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RDW+RTA ~リアルダンジョンズワールド プラス リアルタイムアタック~  作者: 相生蒼尉
第4章 その6『RDW+RTA +KAG(M―SIM) ~鈴木の経営ゲー(マネジメントシミュレーション)~』

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203 鳳凰暦2020年7月18日 土曜日 ~ 19日 日曜日 地獄ダンジョン4層 青鬼の隠里



 地獄ダンの8層、私――矢崎絵美は、すごく興味はある。ただ、鈴木の判断は、おそらく、適切。他のクランとの、おかしな絡みは不安。


 そのまま、6層から5層、5層から4層と階層を戻り、鈴木の道案内で今度は4層の岩場へとやってきた。


 空は赤い夕焼け空。夕陽を浴びた灰色っぽい岩場が少しピンクに見える。豚ダンと違って、地獄ダンのフィールドには太陽の動きがある。ちょっと感動。


「きれいでしゅ……」

「なんだろう? ダンジョンなのに変な感じ……」


 分かる。太陽が動いて昼と夜があるダンジョンと、ずっと昼間のダンジョン。やっぱりダンジョンは、いろいろと不思議すぎる。


 あと、岡山。


 斜め後ろから、物欲しそうに鈴木を見上げてる。おそらく、手を繋ぎたいのだろう。思い切って繋げばいい。景色は最高だから。思い出になる。


 ……できそうで、できないのは、もどかしい。あと、二人きりではない遠慮もあるかも。なら、二人の時は? あ、岡山、『ドキ☆ラブⅡ』がうらやましいって……なら、二人の時もできてない? 頑張れ、岡山。


「……今からのアタック内容は、絶対に秘密で。今日、神殿に行ってるメンバーにも、まだ秘密にしておくこと。魔法契約の時に、説明は受けたから、情報に関するリーダーの指示は絶対だ。分かるよな?」


 私の思考は、鈴木の言葉で遮られた。


「あみちゃんたちにも? よく分からない、かな?」


「話題にすること自体を可能な限り、避けること。どこかで漏れたら、命を狙われる可能性もある攻略情報になる。高校生で早死にしたい? 安芸さん?」


 言われた宮島よりも、那智と端島の二人がぴしりと固まった。


「早死に……したくないかな……」

「鈴木、説明、足りない」


「ま、そうなんだけど。実は、ここから先の攻略は、大きな利権と絡んでくる。これがバレたら、この場所が戦場になると思っていい」

「利権絡み?」


「狩場の奪い合いはダンジョンアタッカーの寿命を一気に縮めるから、絶対に秘密でよろしく。第1テストの時、サンナーザの悲劇、勉強したよな」


「……カメリアのどこかで、50人くらい、アタッカーが死んだ事件、かな?」

「そう、それ」


 ……利権は、怖い? 権力が動く可能性? 分からなくはない。利権を持つ人は、それを守りたいのは当然のこと。そこに絡んでいく? 何のため?


「……でも、利権なら、お金になるの、かな?」


 宮島が表情を変えた。伊勢もいたら、同じ顔、してたはず。まさかの怖いもの知らず?


「残念ながら、ここで手に入れたものを換金したら、それこそ利権絡みで永遠に狙われることになる。だから、7層で多めに戦って、土日分の魔石は集めといた」


「7層のぐるぐるは、そういうことかぁ……」


 少しだけ残念そうな顔になったが、宮島も納得した。


 私、那智と端島の背中を軽くぽんと叩いて、再起動させる。はふっ、と二人は息を吐いて、動き出した。


「分かってもらえたみたいだから、始めるか」


 そう言って、鈴木が岩場に手を伸ばした。


 そのギミックには、ドキドキが止まらなかった。岩場に穴が開いていく。何これ? 何? どうなってる? ダンジョン、すごい⁉






 鈴木に導かれて入った場所は、隠里。


 いい。実にいい。興奮が止まらない。ダンジョン、こんなものがあるとは!


 オーガの忍者でもいるのかと思ったが、それはなかった。残念……。隠れるのは忍者なのに……。


 最初は全員で突入し、2匹のオーガを相手にする。逃がしてはダメ。必ず、仕留める。ただし、7層で戦ったオーガとは色が違う。青い。しかも、大きい。


 鈴木によると、12層格の青鬼らしい。さっきまで4層だったのに? それは、確かに、秘密にした方がいい。


 青鬼、強かった。4層からの12層、まさに、段違いという言葉の通り。

 前に、初めて豚ダンに入った時のことを思い出した。だが、それ以上の体験。地獄ダン装備でも、4人で囲んで、一人4回ずつくらいは攻撃した。

 ただ、バックアタック戦法は通じた。そこはありがたい。もう1匹は鈴木と岡山が二人で先に倒した。


 そして、落ちた魔石が……下半分? 上半分? どっちがどっちかは分からないが、半分は青系統のグラデーションで、渦を巻いていた。もう半分は、10層格のオーガの魔石と同じ、黄色が混ざったような茶色のマーブル模様。


