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政治経済エッセイ

「基礎年金底上げ」は「増税祭の入り口」に立つということ

作者: 中将

◇「基礎年金底上げ」では無く、実情は「現状維持」するのが精一杯



筆者:

 本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。


 今回は今国会で審議されている「基礎年金底上げ」がいかに危険な案なのか。

 このようなことが起きている背景と、

 僕の持論である「年金自己積立制度へ移行」について話していこうと思います。



質問者:

 そもそも思うんですけど、1階建ての国民年金が3割底上げされるらしいので問題ないのではありませんか?



筆者:

 これは僕もこの案が出た時には把握できていなかったぐらいなので、

 非常に誤解があるところだと思います。


 実をいうとこの「基礎年金底上げ」はニュース記事で書かれていて字面から印象を受けるような「国民年金が今の3割アップ」と言うわけではありません。



質問者:

 えっ!? どういう事なんですか!?



筆者:

 そもそもこの議論が始まったのは厚生労働省の発表した「令和6(2024)年財政検証結果の概要」がきっかけでした。


 この財政検証では、国民年金の給付水準が現在36.2%であるのに対し、過去30年間と同じ程度の経済状況が続くと、2057年度では25.5%にまで低下するという内容だったのです。


 これでは制度として破綻してしまうという事で厚生年金基金に手を付けようとしているという事です。


 つまり、「将来の水準が現在予定されている額より3割アップ」されるだけで「金額そのものは現在より増えない」のです。


 これは「マクロ経済スライド」に基づく物価高を下回るだけの「年金の自然減」制度が根幹にあります。

 僕はこの「マクロ経済スライド」は「TPP」と「カジノ法案」並んで日本を破壊しつくすと思って、自民党から完全に見切りをつけた政策ですからね。



質問者:

 報道の仕方が酷いですね、てっきり勘違いしていました……。


 ところで厚生年金基金はどうしてそんなに余裕があるんですか?



筆者:

 いびつな国民年金と厚生年金の年金積立額の差があるんです。


 厚生労働省の「年金積立額の運用状況について」と言う項目を参照します。

 年金積立金は令和5年度末で255兆円あるのですが、

 その内訳は国民年金が12兆円、厚生年金が243兆円と物凄い差になっているんですね。



質問者:

 20倍ほど差があるとは……。どうしてこんなに積立金が違うんですか?



筆者:

 これだけ差が出ているのは厚生年金の「企業負担分」を「無考慮」にして厚生年金を給付しているため(年金定期便にすらも企業負担分を書かれていないため、経営者以外は分かりにくいため)なんですね。


 本来であれば厚生年金をもっと給付することができるのにそれを「ひた隠し」にしているのです。


 このような構図があるからこそ、本来給付されるだけの企業負担分のリターンを得られないことは明白なために「106万円の壁廃止」に断固として反対しているわけです。



◇現行案では厚生年金基金を取り崩すだけでは足りず「増税は確定」



質問者:

 なるほど、そういうことでしたか……。


 確かに厚生年金を払っている方からしたら国民年金への「流用」は許せないと思うんですけど、それだけにとどまるのであれば問題ないのではないですか?


 その分の厚生年金を給付か支払いを減らしてくれとは思いますけど……。



筆者:

 ところが、今のままこの制度が通過してしまえば皆さんが思われているよりも「悪い状況」が待ち受けています。


 「1階部分」の国民年金の基礎部分が底上げされても、夫婦で受け取れる年金額は、2036年度には最大で月額約7000円減少する場合があるという試算もあります。


 

 更に今回の給付水準の改善のため、国庫負担は2036年度以降増え始め、

 50年度には1年間で1兆8000億円、70年度には1年間で2兆6000億円が必要となるそうです。


 これはその分、社会保険料徴収が増える又は増税するという事です


 数字でお示ししますと、合計で65兆円の厚生年金からの「流用」、合計70兆円の追加負担(実質増税)になるという案なのです(25年1月時点での案ですが)。



質問者:

 えっ!? そんなこと全然知らされていないじゃないですか……。


 

筆者:

