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RDW+RTA ~リアルダンジョンズワールド プラス リアルタイムアタック~  作者: 相生蒼尉
第2章 『RDW+RTA+FUCHU+FUTSU act H3 ~3人のヒドインたちによる、附中とフツーの物語~』

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12 鳳凰暦2020年4月11日 土曜日朝 通学路


 楽しみで仕方がない。まるで修学旅行の前の日みたい。そんな感じで昨日は寝つけずに遅くなったから心配してたけど、浮かれながらもあたし――設楽真鈴は、いつも通り5時に目が覚めた。


 顔を洗ってジャージを着たら、八百メートル先の児童公園までランニング。竹刀を片手に。

 児童公園で素振り。基本の面、胴、籠手はもちろんだけど、中学時代はなかった突きを、推薦でヨモ大附属に決まってからは追加してきた。あくまでも公園であって道場ではないので、声を出せないのが残念。声を出せると気合が乗って気持ちもよくなるんだけど。


 ランニングで家に戻って、5時45分。道着に着替えて防具を背負って、朝稽古へ。

 道場では声を出せる。たぶん、本当は近所迷惑なんだと思うけど、この辺の住宅よりも前から先生の家の道場はあったので、先生いわく、文句を言われたことはあるが問題はない、らしい。警察の人とか、ダンジョンアタッカーの人とかにも、先生のお弟子さんがいるので、たぶん、本当に問題ないんだろーなと思う。


 朝稽古を終えて、家に戻ると7時10分。ごはん、トイレ、シャワーを済ませて、制服に着替えて、あ、今日は制服じゃなかったと、学校指定の体操服とジャージで、家を出ようとして7時45分。約束の9時まではまだまだ時間があると気づいて玄関でため息を吐いた。


「確かに寮の時間に合わせるならそうなるってのはわかるんだけど……うう、体がウズウズする」


 待ちきれない。早くダンジョンに入りたい。


 あたしは昨日、初めてゴブリンを倒した。

 ショートソードがゴブリンの頭を切り裂き、かち割って、何かが飛び散った瞬間はうへぇって思ったけど、そのまますぐに飛び散った何かがきらきらと光の粒みたいになって消えていった時、なんて綺麗なんだろうって思ったあたしはかなり変な女の子だと自分でも思う。


 ダンジョンアタッカーに憧れたきっかけは、実はマンガだったりする。『ドキ☆ラブ ダンジョン学園 ~ラブ・クエスト・モーニング・キッス~』は、その、いろいろと、トキメキとか、ドキドキとか、ラブラブとかもいいんだけど、ヨモ大附属みたいなダンジョン科のある学園が舞台で、ダンジョンアタックの場面がたくさんある。お父さんの教育方針で小学校1年生から剣道をやってきたあたしには、そのダンジョンアタックがすごくかっこよかったのだ。


 ……いえ、もちろん、トキメキとドキドキとラブラブの方もとっても気になってはいます。


 推薦の評定のためにテストの予想問題が必要になって、それと引き換えに一度は手放してしまったけど、お年玉で古本屋に行って全巻セットを買い直した。ひょっとしたら元々あたしの物だったんじゃないのかな? と思うくらい、手に馴染んだけど、まあ、そう思いたいあたしの気のせいなんだろーな。


 ……という訳で、あたしはあたしの部屋で、ダンジョンへのモチベーションを高めるために『ドキ☆ラブ』を読んでから、ちょうどいい時間に家を出た。その時にはダンジョンへのテンションだけじゃないドキドキも混ざってたけど。


 途中で黒髪美少女の後ろ姿が見えた。顔なんて見えないのに美少女だと思わせるんだからすごいよね、ホント。


「平坂さーん、おっはよー」


 振り返る黒髪美少女。うう、羨ましい美しの肌。にこりと微笑むこの破壊力よ。あたしのそばかす顔とは比べられないよー。


「おはよー、設楽さん。元気だねー」

「うん! 楽しみ過ぎて!」

「あはは、そーかもねー」

「あ、ねえねえ、こうやって朝、ばったり会うんなら、これからは一緒に行かない?」

「あー、そーねー……うーん、正直なところ、私、朝は日によって動きが違うんだよねー、家のこととかでいろいろあって」

「あ、そーなんだ。残念……」

「あー、うーん。じゃあ、火曜日だけとか、そういうんじゃダメ?」

「え? いいの?」

「いいよー。火曜日は、この前、カラオケの帰りにバイバイしたとこ、ほら、あの、角の潰れたタバコ屋さん。あそこで待ち合わせよっか。何時がいい? あ、もちろん朝5時とかはゴメンだけど」

「あはっ、さすがにフツーにガッコ行く時に5時はないよー! あれは部活の遠征とかの特別な時だけだって。えっと、7時半でいい?」

「早い!」

「あれー、7時半でも早い?」

「だって、7時45分には着いちゃうよ、それ? 朝のHRは8時40分スタートなのに」

「そういうもんなんじゃないの?」

「……ひょっとして、フツーの公立中の時間の感覚って、そういう時間なの? 朝、早い感じ?」

「あ、どーかな? 全員、そうではないと思うけど。フツーに遅刻する人とかもいたし、朝練で早い人もいたし、その中間もいたよ?」


 あたしと平坂さんは、それから附中と公立中との時間感覚への認識の違いを埋めるように、話し続けた。







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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公が良い感じに狂ってて面白い。 [気になる点] ここまで読んでみて、 主人公視点で繰り広げられた1章の話を ヒロイン目線で展開されるのが2章の話だと思います。 自分のように、主人公の活…
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