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強襲

二か月近く準備していた、A3基地への襲撃作戦が開始した。

A3の基地から火の手が上がっている。陽動の部隊が上手い事斬り込めたらしい。俺は背後で待機している黄泉畑と小太刀に、目で『行くぞ』と合図する。

 二人は頷き、A3の隊員服に身を包んだ俺達は基地のゴタゴタに紛れて潜入に成功する。基地内のデータは事前に入手してくれていたので、頭に叩き込んだそのデータに沿って基地内を堂々と走る。廊下では数多くの隊員とすれ違ったが、緊急事態という事と、俺達三人が堂々としているので声を掛けられる事は無かった。

 しばらく走っていると、目的の部屋が見えて来る。当然ながら部屋にはロックが掛かっていた。

「ロックが掛かってますね。どうします? 僕の能力では突破できませんし、久留井さんの能力でも少し厳しそうに見えます。小太刀さんの能力であれば一瞬で突破できるかもしれませんが、そもそも能力を使ってしまっては、脱出する時——」

 黄泉畑がドアのロックを前にベラベラと喋り始めたのを見た直後、小太刀が能力を使って扉を文字通り切り開く。

「抜刀。『名刀』!」

「囲まれて……しまいます」

 黄泉畑が何か言っているが無視だ。今はそれよりも優先すべき事がある。

「拘束されているのは男女一人ずつだ。俺が男、黄泉畑が女を救出する。小太刀は錠の破壊を頼む!」

「「了解!」」

 今回は流石に黄泉畑も真剣に作戦に取り組んでいる様子で、小太刀が錠を破壊した房の中から、二偽を救出していた。一方俺も小越を救出する。

 二人とも、身体中に針の跡がある上、相当やつれた様子だ。体温も低い。

「とっとと帰るぞ!」

「待って、久留井! ドアの前に誰か居る」

「何⁉」

 もう見付かったのか⁉

 そう思って入り口の方を見た俺は、ドアの前に立っていた女の、あまりの不気味さに息を呑んだ。

 そこに居たのは、どことなく『蛇』を連想させる見た目をした美女だった。

 スラリと伸びた脚に、細いながらもどこか艶めかしい、ややつり上がった目。そしてニッコリと嗤うその口角と、右手に持った異様なナイフ。

 一目で分かる。アレは、A3の隊員が使っている特殊な武器、AAHWと呼ばれているものだ。

 黄泉畑も大まかには俺と同じ考えらしく、俺と視線が合うと頷き、何故か小太刀に二偽を背負わせ、蛇女の前に立つ。

「いやぁこれはこれは。まさかこんな場所であなたみたいな美女と出会えるとは思いませんでした。どうです? コレも何かの縁。これから一緒に食事でも」

 俺、小太刀と蛇女の間に割り込む様にして立つ黄泉畑。先程二偽を小太刀に託した時、何か耳打ちをしていた。きっと『小太刀と俺で脱出しろ』という事なんだろう。と考えていると、小太刀は入り口とは反対方向、つまり部屋の奥へ向けて駆け出した。

「来て。私達は脱出する!」

 小太刀が走りながら、俺にだけ聞こえる様に言う。

俺は即座に小太刀の後ろに続きつつ、蛇女が俺達を追わない様にしている黄泉畑に向かって叫ぶ。

「ッ……了解! オイ、クソ野郎! 死ぬなよ‼」

 黄泉畑は珍しく返事すらせずに右手親指を上に向けて俺に返事をしたが、その直後、蛇女に深々と突き刺されていた。


廊下に出た俺達は出口に向かって走るが、捕虜を連れて走っている人物が目立たないハズも無く、すぐに隊員ではないとバレた俺達は、道を阻む隊員を蹴散らしつつ進んでいた。

 出口も近付いて来た時。俺と小太刀の目の前に、以前戦った事のある男が現れた。

「逃がさねえ!」

 以前、二丁拳銃で戦っていた奴だ。そしてそのかなり後ろには、その男を助けた真っ白な女も居る。

「小太刀ッ‼」

 俺の叫びの意味をすぐに察した小太刀は、俺に二偽を投げ渡して来る。俺は背に抱えていた小越を右腕で肩の上に乗せる様に、二偽を左腕で抱え込む様にして持った。かなりキツいが、何とか大丈夫そうだ。

「抜刀。『妖刀』ッ‼」

 小太刀は男の方に跳躍して距離を詰め、抜刀する動きで男へ斬り掛かる。が、これを男は壁を蹴って前側に跳躍。小太刀の斬撃の上を通り抜けて回避し、以前とは見た目が違う、バレルの長いリボルバーの銃口を俺に向けた。

 マズい、避けられない!

「久留井ッ‼」

 俺は何とか回避しようと咄嗟に背後に跳ぶ。しかし男の銃口は俺の動きに合わせて向きを変え、再び俺を捉える。

 これはどうしようも無い。俺の能力は、せめて片手が自由でないと使えないものだ。二人を抱えた状態では……。

「『Brunt of Tears』……」

 思わず目を閉じた俺の耳に飛び込んで来たのは、つい今まで意識の無かった二偽が放った言葉だった。

 金属同士が激突して生じる重い高音が俺の鼓膜を叩く。

目を開けると、男が持っていた銃の銃口を塞ぐ様に、金属光沢のある槍が突き刺さっている。しかもその槍は銃だけではなく、男の右脇腹までをも貫いていた。

「な……ぁ」

 男はその場に落下して倒れかけるが、空いていた左手でもう一丁の銃を取り出そうとしていた。

「させるかッ‼」

「く、そ……‼」

 俺はその男の手から銃を蹴り飛ばす。あの怪我じゃ碌に動けないだろう。

「久留井、道が開けた‼」

 小太刀は距離のあった相手と戦う事はせず、通路の壁を切り裂いて基地の外へ続く道を作っていた。

 男と俺が重なっていたせいで射撃が来なかった様で、今更飛んできた援護射撃をギリギリで回避して外へ出た。

 俺と小太刀の姿を確認した陽動部隊は撤退を始め、俺達は隊服のまま陽動部隊と合流。一瞬戦闘になりかけたが、何とか駁撃の居るアジトへ向かった。

 黄泉畑はA3に囚われてしまった。……必ず、助け出さなくては。

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