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対 -TSUI-  作者: あさとゆう
第七章 御影編
113/156

第113話 交感

 次の瞬間、バチバチと火花が散るような音が鳴り響いた。左手首が熱を帯び、ヤトの力が込められたブレスレットが赤黒く輝く。痺れるような感覚が両手を包んだ後、すぐに温かなものへと変わる。まるで何かが宿ったかのように。


 恐る恐る手を見ると、そこには、金色の剣があった。それは青黒い光が形を成し、やがて純然たる輝きを(まと)う刃へと変貌(へんぼう)したものだった。


 そして、私は宙に浮き、背には黒い翼が生えていた。翼は半透明で、どこか(はかな)げな光を放っている。そう思った時──。


 ──パンッ!


 まるで脱皮するように、黒い翼が砕け散り、翼も黄金に染まった。完全に隙を突かれた焔は、一瞬戸惑いの表情を浮かべたものの、即座に上段に構える。私は歯を食いしばり、光の剣を握り締め、焔へと勢いよく舞い降りる。


 空間を裂くような一閃。


 視界を閃光が埋め尽くし、私は強烈な光に目を閉じた。


 そして、ゆっくりと目を開くと、焔は仰向けに倒れていた。私は彼に馬乗りになる形で覆い被さり、光の剣の切っ先は、彼の首元、紙一重の場所で止まっていた。


 だが、光の剣は徐々に輝きを失い、手の中から消えていく。黄金に染まった翼もまた、星屑のように空気に溶けていった。


 私は息を整えながら、言葉を絞り出そうとする。だけど、声にならない。目が潤んで、彼がどんな顔をしているのかも。


 ──ぽたっ。ぽたっ。


 言葉の代わりに、私の涙が焔の頬に滴り落ちる。


「私……の、勝ち、です」


 泣きながら、ようやく私は声を絞り出した。


 ──お願い。負けを認めてください。


 すがるように呟いてしまった自分が、どこか気恥ずかしかった。だが、焔はふっと微笑むと、静かに手を伸ばした。指先がそっと頬をなぞり、そのまま私を包み込むように抱き寄せ、ゆっくりと立ち上がった。


「わっ……」


 不意なことに、思わず声が漏れる。


「強くなったな、凪」


 腕の中に抱えられたまま、私は焔を見つめる。


「……君の勝ちだ」


 彼の言葉が胸に響いた瞬間、張り詰めていた力が一気に抜け、私はふわりと焔の肩にもたれかかった。


 認めてくれた。焔さん……。


 すると、「パチ、パチ……」と静かな音が届いた。顔を上げると、天宮が微笑みながら拍手を送っていた。その拍手は次第に広がり、上木、長官……そしてあの丹後までもが、この瞬間を称えるように、手を叩いていた。


 その光景を目にした瞬間、また涙が込み上げる。袖で拭おうとしたその時、焔がさらに強く私を抱き寄せた。肩越しに伝わるぬくもりに、思わず力が抜ける。


 すると、ボフッという音と共に、何かが私と焔の胸に飛び込んできた。


「ヤト……?」


 ヤトは何も言わず、ただ私と焔の胸の中で小さく頭を埋め、頬ずりをする。羽は微かに震え、言葉にしなくても胸いっぱいの想いが伝わってくる。


 私はそっと手を伸ばし、ヤトの柔らかな羽に触れた。


 懐かくて、愛おしくて、ずっと求めていたぬくもり。焔の肩に寄りかかりながら、私はヤトをそっと抱きしめ、そのまま静かに目を閉じた。


 すべてを包み込むような安堵感に満たされながら、私はゆっくりと、深い意識の奥へと誘われていった。

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