「……初めて見た色、かな?」

「半分、ずつ」


「左右で分かれてましゅね?」

「上下じゃない?」


「これが、属性魔石。水の」

「平坂の家……」


 ……利権の意味、分かった。癒しの平坂家。ここで青いオーガを狩っていくと、平坂家の水の属性魔石の利権を潰しかねない。鈴木なら。


「矢崎さん? どういうことかな?」

「……宮島、もっと教科書、読むべき」

「あ、うん……」


 私、説明、かなり苦手。宮島、ごめんなさい。そう思いながら、鈴木を見た。伝われ……。


「水の属性魔石は、水の簡易魔法文字を使うヒール系統のマジックスキルを、ダンジョン外で使えるようにする効果がある。そして、そのほとんどは三大ダンジョン旧家のひとつ、平坂家が独占状態で流通させてる」


 ……伝わった。鈴木の解説は、ばっちり。これで大丈夫。


「……三大ダンジョン旧家の、お金のタネを横取りしてるってこと、かな?」


「まあ、それに近い。これを換金しようとすれば、そういうことになるのは間違いない」

「つまり、平坂家から命を狙われるってこと、かな? 本当にそんなことって、あるのかな?」


「……ダンジョンがどんな場所かは、分かってる?」

「それは……さすがに、知ってる、かな」


「ダンジョン内で狙われて、殺されたら、証拠も何も残らない。つまり、そういうこと。ちなみに、平坂家だけじゃない。平坂家の力を落としたい、奪いたいと考える勢力にも、狙われる。新たに力を握りたいって勢力から狙われる可能性も否定できない。ここで長くは説明しないけど、もっといろいろな可能性が考えられるからな?」


「怖いね……」

「どどど、どうすりぇば……?」


「とにかく、何も言わないこと。どうしても話す必要があるんなら、絶対に僕たちだけで、盗聴なんかの可能性もないと思えるところでしか話さないこと」


「ギルドのミーティングルームとか?」


「ギルドもそこまで信用しない方がいい。ま、ダンジョンのボス部屋とか」

「えっ……」


「この話は、神殿の情報よりも管理を徹底する必要があると思ってほしい。世の中には、法律よりも怖いものがある。法治国家で法律を無視する相手はガチで対処が難しいからな」


「話さにゃいです!」

「……住ちゃんの場合、噛み噛みで話せない、の方かもしれないけど……気を付けます」


 端島と那智に続いて、宮島は何も言わずに、こくりとうなずいた。私も、うなずく。


「分かってくれたら、これを続ける。ここの魔石の換金はあきらめてほしい。その代わり、貯め込んでおくことで、クランのメンバーがダンジョン外で何かがあった時に、この属性魔石は遠慮なく使えばいいから。むしろ、換金よりも、そのために集めてる」


 ……鈴木。まさか、ダンジョンの外で何かが起きる可能性、考えてる?


 そこからはまた元に戻って、4層の岩場へ。入口の隠されし門、消えた!


 鈴木が岩場に触れると、再び隠されし門が開かれ、隠者の里への道が通ずる。まるで導きの手!


 驚いたのはここから。


 すぐにさっきの場所へ行ったのに、もう、青いオーガはリポップしてた。もちろん、囲んでタコ殴りにした。


 それで、また、4層の岩場に戻る。


 これを何回、繰り返しても、青いオーガはいつもリポップしてた。


 ……確かに、この情報が漏れるのはマズい。何個でも、入り直した分だけ、水の属性魔石が手に入ることになる。12層格の青鬼を倒す力があれば。


 バックアタック戦法に慣れていればかなり簡単に倒せる……。


 これを30回ほど繰り返して、今度は、鈴木、那智、端島と、岡山、私、宮島のトリオに分かれた。


 鈴木たちが先に入って、中へと消えると、隠されし門も消えた。びっくりした。外から見たらこんな感じ⁉ これは刹那の秘門!


 だが、岡山が岩場に触れると、また、隠されし門が開いて、私たちを誘った。次は私も触れてみたい。私の手が、新たなる世界へと導く……これは、興奮、する。


 ただ、その後が、もっとびっくりした。びっくりというより、動揺したともいう。というか、動揺した。どうしたらいい?


 私たちが中へと進むと、さっきと同じところに青いオーガが2匹いて、鈴木たちがいなかった。


 ……そんな⁉ まさか……鈴木に限って⁉ 那智と端島も!


