8 鳳凰暦2020年4月10日 金曜日昼休み 国立ヨモツ大学附属高等学校ロッカー棟
私――浦上姫乃はロッカー棟と呼ばれる建物に入るためにHという文字が浮かんでいるダンジョンカードをタッチして中へ入る。指定されたロッカー番号のロッカールームへ入るには、また、ダンジョンカードが必要だった。
25番の私のロッカーは大きかったが、向かい合わせのロッカーはそれを上下で半分にしたサイズだった。
気になりながらも着替え始めると、濃紺の髪をお下げにしてふたつ垂らした女子生徒が入ってきた。確か、クラスメイトで、設楽、だったかと思う。自己紹介で剣道をしていたと聞いて、印象に残った。
「あ、浦上さんだよね? あたし、同じクラスの設楽真鈴! よろしくね! でも、すごいね! こんなに早く着替えに来るなんて!」
「あなたも変わらないタイミングでしょう? 改めて、浦上姫乃。こちらこそ、よろしく」
設楽は26番のロッカーを開いて使い始めた。私の半分のサイズのロッカーの中で、番号が一番小さいものだ。
「……ロッカーの大きさ、違うけど、気にならないの?」
「あー、それね。昨日のカラオケで附中出身の人から聞いたから。そう言えば浦上さんはカラオケ、いなかったような。これ、教室の座席とかもそうらしいんだけど、ロッカーも順位付けされてるんだって。テストが終わればその順位でまた別のロッカーになるらしいよ」
着替えながらそう言う設楽を、思わず見てしまう。
……い、意外と胸、大きいわね。いえ、そうではなくて。私が25番ということ? 次席の2番、いえ、首席が鈴木で男子生徒なら、私は女子の1番なのでは?
「……あ、ひょっとして、25番なこと、気にしてる?」
「……そうね」
「最初は附中ダン科出身の女子24人がロッカーの1番から24番なんだって。ダンジョン初心者のあたしたちよりも、入れる荷物は多いらしいしね」
「そういうことか」
「そー、そういうこと。着替えおーわりっと。ね、浦上さん、集合場所まで、一緒に行こ」
「あ、そうね」
設楽という、この女は、自然に距離を縮めてくるな、と。そんなことを私は思った。




