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対 -TSUI-  作者: あさとゆう
第七章 御影編
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第87話 犠牲

「丹後、瓜生の捜索の進捗は?」


 丹後は立ち上がり、資料を手にして答える。


「身柄確保には至りませんでしたが、監視カメラ映像を確認したところ、南西方向に逃走していることを確認しました」


「南西といえば、鎌倉、横須賀……それに横浜か?」


「恐らく、瓜生が逃げたのは横浜でしょう」


 静かに呟いたのは天宮だった。その言葉は、穏やかながらも確信に満ちている。


「横浜には、中央刑務所がありますから」


「中央刑務所?」


「紅牙組での一件を報告書で読みました。どうやら、ミレニアは中央刑務所の磁場に強い関心を抱いているようです。三か月後の十月、予定されている中央刑務所の解体に合わせて何かしらの行動を起こす可能性が高い。これは焔の読みですが、私も同じ意見です」


「つまり、瓜生はミレニアとして中央刑務所に現れると?」


「中央刑務所には現れるでしょうが、それは『ミレニアとして』ではなく、あくまでも彼女自身の意志によるものだと、私は考えます」


 天宮は即答した。毅然とした言葉に、一同の視線が彼に集まる。


「瓜生はSPTの情報を定期的にミレニアに流していました。それが途絶えれば、彼女がSPTにいないことはすぐにミレニアにバレてしまう。彼女はもう、ミレニアに戻れないでしょう。とはいえ、瓜生は妹を救わなければなりません。それも、可能な限り早く。上木によると、瓜生はミレニア本部の場所を知らされていなかったようです。だからこそ、彼女は十月、中央刑務所に向かうはずです。妹の居場所……ミレニアの本部の場所を突き止めるには、幹部クラスのミレニアを捕らえ、場所を吐かせるしかありませんから」


 天宮の分析に、長官は腕を組みながら静かに唸る。


「つまり、中央刑務所で、我々SPTとミレニア、そして瓜生と塚田、三つ巴の戦いになる可能性がある、ということか」


「さらに言うなら……」


 不意に焔の低い声が響いた。一同の視線が、今度は焔に注がれる。


「横浜の極道、紅牙組も。彼らも十月に参戦する。組長自ら、共闘すると約束してくれた」


 少し楽しげな口調で話す焔。江藤と丹後は一気に呆れた表情を浮かべるが、天宮だけは笑みを浮かべていた。


「紅牙組の組長は相当用心深いと聞いていたけど、共闘の申し出るとは。なかなかやるね、焔」


 長官がコホンと咳払いをする。


「話を戻そう。瓜生の右手、人狼化していたとのことだが、なぜ右手だけなのだ?」


「それについては、服部が調査を済ませています」


 再び口を開く天宮。どうやら、彼は姿を消していた間、徹底的に瓜生の身辺調査をしたようだ。


 だが、彼の表情はこれまでとは一転、険しさを増す。


「ご承知の通り、ミレニアに人狼族の陰の血、通称『ルナブラッド』を注入された人間は高確率で自我を失います。しかし、中にはそれ以上の『拒絶反応』を引き起こす者もいるようです。血を入れた途端に発狂し、食事も日常生活すらままならないほど、肉体的、精神的異常をきたす。ミレニアはそうした人間たちを『失敗作』と呼び、彼らに対して人間の所業とは思えない行為を施しています」


「人間の所業ではないだと?」


 焔が目を細め、前のめりになる。天宮は一瞬焔に視線を合わせると、小さく頷いた。


「上層部から『失敗作』と判断された人間は、容赦なく殺され、解体される。そして、その部位を別の生きた人間に結合する。そうすれば自我を失わず、人狼の力を継承できるそうだ。瓜生は妹を救うため、完全なる忠誠を装う必要があった。彼女は上層部に言われるがまま、自らの右手を切り落とし、別の人間の右手を受け入れた。そうして手に入れたのが、あの人狼の力だよ」

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