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RDW+RTA ~リアルダンジョンズワールド プラス リアルタイムアタック~  作者: 相生蒼尉
第2章 『RDW+RTA+FUCHU+FUTSU act H3 ~3人のヒドインたちによる、附中とフツーの物語~』

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11 鳳凰暦2020年4月10日 金曜日午後 小鬼ダンジョン前広場


 平坂さんに連れられて広場へと戻り、あたし――設楽真鈴は浦上さんと一緒に、初ゲットしたゴブリンの魔石を指輪にしてくれるという記念品の業者のところへ行った。平坂さんはもう附中の時にやってるからいらないらしい。そりゃそーだよね。


「価格別に5つのコースがありますがどうしますか」

「あ、一番安いこの1000円のコースで」

「私も1000円で」


 あたしも、浦上さんも1000円のコースを選んだ。


「……では、こちらにお名前をご記入下さい」


 ものすごぉーく残念そうに、業者の人が紙を指し示した。そこには鈴木くんの名前が書かれていた。


 ……お、鈴木くんも1000円かー。ていうか、あの人、指輪とかにしちゃう人だとは思わなかったなー。


「……やっぱり、2000円の方にします。いいですか?」


 浦上さんが変更を申し出た。すると、業者さんが笑顔になった。


「もちろんです、では、こちらの紙にお名前を」


 ……んん? んんん? 今、鈴木くんの名前を見て、2000円の方にしたよね? あれ? 浦上さんって、なんか、鈴木くんに対抗してない?

 こんなに美人さんなのに、美人なだけじゃなくて、そんなカワイイとこまであるなんて最強だよ、浦上さんってば⁉


 あたしは思わずにやにやしてしまった。


「……そんなに、指輪、嬉しいの?」

「あ……ああ、うん。いいよね、こういうのって」


 指輪ではなく、浦上さんのギャップににやついてましたよー。ホントはねー。


 二人で平坂さんのところに戻ると、指輪の話になる。


「平坂さんは、どのコースだった?」

「私? 私は2万円のコースだったなー」

「へ?」

「うぇ?」


 浦上さんも、あたしも、変な声を出してしまった。


「ああ、アレ、附中の時は自分で申し込むんじゃなくて、親が申し込むから。それで」

「あ、そーなんだ」

「そうね。中学生なら、お金絡みは親がやるもの」


 ……親がやってもウチだとたぶん1000円だよ!


 そんな話をしていると、附中男子で学級副代表の月城が戻ってきた。そして、平坂さんに話しかける。


「パーティー編成、学級代表が動いて決めるだろ? 頼みがあるんだ、平坂」

「えー、めんどーはやだよ?」

「いや、すまんが、ソロ、やらせてほしい。自分を追い込みたい」

「は? 附中のダン科がソロとかやったら、他の人の負担だよ? 何言ってんの? 月城くん?」

「……私も、ソロでやってみたいわ」


 あたしが平坂さんのイメージなら言いそうにないはずの「は?」という音の冷たさに驚いていたら、浦上さんがそんなことを言い出した。ゴブリンを倒すのにちょっと苦労してたように見えたけど、それでソロとか大丈夫なのかな? それに、アーチャーって、誰かと組んで初めて活躍できるような気がするんだけど?


