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RDW+RTA ~リアルダンジョンズワールド プラス リアルタイムアタック~  作者: 相生蒼尉
第5章 その2『RDW+RTA+ADV ~鈴木の大冒険(アドベンチャーゲーム)~』

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27 鳳凰暦2020年8月19日 水曜日 国立ヨモツ大学附属高等学校・中学校内ダンジョンアタッカーズギルド出張所(1)



「……犬ダンジョンの安全管理? 今さら、それなの?」

「ほんと、今さらなのよねぇ……。まあ、こっちとしては何を言われても平坂家には逆らえないっていうか、何も反論なんてできないんだけど。一応、あれよ。国際化の進展にともなう社会情勢の変化にかんがみ~みたいなご立派な建前はあるみたいなんだけど」


「国際化って……それも今さら? そういうことが言われ出してもう何年も経ってるのに?」

「まあね。ギルマスとか松本さんとかくらいの世代だと、国際化って言葉もいろいろ感じるんだろうけど、こっちとしては今さらよね。やっぱりジェネレーションギャップはあるわよねぇ……」


 私――宝蔵院麗子は、応援にきている阿部さんといつものように雑談をしていた。もちろん準備をしながら、である。


 昨日、本所――ギルドの平坂支部では、平坂家からの通告があったらしい。


 犬ダンジョンには外周通路と呼ばれる危険地帯がある。そこの入口に番人を立てるという話があったということだ。

 もちろんその費用は平坂家が負担する。ギルドには費用の負担は求めないというスタンスだったらしい。


 犬ダンジョンはヨモ大附属高の生徒たちにとってメインとなるアタックダンジョンなので、ここの所長となっている私にも関係がある話だ。

 今、阿部さんが説明しているのは、業務を含んだ雑談とも言える。


 外周通路は進入するとほぼ確実にスタミナ切れになると言われている。

 犬ダンジョンでのダンジョンアタッカーの行方不明は全て、この外周通路が原因ということにされてきた。真実は分からない。

 ただ、その言い訳にふさわしい空間ではあったのだ。


 ダンジョンでの行方不明という名の死亡事故が、人為的なものではないという言い訳のための空間。それが犬ダンジョンの外周通路だった。


「……ギルマスはそれを? 本当に納得しているのかしら? いろいろと問題があるはずなのだけれど?」

「能美さん? あの人はほら、完全に武闘派だから。どっちかといえば喜んでるとしか言えないわね、あれは。まあ、そもそも能美さんがどうのこうのという前に、もっと上から話があったみたい」

「上……?」


「そ。平安の中央本部から、ね。松本さんが電話で話を受けてたからそこは間違いないわね」

「松本さんがくわしい話を受けるのはいつものことじゃない……」

「それはそうだけど。能美さんじゃ話にならないだろうし」


 ……上というからには、グランドマスターの出雲さんだろうか?


 いえ。

 相手は平坂家だ。誰が何を言ったとしても不思議ではない。平安のギルド中央本部よりもさらに上の政府関係だってありうる。

 それだけ大きな影響力を持っているのが三大ダンジョン旧家なのだ。


 そもそも平坂ダンジョン群のダンジョンは、全て平坂家に所有権があるとされている。

 平坂家が専有したままのダンジョンもあるけれど、多くのダンジョンはギルドが管理を委託されている状態なのだ。

 ギルドはあくまでも管理者でしかない。平坂家から、こうする、と言われたらそれに逆らえるはずがない。

 今回の場合、その費用も平坂家だというのだからギルドから言えることなどないのだろう。


「安全上は……当然、そっちがいいのよ」

「それはそうね。でも、本当の問題は……」

「犯罪系クランの言い訳がなくなるってとこよね。大問題なのは間違いない」


 そうなのだ。

 別に犯罪系クランのダンジョン内犯罪を認めたい訳ではないのだけれど、犯罪系クランが外周通路を言い訳に使えることでお互いに不干渉でいられたという面はある。


 ……犬ダンジョンでのアラートは全て、最終的には外周通路に入ったからだと結論づけてきたのに。


 平坂家がその入口に番人を立てたら、出入りはできなくなる。

 つまり、行方不明になった初心者アタッカーは外周通路に入っていない、ということになる。


 それは……行方不明が人為的な何かであるという可能性へとつながる。


 もちろん、ダンジョンでは録音、録画、通信などができないことで証拠が残りにくいから……人為的なものとは確定できない。

 それでも……外周通路という言い訳が使えたこれまでと、使えなくなるこれからでは大きく違うはずだ。


「ギルマスの能美さんはそういうの、確かに喜びそうだけれど……」

「ああ、ずっと犯罪系クランを潰したがってたもんね、能美さん。でもね、そのへんについても今はあんまり心配いらない感じみたい」

「心配いらないって……?」

「ほら……彼が一時期、声かけで何回も対人戦して、『正義の証明』をしまくってたから……」

「ああ、それ……」


 ……そういえば、一度に30人以上の『正義の証明』をしたという報告を学校に提出した記憶があるわね。


 思えばあれもありえない話だった。

 マジックポーチを所有していたとはいえ……30人もの武器や防具などを回収してくるなどというのはちょっと考えられない行動だ。

 複数のアタッカーで行動しているというのならできなくはないけれど、あくまでもひとりでという部分がありえない。

 もちろんその動機は不明である。それがもっとも怖ろしいとも言える。


 ……ひょっとすると仲間は女子生徒ばかりだから、その子たちのため、なのかしらね? そういう漢気のような何かの可能性も考えられるのかしら?






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