7 鳳凰暦2020年4月10日 金曜日朝 通学路
昨日の親睦カラオケの帰り、新たにクラスメイトとなった平坂北中出身のお下げの女――設楽真鈴と、方向が同じだからと一緒に帰ることになった私――平坂桃花は、とある事実に気づいてしまったのです。
帰り、だけではなく、学校というものは、行き、というものもまた、存在するということに。
今朝は8時に家を出て、いつもの道で学校へと向かいます。附中への通学で3年間通った道です。ほとんどの生徒が寮生、電車通の者が2人、そして徒歩通は私だけだった附中時代とは違い、附属高1年では、私と設楽、そして彼の3人が徒歩通です。
周囲からおかしいと思われない程度に、首を振り、彼を探します。
県道からヨモツ大学附属へと分かれる専用道まで歩いても、彼は見当たりません。最後の坂道を残念な気持ちで上ります。
そして、教室へ入った瞬間、読書をしている彼を発見して、ああ、ようやく観察する機会がきた、と、そう嬉しく思うのです。読書中なので、話しかけることはできませんけれど。彼の邪魔にはなりたくないのです。
しかし、通学中の彼を観察するためには、どうにか対策を考えなければならないようです。彼はいったい、いつ、家を出ているのでしょうか……。




