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対 -TSUI-  作者: あさとゆう
第七章 御影編
111/156

第111話 闘志

 次の瞬間、焔が一歩踏み込み、陰の気を(まと)った木刀を振り下ろす。圧倒的な気に押され、私は本能的に後ずさる。すると、ドクンと心臓が鳴った。激しい眩暈(めまい)と吐き気に襲われ、私は膝をつく。


「な……凪!?」


 バサバサとヤトの羽が擦れる音が聞こえる。長官の腕の中で暴れているのだろう。陽の気を使い過ぎた。せっかく自分の意志で引き出せるようになったのに。結局私は未熟者。使いこなせるほどの精神力がないのだ。


 私は膝をついたまま、焔を見上げた。彼は一瞬心配そうな表情を浮かべたものの、唇を噛み、木刀を私に向ける。これで終わりだと言いたいのだろう。私はうなだれる。もう人狼化の力も出せない。


 やっぱり私はこの人には──。


 そう思った時、とりわけ大きな声が(とどろ)いた。


「立て!幸村凪!!」


 突然の声に体がビクッと跳ねた。声の主はあの丹後だった。


「た……ゲホッ」


 名前を呼ぼうとして思いきりむせる私。ちょっと申し訳なくなる一方で、驚きの方が勝っていた。あの丹後が私に喝を入れるなんて。


「貴様……!この俺に稽古をつけてもらいながら、これしきのことで諦めるつもりか?勝負はここからだ!食らいつけ!!!」


 あの時の気合はどこいったコノヤロー、とでも言いたげな丹後の喝。予想外過ぎて笑みがこぼれる。ふと周囲を見ると、みんなが私を見ていた。


 私の気持ちを汲んでくれた天宮さん。


 稽古に付き合ってくれた上木さん、丹後さん。


 心配そうに見つめてくれるヤトに花丸さん、長官さん、江藤さん。


 それに……


 ──私の力をほんの少しだけ、君にプレゼントしようかな。


 私は左手首の赤いブレスレットを見る。そうだ。昨日ヤトパパさんが教えてくれた詠唱を使えば、少しだけ力が引き出せる。その力を――。


 そう思った途端、焔が再び駆け出してきた。ギョッとして、膝が震える中、なんとか立ち上がる私。体力が尽きたのが自分でもわかる。ここまで来たら、もう気合だ!


「ていや!!」


 気迫と共に、焔の太刀筋を思いきり弾く。だが、それも一瞬だった。焔は次の一撃に向け、さらに気を練り上げ、再び木刀を振り下ろす。


 ガンッ!


 私は竹刀を頭上に掲げ、彼の攻撃をなんとか受け止めた。だが、焔は陰の気をさらに放出した。背筋が寒くなるような感覚が襲う。ここで決める気だ。その時、耳元で静かな声が響いた。


「諦めろ、凪」


 この言葉が私の心に火をつけた。


 今更何を?


 諦めきれないから、私はここに立ってるんですよ。


 焔さんんんん……。


 (若干イラついた)闘志が爆発する。


 私は両手でぎゅっと竹刀を握りしめ、見上げるように焔を睨みつけた。


「……絶対に、絶対に、諦めません!!」


 ──その瞬間。


 ポンッ!


 まるでスイッチが入ったかのように、体の中から小さな音が弾けた。再び金色の光が竹刀を(まと)う。これは、火事場の馬鹿力……ならぬ火事場の「金色の光」!


 バシッと拮抗する陰の気と陽の気。電流のような光が周囲に走り、互いの気がぶつかり合い、激しく相殺し、新たな波となって周囲へと広がる。その衝撃で、まるで風が生まれたかのように、私たちの間に強烈な気流が湧き起こった。風は渦を巻き、竜巻のように私たちの周囲を旋回する。


 そして、次の瞬間──。


 ──パンッ!


 鋭い衝撃音と共に、焔の陰の気が消えた。


 いや、違う。


 私の陽の気が競り勝ったのだ。


 ここだ──!!


 私はすぐさま体勢を立て直し、突きの構えを取る。そして、渾身の力を込めて竹刀を突き出した。だが、その時、焔の鋭い眼光が光る。彼は一秒にも満たない間に再び陰の気を(まと)うと、下段の構えから素早く木刀を振り上げた。


 鋭い斬撃音が空気を切り裂いたその時、カランと乾いた音が後方で響く。


 何が起きた?


 私は目を見開く。何が起きたのか、理解が追い付かない。ふと、自分の手を見て、ようやく状況を理解した。


 竹刀がない。


 焔の一閃が、私の竹刀を後方へと薙ぎ払ったのだ。


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