「……できるだけ希望に合わせるけどー、ある程度、みんなの意見を聞いてからで」


 平坂さんはその場で答えを出さずに、他のクラスメイトの方へと話を聞きに行った。

 あたしは浦上さんの方を見た。


「ソロとか、大丈夫?」

「……大丈夫かどうかよりも、まず、もっと自分を追い込みたいの。楽をしてたら、自分の殻が破れない気がする。剣道やってたなら、わからないかしら?」

「うーん……正直、スポーツとダンジョンアタッカーの違いがあるから、よくわかんないかな?」

「そう? あんなに綺麗な残心ができる人なら、わかるかと思った」

「わ、嬉しいかも。先生に残心はとにかく言われ続けてきたから」

「先生?」

「うん。道場の先生。止まらずに止まれ、って。なんか、わかんないけどわかる感じの」

「素敵な言葉。残心って、そうよね。止まらずに止まれ、か。設楽さんは剣道の道場、行ってるの? 部活じゃなくて?」

「そーだよ。中学の部活も、ほとんどの人がどこかの道場でやってた人だったし。今も、平日は朝稽古と夜稽古に参加してる」

「だから、あの鋭さがあったわけか」

「えへへ……」

「私より、設楽さんの方がよっぽどソロに向いてると思うわ。それでも私はソロに挑戦して自分を高めたい」

「一人でって、怖くない?」

「怖いわ。でも、結局、人間って、究極は一人じゃないかしら?」

「なんか難しくてわかんないかな、それは」

「設楽さんって、天才かもしれないわね……もちろん、努力する天才よ」

「そーかな? そうだと嬉しいなー」


 うひゃー、美人さんになんかすごいこと言われちゃった⁉


「設楽だったか? おまえならソロでいけると思うけど、パーティーを組みたいなら、早く相手を探した方がいいぞ? だいたい、ゴブイチで戻ってくる間に、誘い合ったりしてるらしいし」

「え、そーなの? 月城くん、ありがと、教えてくれて」

「おう」

「じゃ、ちょっと行ってくるね」


 あたしは軽く浦上さんに手を振って、パーティーを組んでくれそうな人を探しに行った。まずは同じ推薦組の男子からだ。


「ねぇ、パーティーって、もう決めた?」

「おお。おれたち、この4人で最強、目指すから」

「あ、そーなんだ」


 どうやら推薦の男子4人は、自分たちでパーティーを組むらしい。なにそれ、強そう。

 推薦男子は無理みたい。だったら女子を……と次々と声をかけるけど……。


「あ、もう寮で誘われてて……」

「あー、私には決定権がなくてさ」

「うちはもう4人決まってるんだ、ごめんね」


 ……誰もあたしとパーティー組んでくれないんだけど⁉ 寮で誘われてるとか地元民のあたしにどうしろと⁉ あ! 地元民なら鈴木くんがいた⁉


 そう思って、鈴木くんを探してみたけど、どこにもいない。なんで? 先に戻って……いや、あたしたちが戻った時に、いなかった、確か。あれ? なんで?


「おーい、大人しく列を作って座って待て!」


 学年主任の佐原先生がそう叫ぶと、一度ざわつきがおさまって、みんなが列を整え始めた。あたしも、浦上さんと月城くんがいるところへ戻った。平坂さんは動いてるけど、他のクラスも一人、動いてる人がいて、それは見逃されてるから学級代表は動いてもいいのかも。そういえば、月城くんがパーティーは学級代表が、とか言ってたような気もする。


「パーティー、組めそう?」

「……みんな、もう決まってるみたいなんだよー。やばいよねー……」

「ソロでやってみたら?」

「うー、どーだろ。とりあえず、ここにいない鈴木くんに後で声かけてみようと思うんだー。同中のよしみで助けてくれるかもだから」

「……そういえば鈴木がいないわね?」

「どこ行ったんだろーねー……たすけてー、すずえもんのすけー」

「不安そうに見えて、意外と余裕、あるわね……それ、子どもの頃、見てたわ」


 そう言ってくすりと笑う浦上さんを見て、あたしは思わずにぱぁ~と笑った。ウケて嬉しい!


 結局、鈴木くんが戻った頃には佐原先生の指示で動けず、静かに待つことになったので、解散したらすぐに鈴木くんのところへダッシュしようと決めて待つことにした。

 最後に出発した4組も全員が戻って、佐原先生が長めの話を始めた。


「この実習でゴブリンを全員が一度は倒した。これで、この平坂第7ダンジョンについては、全員、出入り自由となる。ただし、絶対に忘れるな。自由には、常に自己責任がついて回る。自由だからといって、やりたいようにやっていい訳ではない。まず、自分自身の命を守れるように行動しろ。戦闘回数の制限を意識して、いいか、絶対に忘れるな! では、解散!」


