lucid1研修
六甲アイランド。その人工島の人1人いないショッピングセンターの広いホールに、女の子が肩から血を流しながら歩いている。
―数時間前―
(ケーキ買って、海見て、そこから何しようかな)
池田柚子子。この物語の主人公である。柚子子はこの人工島の生まれではない。柚子胡は神戸の西、学園都市出身だ。中学三年生。受験勉強の気晴らしに1人でここに来たらしい。他に三ノ宮や元町などもっと遊ぶところがたくさんあるのだが、この人工島のペルソナ3に似た雰囲気に惹かれたらしい。
(ペルソナ3とは、ゲーム会社アトラスが手掛けるゲーム女神転生シリーズの外伝作品のひとつだ。発展工業地域の湾岸にできた人工島を舞台に学生が青春を謳歌しながらさまざまな問題に直面するのが醍醐味のゲームである。)
そんななか人気のないショッピングセンターを散策していると。天井から何が2つ、降ってきて、柚子胡の頭にぶつかった。とても軽い物だったので、怪我はなかったが少しびっくりした。そして地面を見ると、誕生日ケーキに刺してありそうな水色と白色の混ざった小さなロウソクと、四つ折りにされた手紙が置いてあった。
手紙を開くと
―ロウソクに火をつけてろ―
―コインロッカーに入れ―
―走ったすぐ先にライターがある―
と3つの文が書いてあった。
(なんだろう、これ…??)
そう思った時だった。空きテナントのシャッターの中からドコンッ!!ととても大きな音がした。そして次第にその音がでかくなっていく。柚子子はその時直感した。
(あぁ、これ逃げないとダメなやつだ…)
柚子子は後ろを振り向かず。ただひたすら走った。閉まり切った道が長く続く。
やっとの思いで道を走り切り、ホールに出た。フードコートだったり、洋服屋だった跡が見られるが、やはりどこも閉まっている。手前にイートインスペースがあり、椅子と机が無造作に置いてある。そのうちの一つの机の上にあった。ライターだ。どこにでも売ってそうなごく普通のライターだ。ただ火口の隣に小刀のようなものが付いている。言うならばライター式カッターだ。そこで柚子胡はさっきの四つ折りの内容を思い出した。走りながら頑張ってろうそくに火をつける。たが今時、中学生がライターなんて使うことは滅多になかったため、柚子子は火の出し方すらわからなかった。
その時、柚子子は遠い昔の記憶を思い出した。今は禁煙しているが、柚子子のお父さんは昔タバコを吸っていた。柚子胡は少し風変わりで、父の吸っているタバコの匂いが好きだった。当時はそれが害をなすものであることなどしらずに。その時の父のライターの付け方を鮮明に思い出した。
ホイールの部分を何回も回す。もっとスピードを早める。火が噴き出た。不安定ながらもやっとロウソクに火を移すことができた。
火のついたロウソクを持ちながら走る。何本か空きテナントを横切るとロッカーを見つけた。迷わず柚子子は財布を探し100円玉を取り出した。
ロッカーを開ける。なんとその中には暗いくらい深淵が続いていた。初めて後ろを振り向く。そこには黒くてネバネバして単眼のドラクエスライム亜種のような謎の物体がいた。
もう立ち止まってる時間はないと悟る。
ろうそくを持ちながら、ロッカーの上の角の部分に片手を掛けて足から中に入る。
初めはロウソクの火だけで薄暗かったが、下っていくうちに照明が出てきた。トンネル型の滑り台のようだ。勢いがあまりすぎて頭を打つ。
(痛い…!!)