 そもそも2040年には給付水準が変わらなければ負担が何かしらの形で今の保険料より4割増えるか、若しくは受給者の年金が減ることが確定的です。


 このままでは生活保護以下になるために、こんな地獄のような制度を存続させるぐらいなら年金制度を廃止して自己積立制度に移行した方が良いですよ。


 言わば「植物状態」なのに無理やり生かしている状態です。



質問者:

 人間であれば「生きているだけで良い」と思える局面もあると思いますけど、

 無機質な制度がそんなに延命されても困りますね……。



筆者:

 周知されていない状態でも「厚生年金流用」と言うワードのお陰か、


 年金制度改革法案を閣議決定で削除した時点での共同通信世論調査では、

 基礎年金(国民年金)を底上げする内容に関して、


「入れるべきだったと思う」が41.4%、


「入れるべきだったとは思わない」46.4%


 と、反対の方が多い感じになっています。



質問者:

 情報が行きわたっていない中でも反対が多いのに、強行しそうなのは、やはり「増税をしたいから」と言う事なんですね……。



筆者:

 結局のところそうだと思いますよ。


「基礎年金底上げ」が無いことを「あんこ抜き法案」とか立憲民主党の野田代表は言っておられましたけど、「あんこに見せかけた増税」であるということです。


 しかも「増税」が大きくなされるのが今主導している政治家のメンバーが大きく入れ替わっている2036年度以降ですからね。無責任にもほどがあります。


 ただ、「社会保険料は将来にリターンがある」と言う理由を持って「増税ではない」と言うのが政治家や官僚の方々の定番の理論ですけどね。


 強制的に徴収されて払わなければ資産を差し押さえることが法律で明記されているものは「税金」として扱った方が良いと思うんですけどね。



質問者:

 お給料から引かれていることには変わりありませんからね……。



筆者:

 将来世代も何も今の生活に困窮している人が多いという事です。


 それも、社会保険料が引かれすぎて給料の見た目だけが多くても苦しい家庭は多いはずです。(給料が増えれば色々な優遇措置も減っていくため)


 「財政再建」をしたい人たちに言いたいことがあります。


 こんな「植物状態の年金制度」を延命させ続けることが、将来世代へのツケの先送りなのではないか? ということです。


「財政再建」したい人たちであればあるほど伝えたい年金制度は潰して自己積立制度にした方が絶対に良いです。一時的な国債発行で責任を持って制度を廃止することで、将来の国債発行や増税を防げますからね。



◇今の制度でも「氷河期世代の多くは生活保護になる」



質問者:

 しかし、年金制度を廃止してしまえば自分で積み立てていない場合は生活保護になってしまいませんか?



筆者:

 いや、それが現状でも生活保護受給者全体が約200万人に対して、約90万人が65歳以上です。


 高齢者全体から見ても2.7%のようで、「年金を払えなかったために生活保護になっている」と言って良いでしょう。(数字は2025年4月現在)


 更に1993年から約10年の間に社会人になられた「就職氷河期世代」が老後(65歳以上)を迎えた場合、上記より3.8倍が生活保護受給者となり、そのための財政支出が2040年度には9兆円に上るという試算まであります。



質問者:

 非正規雇用で給料が少ないとそんなに悲惨なことになるんですね……。



筆者:

 今の「中途半端に自己責任」「手取りが増えず払う側ももらう側も悪夢」なんて制度が「植物状態」で生き残っているよりかは「老後、完全自己責任」の方がマシでは無いかと僕は考えます。


 手取りが増えれば景気の好循環にも繋がりますし、

 金融や投資、貯金のリテラシーがあればそんなに無駄遣いをすることも無いでしょう。

 


質問者:

 まずこの「年金底上げ」が「増税のきっかけ」だと思われていないところが厳しいですね……。



筆者:

 そもそも自己積立制度で無い上に人口減少社会なのでシステム的にとうの昔に破綻しています。


 こんな制度はあるだけで「将来世代の消滅」に繋がることから無い方がマシなので、「清算と廃止」を今後も主張していき、この考え方を広げていこうと思いますね。


 今後もこのような中長期的に問題があるような政策や経済について個人的な意見を述べていこうと思いますのでどうぞご覧ください。


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