一章 9話《ダンジョン攻略-後編》
「そういえば《二つ名》ってなんですか?」
†失羽の騎士†が聞く。
「薮からスティックだね 《二つ名》はゲーム内で特定の条件を最初にクリアした人に付く限定の称号みたいな感じ」
「なるほど… ってことはやっぱりハルカさんは凄い人なんですね……」
改めてハルカの凄さを知った†失羽の騎士†は少し嬉しそうであった。
「アストマーチも《二つ名》持ちだしアンコも一応そうだね」
「やっぱりそうなんですね」
そんなこんな休憩を終えて最後の大きな扉の前に移動する。
「それじゃ開けるよ」
ハルカの言葉に†失羽の騎士†が頷く。
扉がゆっくりと開き二人は中へと入っていく…
中は薄暗く少し先が見えない状態になっていた。
ハルカが警戒しつつ前に進むと周囲に置いてあった照明に灯りが灯る。
〖ーーーー〗
言語化することの出来ない悲鳴のような鳴き声がしたと思った瞬間、上から何かが落ちてきた。
「なにこれ… 巨大な蜘蛛…?」
見たまんま巨大な蜘蛛が落ちてきたのであった。
「こいつがボスみたいだね ヘイトは私に向かせるから攻撃は任せるよ… 【ターゲットサイト】!」
ハルカがスキルでボスのヘイトを奪う。
「はい! …【騎士の剣舞】!」
†失羽の騎士†が攻撃力上昇効果のバフを自身に付与して後ろから攻撃する。
〖ーーー! ーーーーーーーー…!〗
ボスの攻撃は全てハルカに向いているがハルカは余裕で耐えていた。
†失羽の騎士†は攻撃が阻害されることもないので好き勝手に背中を斬りつける。
なにごともなくHPを7割まで減らした途端、動きが変わった。
形態変化である…
「ハルカさん!形態変化です!」
「みたいだね… 動きはどうなるかな?」
攻撃を受ける構えをする。だがハルカはなにか違和感を感じた。
「…? 違う!†失羽の騎士†狙いか!」
「へ? って、こっちなの!?」
〖ー!ーー!〗
蜘蛛はヘイト稼ぎのスキルを無視して背中側にいた†失羽の騎士†を狙って攻撃をする。
「ちょちょちょ!なんで私なんですか!」
「ダメだ!こいつヘイト稼ぐスキルを無効にしてる!」
二人はまだ気付いてないがこのボスは最初の形態に使ったスキルを形態変化後から受け付けなくなるのであった。
†失羽の騎士†はなんとか攻撃を躱して逃げる。
その隙にハルカは攻撃をしてヘイト稼ぎをする。
「なかなか… ヘイトがこっちこないな」
ターゲットが変わることなくHPが半分まで減りまた形態変化をする。 蜘蛛の頭だった場所が左右に割れて中から女性の上半身が出てきた。
「うげ!また形態変化ですよ!」
形態変化後でもターゲットは†失羽の騎士†のままであった。
「あっぶな! こンの!」
攻撃がすぐ横を掠めていく。仕返しとして次の攻撃に合わせてカウンターをする。
良いとこに当たったのかボスが少しよろめく。
「ナイスだよ†失羽の騎士†! 【サイドパニッシュ】!」
ハルカがボスの横っ腹を殴る。するとボスはそのまま倒れた。
「拳こそ正義ってね! こいつもおまけだ…【ファーストパニッシュ】!…からの【セカンドパニッシュ】!」
連続でボスを殴る。装備している剣と盾は飾りになっていた。
〖ー!ーーー!〗
ボスのHPが5割から3割まで一気に減った。
「すごい… もう武闘家とかそんな感じだ…」
起き上がったボスのヘイトはハルカに切り替わっていた。
「よ~し… †失羽の騎士†!あとは二人でやるよ!」
「はい!」
ボスのヘイトを奪えば†失羽の騎士†も戦える。ハルカは高い防御力とHPで正面から攻撃を受けつつ反撃する。
「これが《二つ名》持ちの戦闘…」
目の前で繰り広げられるのはそれはもう単純なゴリ押しであった。
だがそんなゴリ押しを成立させられるだけの能力があるというのは凄いことである。
二人がひたすらスキルを使いつつ攻撃を繰り返しているとボスのHPが0になり倒れる。
「やった… やりましたねハルカさん!」
「だね… ヘイト変わったのは焦ったけど†失羽の騎士†がしっかり避けてくれたから助かったよ」
二人は入口の反対側に出現した扉を見つけた。
「どうやら出口と報酬はあそこのようだね」
中に入ると2つの宝箱があった。それぞれが開けられる宝箱のようで報酬は別々に用意されていた。
「ふむ… 私は新しいスキルとお金のようだ †失羽の騎士†のほうは?」
ハルカが隣の†失羽の騎士†のほうを見ると口を開けポカーンとしていた。
「ハルカさん…」
震えた声でしゃべり出す。
「なんか…ユニーク装備貰っちゃいました…」
「……は?」
く~…これにてダンジョン攻略編は終了になります。
やっぱり戦闘描写は表現が大変ですね…