いくらか滑ったあと、ようやく出口に出た。なんとも不気味な空間だ。クリーム色の四角の箱の中で止まった一本のエスカレーターがある。ザ・バックルームのような雰囲気を感じながら一段一段登っていく。途中で動き出した。内心すごく柚子子はびっくりしていた。そのまま身を任せて立ち止まる。すると扉を見つけた。扉を開けるとそこは薄暗い深林の中だった。目の前に一軒の家がある。大層でかいお屋敷だ。
「あのー、すみません。誰かいませんか??」
柚子胡は声をかける。すると
「はーいっ」
威勢のいい男性の声が聞こえる。声だけ聞くと別に悪い人そうではなかった。
ガチャッ
ドアが開くとそこには私の身長を優に超える大柄の男性のような何かがいた。シャツの上にベストを着ていてグレーのすとんと落ちたスラックス。知的さを感じさせるメガネ。艶のある栗色髪のロングヘア。整った顔立ちだが人間味を感じさせない。
「おっと、こんにちわ。」
拍子抜けしたが、今までのことを思えばまだ人に会えたことの安心感の方が勝った。
「あの、ここってどこなんですか??」
「強いて言うなら、カナダかな。まあ、詳しいことは中で話そう。紅茶でも飲みながらついでにたわいのない話でもしようか。」
家の中に入る。一応カーペットが敷いてあるがどこが玄関とリビングの境目かわからない。壁についてあるろう立てにろうそくを置く。
「あぁ、靴のままで大丈夫だよ。ここは日本ではないからね。」
そう言いながら紳士に椅子を引いてくれる。
「なんなんですか。いきなり。あの怪物は一体…」
『怪物』その言葉を聞いた瞬間男の人が紅茶の準備をする手が止まった。
「怪物って今言ったかい?umm…どうやら君はただ迷い込んできたのではないんだね。これは久しぶりだ。」
彼は紅茶を出しながら言う。
「君はどこ出身なんだい?」
「一応神戸です。」
「神戸か、なるほど。いろいろすまないね。まずは自己紹介するよ。私は グレイス ブレイザーだ。」
「わたしイケダユズコって言います。」向こうが流暢に日本語を喋ってくれるがカタコトになってしまった。
「haha、こう見えて日本語は結構堪能なんだ。」
「早速だが説明と質問をしていこうと思う。ここはカナダ郊外の一軒家。といっても君のいる世界と平行線、パラレルワールドのカナダだ。」
「この世界は3つの世界線に分かれている。1つは君たちの世界。もう1つは私たち異人がいる世界。そしてあと1つは2つの世界の負の部分を全て背負っている世界だ。」
「えっと…ちょっと情報量が多いです。」
柚子子の頭はパンクしていた。前まで理科で天体とか現実的なことを学んでいたのに、急にすごく離れたファンタジーの話に変わったことについていけない。
「まあ無理はない。私たちもこのことについ最近気づいたからね。」
「とりあえずこの3つの世界があるってことを覚えておいて欲しい。だが、最近3つ目の世界が背負ってる負の容量がキャパオーバーし始めてね。私たちの世界と君たちの世界に干渉し始めてるんだ。」
「私たちの世界は政府がまだ対処できるのだが、君の世界の人間はまだそのことについてすら知らないようでね。だからそれに対処できる適正を持ってる人間を私たちが厳選して伝えてるんだ。」
「なるほど…」
グレイスの落ち着いた声のせいか、柚子子は慌てずに状況を理解できる。
「なんでかと言うと、私たちが君たちの世界に触れすぎると歯車が狂い始める。かといってそのままにしてても負に侵されて歯車が狂い始めるんだ。だから限られた観測者側の君にお願いしたんだ。」
「つまり、歯車が狂い始めるのを止めるのには何をすればいいんですか?」
「飲み込みが早いね。君には神戸を、世界を救って欲しいんだ。」
「そんな救うって言っても誰でもできるんですか。私体力ないし根性なしだし。」
「いや、君には十分素質がある。それに超能力とか未来の力、使ってみたくないか??」
「わたし今受験生ですし、絶対ムリです!」
「死んでしまってもいいのか。」
グレイスさんがテノールの聞いた声で言う。
死―その言葉が柚子子の心を強く打つ。柚子子は一瞬強張った顔をした。
(それは…いやだ。もう誰も見殺しにしたくない。)
「私は観測者だ。全てを見届けることができる。」
