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異能力者と非異能力者-

「ぐッ……あ」

「大丈夫?」

 俺はあのA3隊員に身体のあちこちを撃ち抜かれてから、仲間の小太刀に助けられてまだ見付かっていないアジトに逃げて来た。

 隣で俺を心配そうに見つめる小太刀。……クソ、情け無ェ。せめて少しでも恰好付けたい所だ。

「心配すんな、小太刀。異能力者は人間よりも治癒力が高ェの、知ってンだろ?」

「ええ。でも……」

「しつけエなァ。AAHWの弾は抜けてる。肉も腐りゃしねェッて」

 そう言って笑って見せるが、小太刀はまだ不安そうだ。何とか余裕だって示してやりてぇが、こうボロボロじゃ、しばらくはそれも難しい。大人しく回復を待つしか無ェな。

「……久留井」

「ンだよ」

「……たぶん、A3」

「何ッ⁉ 追ッて来たのか!」

 小太刀が急に静かになり、耳を澄ませてから小声で俺に告げる。俺は俺で、小声で小太刀に言葉を返す。しかし急に身を起こそうとしたせいで傷口が痛み、歯を食いしばり立ち上がろうとする。

「待ってて。私が追い返す」

「おい待て小太刀。俺もッァが……‼」

「待たない。久留井は回復する事に専念して」

 俺が痛みを堪えていると、小太刀は俺の身体に優しく触れてアジトの床に寝かせ、音がした方へ向かう。俺はその背を見送る事しかできなかった。

 数分後、体の調子が幾らかマシになった俺は早速飛び起き、小太刀の援護に向かおうとする。俺の能力は援護にも攻撃にも活かせる。居ないよりは居た方が格段にマシなハズだ。

「久留井、起きれる様になった? 良かった」

「嘘だろオイ。……お前、全員逃がしたのか? 一人も殺さず?」

「ええ」

 俺が駆けつけた時には既に、A3の隊員は退却していた。小太刀には掠り傷程度の外傷しか無く、辺りにはA3の奴等の銃や刀剣等の兵器類であるAAHWが、破壊された状態で散乱していた。その中で、小太刀は『無刀』を血振りして納刀する動作を行っていた。

 その様子は率直に言ってとても美しく、そして儚げに見えた。

「久留井?」

「ン……あァ。お疲れさん。助かった」

「ん。これから、どうする?」

「どうするッたッてな。……このアジトは割れちまッた事だし、()()さんに連絡して近くに隠れるぞ。応援連れてここに戻ッて来たA3の連中を爆殺する」

「……嫌だ」

「あのなァ……。連中を生かしておいたら俺達を殺しに来ンだ。『殺るか、殺られるか』の二択しか無ェんだよ」

「……」

 小太刀は黙り込んでしまった。言いたい事は分かる。だが事実として、奴等A3は俺達異能力者を……明本を殺しに来る。俺達明本だって、テロがしたくて集まって来たんじゃない。そうする他の手段が無いから、生きていく為には殺すしか無いから、こうしているんだ。

「あの部隊。……元々は私が居た部隊だった」

「ああ。そういやお前、元はA3だッたンだな。知り合いが居たのか?」

 腕時計型の端末から明本のリーダーである駁撃という人物に連絡を入れ、小太刀の手を引いてアジトにしていた廃ビルを出、近くにある単なる廃屋に転がり込む。

 小太刀は俯いており、不服そうなのを隠そうともしない。俺は何と声を掛ければ良いか分からなくなった。

 しばらくして、一二人程の人数で構成された隊が、俺達が潜んでいたアジトに向けて接近して行くのが見えた。小太刀の表情は暗い。

「ッッ……。だァ、クソッ!」

「⁉」

 A3の隊が廃ビルに足を踏み入れる直前。俺は駁撃に爆撃を依頼しつつ左手を前に突き出して狙いを絞りつつ能力を発動した。

 先頭を歩いていた隊員が『波』に弾き飛ばされ、一行が異変に気付く。その直後に廃ビルから爆発が発生。隊員達は吹っ飛ばされた者を叩き起こしつつ廃ビルから退避していた。

土埃のせいで連中がどうなったかを完全に視認するのは難しかったが、恐らく犠牲者は出ていない。隣から視線を感じ、そちらを見ると小太刀が嬉しそうに微笑んでいた。

「ありがとう、久留井」

「……けッ。運の良い奴等だ。妙な力に邪魔されッとはな」

「——ふふ」

「笑ッてんじゃ無ェよ。……トンズラするぞ」

 ……俺の感覚はきっと、麻痺しきってしまったのだろう。仲間が今回だけでも数人死んでいるのに、この女の笑顔一つで、明日もまた生きていけると思えてしまうのだから。

 落ち着ける所に着き次第、今日死んだ奴等を弔おう。

「……どうしたの、久留井?」

「何でも無ェよ。……なァ、お前将来とか、考えてンのか?」

 俺より数歩分先を歩いて行こうとした小太刀が振り返り、不思議そうに訊いてくる。

「将来。……今は、考えられないかな」

「だよな」

 小太刀は俺からの問いに真面目に向き合い考えて『考えられない』という結論を出す。ああ、そうだ。現状じゃ、俺達異能力者には未来なんて無ェ。俺も小太刀もいずれはA3に……そうでなくても何かしらに殺される。それが遅いか、速いかの違いしか無ェ。なら。

「俺が、『将来』……作ンねェとな」

「何を作るの?」

「……何でも無ェよ」

 惚れた奴の為に命張れンだ。男冥利に尽きるってもンだな。

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