「左は私が。右は二人に任せます」


 鈴木たちがいなくなったというのに、岡山が冷静すぎる。


「……ヒロコちゃん、そ、そんなこと、言ってる場合、かな?」

「岡山、鈴木たちがいない」


「……お気持ちは分かりますが、私も鈴木さんから聞かされただけなので、うまく説明できません。鈴木さんによると、あの岩場の入口を出入りすると、それぞれ、別の空間に入ってしまうそうです。鈴木さんはそう言っていました」


「どういうことかな?」


 ……別の空間? 鈴木たちはいないんじゃなくて、私たちとは別の空間にいる? そんなこと、ある?


 そんな証拠は……あ、青いオーガのリポップ? すぐにリポップしている理由? そもそも、あれはリポップではない? 別の空間の、別の青いオーガ? そういうこと? 分からない……。


「とにかく、あれを倒して戻れば、また鈴木さんたちに会えますから。きっと……」


 岡山の表情、暗い。岡山も、私たちと同じ心配、してる。同じ不安が、ある。鈴木の言葉は信じてるとしても、不安はどうしても残る。


「分かった」

「矢崎さん……」


「宮島。できるだけ、早く」

「……うん」


 気合、入れる。


「行きます」


 岡山の合図で走り出す。


 あっちは岡山に任せる。鈴木を除けば、ヨモ大附属で一番強いのが岡山。武闘会を制した私たちのエース。そこは、信頼あるのみ。


 右手の親指、人差し指、中指で矢をつがえつつ、薬指と小指でもう1本の矢の先端を握る。


 矢を放つと、私と宮島が相手をする青いオーガの左目へと吸い込まれるように刺さる。それとほぼ同時に、2本目の矢をつがえつつ、弓弦を引き始める。


 先行する宮島が、矢の刺さった顔で私をにらむオーガの脇を通り抜ける瞬間、1発、脇腹のあたりを殴っていく。


 その宮島を追うように殴られた青いオーガが顔を動かした瞬間、2本目の矢を放つ。


 今度は、宮島の動きを追ったことで、私の前に晒されたその右目に吸い込まれるように矢が刺さる。青いオーガの顔面から、2本、新たな角が生えた状態になる。


 後方へ回り込んだ宮島の一撃。青いオーガは刀を捨てて、両手で、それぞれ、刺さっている矢を掴むと、思い切り引き抜いた。これもファンブル?


 引き抜いた矢と一緒に何かが飛び出たが、見ないことにする。


 今の青いオーガには何か見えているだろうか? 一応、青いオーガは宮島の方を振り返ろうとはするが、残念ながら宮島のいない方向を向いている。見えていない。


 私はすばやく脇差を抜いて、青いオーガの背中を斬りつける。1回、2回、3回と斬りつけて、さっとバックステップ。


 私の方へと青いオーガが振り返った瞬間、宮島のラストアタックが背中へと振り切られた。


 青いオーガが消えて、魔石に変わり、さらに、そこには脇差も落ちていた。


「脇差!」

「宮島、回収」


 私は魔石を拾う。


「うん。ヒロコちゃんは……」

「もう終わってる。さすが、岡山」


 ソロなのに、私たちより早かった。やっぱり岡山、すごい。


「はやっ……」


「そう。早く、戻る」

「あ、そうだった」


 岡山とはアイコンタクトで、飛び出してきた洞窟へとまた飛びこむように戻って、入口へと走る。


 4層の岩場へと出た瞬間、那智と端島の姿が見えた。そして――。


 ――鈴木! いた!


 思わず、弓も脇差も盾も放り出して、私は鈴木に飛びついた。


 ……しまったと思った時には、岡山が眼鏡の奥からすっごいジト目を私に向けていた。


 だが、これは仕方がなかったと私は思う。それでも、ごめんなさい、岡山。






 その後、鈴木の指示で隠里の見張りをひたすら徹夜アタックで倒し続けた。自信が足りない那智と端島のための、2匹狩りらしい。仲間への配慮、大切。


 宮島が野営の準備をわざわざ用意してきたことについて不平不満を言ったが、鈴木にはあっさりと受け流された。


「こんなところで寝て、疲労を貯め込むより、徹夜してから帰ってベッドで寝た方がいいに決まってる」


 ……それは真実。折り畳み式やわらかマットと寝袋を使ってダンジョンで寝るよりも、どう考えても寮のベッドの方がいい。間違いなく快眠度は上。


 そこからはひたすら、青いオーガを2匹ずつ、狩り続けた。


 狩りの間の岡山から私への指示が、かなり要求高めだったのは、おそらく気のせいではない、はず。だが、今の岡山には逆らえない……。眠くても、頑張れ、私……。






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― 新着の感想 ―
やっぱり荒ぶる岡山さんが最恐
[一言] まさかの好感度MAXキャラ矢崎w
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