「世界は慣性の法則で成り立っている。何かが歯車の回転を反対に動かそうとするなら、歯車はそれに抵抗する。」
「だが今ではその抵抗も効かなくなっていく。だから君たちが頼りなんだ。」
あぁ、これは夢の中なんだ。そうだ。現実逃避をしたくなる柚子子の手には暖かいアールグレイが入れられたティーカップがあった。しかし、柚子子は一口飲んだあと、覚悟を決めたように答えた。
「わかりました。やらせてください。務めが果たせるかどうかわからないけど。」
「その言葉が聞きたかった。ありがとう。では時間がないので早速研修だ。」
グレイスさんがパチンと指を鳴らす。奥の暖炉が大きくなって、トンネルのようになった。
「ここを通れば君のいる世界に戻れる。ろうそくを守りながら、先いたモンスターを倒して欲しいんだ。そしてモンスターを倒したら黒色の花を探して、ろうそくでその花を燃やして欲しい。君のやるべきことはこれだ。」
「わかりました。よし、倒して花を燃やす。それだけ。これなら少し出来そうな気がします。」
と言いながら恐る恐るトンネルの中に入って歩いていく。
「何かあったらライターを頼りなさい。それはあなたを助けてくれるよ。ライターは時に刃となり銃となりハサミとなり、剣城となり拳となり、まあ色々となる」
トンネルを抜けるとそこは元のショッピングモールのホールに着いた。そこに化け物がいる。
「闘うって言っても…」
「何をすればいいの…」
不気味な見た目に足がすくむ。
その時ライターがピカリと光った。眩しくてライターを手から離し目を閉じてしまう。再び目をあけるとそこには刀が落ちていた。ライターがない。おそらくライターがこれに変身したのだろう。
「グレイスさんが言ってたのってこれ、!」
走って刀を取る。
「これなら戦える。」
だが目の前の恐怖で体が動かない。グレイスさんの声が響く。死んでしまってもいいのか。そんな大きなことまだ彼女にはわからない。
「…あぁ、もうわかんないよ。ねぇ、あなたを倒したらみぃちゃんは帰ってくるの?」
「でも、もう見てみぬ振りはしないよ。」
柚子子の顔が変わる。
刀を持って襲いかかる。それに対抗して怪物はスライムの中から触手を出して攻撃する。攻撃を左にかわして触手を切る。ネバネバした血のようなものが頬に飛び散る。そのまま突っ走って刀を強く握る。そして眼球の真ん中目掛けて2枚下ろしにした。
切れた残骸がほろほろ崩れて肉片となり、チリに変化して消えていく。
「倒せた、倒せたんだ。みぃちゃん、私ちょっとは強く慣れたかな…」
そう安堵した時だった。なんと怪物は2体いたのだ。柚子子はもう1つの存在に気付かず、後ろから刺された。
同刻、カナダ郊外では。
「もー、先生ったら。そんな圧迫面接みたいなことして本当に大丈夫なの?こっちはさー、ただでさえ人足りてないんだから。」
「あの子には素質がある。そのうち立派な大使になってくれるさ。」
グレイスと女の子が茶菓子を囲みながら喋っている。
「先生、これ実家から送られてきた茶葉。お裾分けだよ。」
「これは立派だね。ありがとう。早速入れてみようか。」
「これが碧螺春で、こっちが正山小種ね。碧螺春は飲みにくいので、小種から飲み始めた方がいいよ。」
グレイスが茶を入れる。茶葉の匂いが部屋全体に広がる。
「話に戻るけどさ、やっぱりあの子向いてないよ。あとなんでエネミー2体いるって教えなかったの。」
「2体くらい気づくでしょう、大丈夫大丈夫。」
「はぁ…私の時は教えてくれたじゃん。それって不公平じゃないの??」
「今は裁縫技術が昔に比べて発達してるんだ。万が一なにかあっても縫い付ければ全て元通りさ。」
「先生でもそれひどいよ…」
「忘れたのか、君たちは観測者だぞ。元々はこの世界に影響をなさない、いらない存在だったんだ。」
「Umm…とはいえども、彼女の痛々しい姿を見るのは私の本望じゃない。迎えに行こうか。」
ふたりはティーカップのお茶を残してトンネルを抜けていく。
「あちゃー、やっぱりだから言ったじゃん先生。」
「おやおや、すまないね。あとは酢に任せておきなさい。まずは治療を、」
「はじめましてー、新入りちゃん。私酢・楊といいます。あとは任せて。」
