君に出会うために、走ってきたのに。
始まりは飲み屋だった。
「んなぁー…………。ギロシさーん。大好きよあなた……」
飲み屋の一番むすめらしき可愛さだった。リーロを膝で眠らせながら、立川ギロシは満足そうな笑みを浮かべた。
「ああ、大丈夫か山本リーロ。寝ないのか? 仕事があるだろ」
「大丈夫なのー」リーロは甘えを返した。「ねえ、明日も会いましょ?」
次の日。
ギロシは飛ぶように帰宅した。
そして、タクシーの予約——「今日は休みです」あいにく今日は休みだった。
飲み屋までは17キロ。ギロシは仕方なく、足を確かめ走った。
3キロで足がもつれた。
7キロでちょっと休憩した。
11キロで倒れた。
17キロ——
飲み屋に辿り着くとリーロはいなかった。
店長に問うと、リーロはお客様だ、と返ってきた。
なんだ、てっきり従業員かと思ってた。
(おしまい)