俺の持つスキルは全て、

それ単体では丸っ切り戦闘力がない。

バインドがかろうじて使えるくらいだ。

しかし、俺が魔王として

君臨するには十分だった。

俺にはスキルなど必要としない、

圧倒的な身体能力があったからだ。

ベースとなる身体能力に、

4つの補助輪となるスキルを組み合わせる、

それが俺の戦闘スタイルだ。


「それでも十分なほどに俺が強いんだよ。」


そう答えるとカイトは納得したようだ。

やけに素直だな。


「なるほど確かに。

試験では石のゴーレムを

素手で砕いたりしてたな。」


俺とカイトの会話中、リリアとカイトの

取り巻きどもが不満そうだった。

会話を終えた途端それぞれ話出す。


「カイト様!私…」


「クロ、私が見えないからって

お尻触ろうとしないでよ?」


こいつは何を言っている。

極めて侵害だな。


「安心しろ、お前の汚いケツに

興味なんかない。」


そう返すとリリアは怒って

俺の背中をポカポカ殴ってくる。

こいつの感情表現はこれしかないのか?


そうこうしてるうちに階段を下り終え、

とうとうダンジョンの地階に辿り着いた。

ついて早々、数体の魔物が襲いかかってきた。


「"ファイアショット"!」


リリアが誰よりも早く先制攻撃を

仕掛けて魔物どもを怯ませる。

その隙をついて俺は3体ほど頭を潰してやって、

カイトは残りの奴の首を切り裂いた。

俺は素材と経験値を回収しつつリリアに告げる。


「お前、見違えたな。」


俺の褒め言葉にリリアはほんのりと顔を赤らめ、

モジモジしながら答える。


「えへへ、ありがと。」


まだ簡単な初級攻撃魔法を

覚えただけだというのに、

こんなにも頼もしく感じる。

前が酷すぎたからな!


「スライムにボコボコにされてたのが

嘘みたいだな。」


ちょっと揶揄ってやるとリリアは

恥ずかしがりながら反論してきた。


「ちょっ!ちょっと、言わないで///

今はカイトたちもいるんだよ!?」


カイトたちの反応は人それぞれだった。

取り巻きの女どもはリリアに

軽蔑の眼差しを送った。

これが普通の反応だろう。

だがカイトだけは違った。

微笑ましいものを見るかのごとき

視線を送っていた。


俺たちの会話に割って入るように、

ダンジョンの奥の方から

1匹のアンデッドがやってきた。


「っ!!」


(まったく、これだから

アンデッドは嫌いなんだよ!)


アンデッドモンスターの特徴として、

探知スキルで感知できないというものがある。

普通の相手なら、

探知スキルで居場所と動きまで

読み取れるのだが、

アンデッドには一切合切通じない。

その上俺の物理攻撃も意味をなさない。

まさに、俺にとっての"天敵"と

言える存在なのだ。


「"ファイアショット"!」


リリアの炎魔法は通用しない。

アンデッドには魔法耐性がある。

普通の攻撃魔法では決定打に欠ける。

だからこそ俺は、アンデッドこそが、

種族として魔物の中で

最も強いと考えているのだ。


「リリア!フラッシュ!」


俺が指示を出すのと同時に、

カイトが何かをアンデッドの足元に投げつけた。

すると途端にアンデッドは呻き声を

上げながら悶え苦しみだす。


「これは…」


「"フラッシュ"〜!」


リリアのフラッシュスキルを喰らって

アンデッドは去っていった。

俺たちはなんとかアンデッドを

退けることに成功するのだった。


「カイト、今何を投げたの…?」


俺が聞きたかったことをリリアが尋ねてくれた。


「ああ、"回復のポーション"だよ。

アンデッドには回復魔法や

回復のポーションが攻撃として使えるんだ。」


ほう、なるほど、それは初耳だ。

なかなかに有益な情報を聞いた気がする。


「へ、へぇ〜、わ、私も知ってたけどね…」


リリアは頬を掻き目を逸らしながら言った。


(絶対知らなかっただろ…)


その様子を見てカイトは微笑んだ。

カイトはどうやらリリアに甘いらしい。

俺たちが会話していると、

ダンジョンの奥の方からコツ、コツ、と

足音が聞こえてきた。

俺がすかさず探知スキルを再発動すると…


「……っ!!」


(この気配…!)


順調かに思えた俺たちの

ダンジョン探索は一転してしまう。

アンデッドよりも遥かに厄介な、俺の元部下、

黙示録の四騎士 飢饉のラヴェリシアによって…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