表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

決戦

 目が覚めた。気持ちとは裏腹に身体は好調だった。

 集合場所へ赴くと、弌生達はまだ来ていなかった。集合時間よりも三〇分も早いのだ。当然と言えば当然か。

「おや、そこに居るのは久留井くんかナ? おはよう。朝が早いね」

 声のした方を向くと、そこには蛇女が居た。

「アンタもな」

「私は、この盤面においては観客だからネ。開園前に席に着いておくのは当然のマナーだヨ」

 そう言うと、蛇女はどこかで見た覚えのある、サイドカー付きのバイクに跨り、エンジンを唸らせる。

「……なァ、一個、訊いて良いか」

「私が答えられるものならネ」

「何であのメモリを渡しに来た?」

 その質問をした瞬間、蛇女の笑みが消え、少し考えて再び俺を見た。

「……まぁ、良いカ。答えてモ。……私の、二〇年来の友人の頼みだから、かナ」

「その友人ってのは?」

「穂乃果頼人だヨ。彼は自分が死んで場を掻き回す事で、より確実に、私を味方に付けようとしたのサ」

 意外過ぎる人物の名前に、俺は混乱した。だが、『訊かないと』と思った。

「それは……何でだ?」

「知らないヨ。他人の思考なんテ」

 そりゃそうだ。

「でもきっと、彼は……『守りたかった』し、『託せると思った』んじゃないかナ。自分にとって大切な人を守りたかったし、異能力者とA3、この二陣営の行く末を、託せるってサ」

 真面目腐った顔で言う蛇女は、どこか切なそうで、それでいてどこか誇らしそうな表情をしていた。

「……おっと、そろそろ日付が変わるネ。それじゃあ主人公くん、さようなラ」

 蛇女は普段の調子に戻って言うと、律儀にヘルメットをしてバイクを走らせて立ち去った。

 日は、まだ明けない。


 二〇二五年、七月三一日。午前〇時三〇分。

「今日が最後の戦いだ。……皆、生き残ろう‼」

 弌生は場に良く通る、しかし喧しくはない声で号令をかけ、那御耶の中心にある、駁撃のアジトに向けて進軍を開始した。

「……何かあったか?」

 俺が後部座席で弌生を見ていると、弌生は気付いて声を掛けて来た。特に何があった訳でも無いので、俺は首を横に振って景色を眺める。

 ただ、『コイツなら託せる』って思われるのに、納得が行った。

 明本の連中が潜んでいるアジトの隣や間近を通る時も、一切の攻撃や妨害が無かった。

「嵐の前の……ってやつか」

「……」


 数〇分ほど車を走らせ、遂に俺達は、駁撃の根城に到着した。

「行くぞ……。突撃ッ‼」

 弌生が全体に指示を飛ばすと、A3の隊員は総出でアジトに突入した。それに対し、異能力者も総出で迎え撃った。すぐに辺りは血と火の海になり、壮絶な叫び声が辺りに轟いた。

「小越、二偽、頼む!」

俺と弌生が駁撃の居る部屋に通じる階段を上がる際、階段の入り口で二人見張ってもらう。二人は階段に張り付くと、その場から動かず、誰も入れないようにする。

「……なあ、島津」

「何だよ、こんな時に」

 駁撃の居る部屋のドアを開ける直前、弌生は俺に向かって笑みを浮かべた。

「俺、お前とは友達になれそうな気がする」

「……そうかよ」

 ドアを開けると、そこには——。


「……吉郎、さん?」

「よう弌生。冴は元気か?」

「……よう、爆弾野郎」

「随分強気だね。何か対策でも立てて来たのかな?」

そこには、駁撃と、よくわからないジジイが居た。

 俺は戦闘の構えをとったが、隣の弌生は目を見開き、呆然としている。

「気を付けろ、弌生。……若い男の方は、空間を爆弾に変えて来る。……弌生? おい、弌生‼」

「何で……。何でだよ吉郎さん、アンタそこで、何してんだよ……‼」

 駄目だ、弌生は完全に混乱してる……!

 俺は駁撃とジジイの方を見た。ジジイは二ヤリと嗤って、弌生に言う。

「まあここじゃ何だ。冴も交えて話そうじゃないか。付いて来い、弌生」

「お前ッ‼ 冴ちゃんに何した!」

 激高した弌生の言葉を受け流したジジイは、俺と弌生の間に割って入り、そのまま弌生をどこかへ連れて行こうとする。

「だから、話そうと言っているだろう? ——ああそうだ、駁撃。そこの男はお前に任せるぞ」

「悪い、久留井。そっちは任せる」

「待てよ、何が何やらさっぱりだ——」

 弌生とジジイどこかに行くのを止めようとすると、俺の背後で爆発音がした。

「ッ‼」

「君の相手は俺だってば」

「……わァったよ。そんなに戦って欲しいンならやってやる‼」

 俺は、駁撃との戦いに集中する事にした。


「おらァ‼」

「おっと……これはどうかな?」

 俺は両足の裏から発した衝撃波で宙を舞い、常に移動しつつ攻撃を仕掛けるが、悉くを相殺され、撃ち落とされていた。

「くっそォ……。決め手どころか一発も当たらねェ。どうすれば」

 壁に手をつき、両脚からの波動でホバリングしているが、駁撃の弱点が見当たらない。……どうする。

「降りて来なよ。分かってるだろう? 今のままじゃジリ貧だ。賭けるしか、無いんじゃないかな?」

 分かりやすく俺を挑発する駁撃だが……確かに、唯一の可能性は、完全に賭けになるな。

 俺は駁撃の言う通りに床に降り立ち、走り出す構えを取る。

 いわゆる『クラウチングスタート』の姿勢だ。

「へえ……賭けに出るんだ? 良いね、乗った!」

駁撃は俺の目を見て笑うと、両手の指をいつでも鳴らせる状態にして言い放つ。

「ふうぅ……ッ‼」

 俺は尻を上げ、そのまま走り出す。しかし、衝撃波を全て背後に回しており、完全に宙に浮いて、猛烈な速度で駁撃目掛けて突っ込む。

「それじゃあ、突破はできないね‼」

 駁撃は指を鳴らし、自身を取り囲む様に空気を爆発させる。確かに、今の『だけ』では、突破は出来ないだろう。だが……。

「小太刀の仇だァァ‼」

 爆発の直前、俺は自分を中心に、波動をドリルの様にして身体に纏わせた。波動のドリルは爆風に孔を穿ち、そのまま駁撃の頭を粉砕する。

「小太刀……勝ったぞォ‼」

 しかし俺の身体は爆風でボロボロになっており、そのまま床に倒れ、気を失ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