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RDW+RTA ~リアルダンジョンズワールド プラス リアルタイムアタック~  作者: 相生蒼尉
第2章 『RDW+RTA+FUCHU+FUTSU act H3 ~3人のヒドインたちによる、附中とフツーの物語~』
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3 鳳凰暦2020年4月8日 水曜日入学式後 国立ヨモツ大学附属高等学校1年1組


 やばい、やばいやばいやばい。


 入学式の間もずっと、頭の中ではやばいがぐるぐると回ってた。


 とにかく、1秒でも早く鈴木くんに口止めを!


「んじゃあ、解散」

 そう先生が言ったので、あたし――設楽真鈴は号令を待った。でも、先生はすたすたと教室を出て行った。


 あれ? 終わりなの?


 戸惑っている間に、鈴木くんが立ち上がる。


 うわーーーっ! 帰っちゃだめーっっ!


 大慌てで荷物をまとめようとするけど、さすがは入学式。荷物が多いよ!


 その瞬間、女の子が「久しぶりだね」と鈴木くんに話しかけて、鈴木くんの動きが止まった。あ、今のうちに荷物! 誰だか知らないけど、ありがとう! あ、でも、知り合いってことはあたしのことをしゃべっちゃう可能性もあるかも⁉ それは困るっ!


 あたしはせっせと荷物を詰めていく。でも、女の子の話、終わっちゃった! あと少しなのに!


 鈴木くんが動き出す。でも、またそこで、鈴木くんの後ろの席の女の子が声をかけたみたい。鈴木くんの足が止まる。またしても誰だか知らないけど、ありがとう! あ、違う、知らない人じゃなくて新入生代表の人だよ⁉ まさか鈴木くん、代表の人とも知り合いなの⁉ 本当に口止めを急がないとすぐにバレそうな人が少なくとも二人いるよーっ⁉


 あたしは最後の荷物をぐいっとかばんに詰め込んで立ち上がる。ちょうど鈴木くんが動き出すところだった。


 うわぁーっ、急げーっ!


「ちょっとちょっとちょっと」


 窓の方からカバンを背負って早歩きで鈴木くんに近づき、そのまま腕を掴んで廊下へと引っ張り出して、人の流れに逆らって、人がいない方を目指した。

 廊下がL型に曲がってるところで向こうを見たら、誰もいない。ここだ!

 きょろきょろと周囲を確認したけどやっぱり誰もいない。よし。ぐいっと鈴木くんに詰め寄る。気合いだ! 押し切らないと! 入学早々えっちぃ女の子とか思われたらやばいんだよーっ!


「鈴木くん? 約束、絶対だからね⁉ 絶対なんだからね?」

「え、と……」

「絶対だから⁉」

「あ、えと……」

「覚えてるよね⁉」

「あー、と……設楽、真鈴、さん?」


 ……なんで名前なの! 約束したよ⁉ 約束、覚えてないの?


「名前じゃなくて⁉ あれ!」

「あれ?」

「覚えてないの⁉」

「えーと、約束?」

「そう! 約束!」

「……なんだっけ?」


 ……え? 本当に覚えてない?


「覚えてないんだ! あ、いや、それならそれで……」

「あ、ひょっとして、あれかな? 『ドキ☆ラブ ダンジョン学園 ~ラブ・クエス……」


 この人、完璧に覚えてるよおっっ⁉


「わーーーっっ!」

「もがっ……」


 あたしはとにかく鈴木くんを黙らせようとその口をふさいだ。


「それは誰にも言わない約束~~~っっ!」


 なんか鈴木くんがもがもがしてるけど、そんなことよりも口止めだよ!


「絶対に言わないで⁉」


 鈴木くんが、こくこく、とうなずく。


「絶対だよ? 絶対にだよ?」


 鈴木くんがこくこくこく、とうなずく。


「まさか、ここのダンジョン科で鈴木くんと一緒のクラスになるとは……」


 ……全然知らなかった。同じ中学なんだから誰か教えてくれればいいものを。前もって知ってれば、口止めをして、それから、頼りにもしたのに!


「地元の人なんてほとんどいないも同然なのに、よりによってここで鈴木くんとは……」


 思わずため息が出る。どうして『ドキ☆ラブ』の秘密を握る鈴木くんなのよー!


 鈴木くんがあたしの左の手首を握り、ぐいっと押して、自分の口を解放し、すぐにあたしの手首から手を放す。


「……そろそろ、この体勢、やめない?」

「え……」

「いろいろとあせってたのはわかったけど、腕、掴んだままだし」

「あ、ごめ……」


 ……はっ? あれ? 何コレ? 『ドキ☆ラブ』4巻の壁ドンみたいな状態⁉ え? なんでこんな状態? あれ? ひょっとしてあたし、入学直後に男子を教室から連れ出したソッコー告白女子みたいになってない、この状況⁉ うひぃっ!


「くぅぅ~~~っ、ご、ごめんなさい~~っっ!」


 あたしは逃げた。そこから全力ダッシュで逃げた。途中、誰かにぶつかった気もするけど動揺してたから覚えてない。ぶつかった人、ごめんなさい。


 うわーん、やばいのはあたし本人だったよーっ!








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