45 鳳凰暦2020年4月19日 日曜日朝 校門前
……休日だというのに、開門前から門の前で準備運動をしている彼を発見しました。まさかと思いながら、ソロになったことで私――平坂桃花はこの時間を選択してみたのです。
まだまだ私は彼に対する理解が不十分だったようです。ただ、彼を見つけるといろいろと貯め込んでいたモヤモヤとする気持ちがすぅっと凪いでいきます。
彼に「おはよう、鈴木くん。朝早いねー。あたし、今日からソロなんだ。ちょっと気合を入れようと思って早く来ちゃったんだけどねー、まさか他に人がいるなんて、びっくりしちゃったよー!」という感じで声をかけたら、朝から一緒にダンジョンに入って、ダンジョンでの彼を観察できるかもしれません。
そう、今日からソロなのです。設楽に対しての行いを外村に咎められ、外村曰く、ミソギということでのソロ活動です。まるでアイドルグループの卒業のように聞こえますけれど、実質は一時的な追放のようなものです。
それで、ソロになってすぐ彼とペアというのも、大変、外聞が悪いのではないかとは思うのです。思うのですけれど、それもいいかな、と思う自分もいるのです。もう、どうしたらいいのでしょうか。
そう言えば、彼にはダンジョンで女の子といたという噂も流れていました。ここで声をかけて一緒にダンジョンに入れば、いずれ私と彼が一緒にダンジョンにいるという噂が流れて、それを知った彼がどのような顔をするのか……それはぜひとも観察してみたい表情かもしれません。
……ただ、この位置から彼を観察しているというのもそれはそれで楽しい観察の時間ではあります。
もちろん、声をかけて一緒にダンジョンに入った方が至近距離で観察できるというのは理解しております。
ただ、それがなかなか……声をかけるセリフは昨夜2時間考えた上で何度も繰り返して練習はしましたけれど、いざ、となると、練習と本番の違いは明白で、なかなか体が動きません……。
あ、門が……ああ、また、引き離されています! これは開門前に声をかけないと、無理なのではないでしょうか? あ、ゲートを通りました。確実にダンジョン入りをしています。
……あ、明日こそは! 今しかありません! もう「久しぶり」が使えない今、ソロになったこのタイミングが話しかける話題としてはアピールも含めて最適だと思うのです! もう少し、計画をしっかり練ることにしましょう……。
 