 ……自己責任と自分の命。うん。やっぱりソロは無理。あと、中学と違って号令がないから終わるタイミングがいまいち掴めないのが地味に困る⁉


 あたしは列の後ろにいた鈴木くんのところを目指して、解散の言葉でそれぞれが話し始めて固まりになった生徒たちの間をするすると抜けていった。

 ところが、鈴木くんがいたはずのところには、鈴木くんはもういなかった。その代わり、そこにはさっきまであたしと同じで、列の前にいた平坂さんが、いた。


「設楽さん、なんでここに?」

「あ、うん。なんか、みんなもうパーティーが決まってて、一人になりそうだったから、鈴木くんとペアでダンジョン入ろうかと思って誘いにきたんだけど」


 あたしはきょろきょろと鈴木くんを探してみるけど、やっぱりいない。困った。本当に困った。どうしよう? やっぱりあの人から目を離しちゃダメなんだ。


「……その、お目当ての鈴木くんは?」


 平坂さんもきょろきょろと周囲を確認して鈴木くんを探してくれてる。あたしのために。うう、ありがたいよぅ。

 あたしも探すけど、やっぱり鈴木くんはいない。どこにいるのー、鈴木くーん。ああ、もう。


「……いなくなってる、ね」


 やばいやばい、このままだとソロになっちゃうかも? あたしはまだ死にたくないよ⁉


「…………………………設楽さん。私のパーティー、まだ3人だから、空きがあるけど?」

「え、いいの? ありがとう! 平坂さん!」


 にぱぁ~と自分の顔が笑っていくのがわかる。ああ、もう、聞いて! みんな聞いて! ここに救いの女神がいるよ! 困ってる人を助けてくれる女神さまだよ!


「……じゃあ、明日はー、ここに9時集合で」

「え?」

「なに?」

「いやー、意外と遅いんだなぁって。確か、学校は7時に開門するって聞いてたし」


 開門から2時間後とか、時間、もったいなくないかな?


「設楽さん、そんな朝からダンジョンに行く人なんていないよー」

「そうなんだ。部活で遠征とかだと5時集合とか普通にあったから」

「その話の方がびっくり……」

「お互い、まだまだ知らないことが多いね」


 5時集合って、部活の遠征で県外とか行く時、フツーの時間だけど?


「寮の食事時間と、準備のための時間でー、少し余裕を持たせると、9時がいい感じなんだー」

「うん、わかった。じゃあ、明日、9時だね!」


 そんな話をしていると、同じクラスの外村さんがよく知らない人を連れて、やってきた。


「モモっち~」

「……トム? どうしたの?」

「4組の子たちが、モモっちに相談したいって」

「相談?」

「うん。補欠の子のことみたい」

「ああ、あの……」

「ごめんね、モモ。違うクラスのことなのに」

「いーよ、いーよ。それで、どうしたの?」

「あの子、悪気はないんだけどさ。初日に入学式のあと、倒れちゃって、寮の行事も不参加。昨日もそのまま寝込んで休んで。クラスで人間関係できてないから、今日、ここでパーティー決めだとか、思ってなかったみたいで、いつの間にかいなくなっちゃっててさ。それに、ほら、補欠で、最下位だから、その……」

「うん。わかった。他の人がパーティーに入れたくないってことでしょ。はぁ、どうしたもんか」


 ……平坂さんって、他のクラスからも、頼られてるんだなぁ。すごいなぁ。やっぱり女神なんだよ、平坂さんは!


 あたしはその場で平坂さんたちの話が終わるのを待って、その後、平坂さんと一緒に帰った。女神と一緒に帰れる時間って、プライスレス!







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― 新着の感想 ―
[気になる点] 1章は面白かったけど、2章は前に見た話を別視点で繰返してるだけでつまらないです。 ヒロインたちの過去話だけにして、1章と被る話はカットしたほうが読みやすいと思います。
[気になる点] 前の同じ話を読まされてる気分。
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