「…あぁ…あぁ、…痛いよ何これ…」
グレイスが柚子子を抱きかかえながらトンネルの中に戻っていく。
「さて、かかってきなエネミー。」
スーがポケットから電子ライターを取り出す。麻雀の駒の形で発の字が刻まれている。そこからスライドさせてオレンジの光部を開いてろうそくに火をつける。ライターを右手に持ち上に掲げるとたちまちに光出し、オレンジの中の丸い光部分が広がる。そこからオレンジの輪っかが2本できる。ろうそくを鉛筆のようにして耳にかける。2本の輪っかを両手に持ち酢は戦う。まず、酢は慣れた手つきでエネミーの攻撃を交わし、一発握り拳を添えた。続け様に蹴りを入れてしなやかな体をスピンさせる。輪っかの外側が鋭い刃物に変わり物理的に攻撃していく。だんだんと肉片と化していく怪物に酢は容赦なく攻撃を続ける。完全に倒したあと、酢は武器をライターに戻して、ろうそくから花に火を移す。チロチロと燃えていくパンジーに酢はそっと息を吹きかけ、炎の炎上を助ける。
柚子子の眼から薄暗い照明が見える。
「ハーイどうもどうも、ゲンキー??」
視界に酢が横から入る。
「あれ、私お腹刺されて…痛くない?」
「研修と言ったが少し初めからハードルの高いものをさせてしまったね。申し訳ない。」
「いえいえそんな、大丈夫です。あともう一体は?」
「君の上司にあたるこちらの人間がすませたよ。」
「わあ、あぁ、すみません役立たずで。」
「いいのよいいのよ!!困った時はお互いさまあるよ。」
「改めて、こんにちわ新入りちゃん。私酢・楊。よろしくね。」
「私池田柚子子です。よろしくお願いします。」
自己紹介の後少しの間があり気まずくなる。
「さて、2人とも挨拶が済んだようで、私は準備するから。ソファーでゆっくりくつろいでおきなさい。」
「先生ー。私たち今日結構お茶してるからいらないよ。」
「お茶じゃなくて薬を作っているんだ。」
「それなら私も手伝うよ。柚子子は怪我人より待っとくよろし。」
「ありがとうございます。でもなんか傷が消えてるんですよね。なんでだろう。」
「それは私がお裁縫で君の皮膚に刺繍を施しているからだよ。」
「ただ内部の傷は治ってないから。完全に治せるよう猫になる薬を我々は飲んでいるんだ。」
グレイスがバターをフライパンに乗せながらそう言う。
「猫は自然治癒の象徴。猫の薬って言うのは身体のどこかに猫の特性を持つ代わりに自治能力が急激に向上する薬のことなのね!」
酢がサイコロをハンマーで潰してフライパンの中に放り投げる。
「嗚呼。無機物もバンバン使うけど心配する必要ないよろし。」
そんなこんなで薬が完成した。
「今日はこのくらいにしとこう。君は薬を飲んだら帰ってもらうよ。トンネルを抜けたらホールに着くから。」
「効能は飲んで二、三十分すれば出るあるが、猫耳が生えるとかそんなアニメチックなことはないよー。」
いや、すでにもうSFの域なのではと柚子子は思いながら薬を飲む。
2人に挨拶を交わして、トンネルを通り元のショッピングセンターホールにたどり着いた。センターホールを抜けるとあたりはもう真っ暗闇。スマホには母から電話着信の履歴が2件、スマホのメッセージが3件来ていた。
今何時と辺りを見渡すと広場の時計が7時をすぎたところだった。
(今から頑張って帰っても9時じゃん。どうしよう。)
六甲アイランドから柚子子の地元西神中央はだいぶと距離があり、時間と交通費が結構かさむのだ。柚子子は電話をかけて今から帰ることを伝えて六甲ライナーに乗る。サラリーマンと高校生に囲まれて電車に乗り換える。そこから1時間かけて家に帰ってきた。母は特別怒っているわけではないが、遅くなるなら連絡くらい入れなさいと言った。手洗いうがいをして晩御飯のクリームシチューを頬張る。舌が犬歯にあたる。柚子子にはその犬歯が鋭く感じられた。これが効能なのだろうか。だとしたら犬歯ではなく猫歯だ。
夕食済ませお風呂に入り、ふかふかなベッドに潜る。
(なんだか今日は不思議な一日…だったな……)
疲れていたのかとてもグッスリ快眠だった。
急いで...お願い
国語成績3だけど書いてみたかったんですよ!!
趣味全開の自己満小説です。
誤字脱字多いですね、でも確認はしません自己満なので。




