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RDW+RTA ~リアルダンジョンズワールド プラス リアルタイムアタック~  作者: 相生蒼尉
第4章 その3『RDW+RTA +KAG(M―SIM) ~鈴木の経営ゲー(マネジメントシミュレーション)~』

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132 鳳凰暦2020年6月23日 火曜日 放課後 小鬼ダンジョン3層ボス部屋前



 ボス部屋前からここまでのルートをにらむように見つめている外村を横目に、私――平坂桃花は今日のボス戦でどのように戦うべきかを考えていました。イメージするのは彼の戦闘ですけれど、メイス使いの私には、彼のようにはいかないと思うのです。


「……あ、来たっしょ。17時58分、か。うん、予想通り。いいタイミング」

「じゃあ、作戦通り。最初のグループは入ってね」

「はーい」

「了解」


 私が声をかけると、女子パーティーの二人が返事をして、2組からの新メンバーを二人、引き連れてボス部屋へと入ります。


 ボス部屋を目指してやってくるのは、昨日の放課後で一人あたり4回ずつのボス戦キャリーが終わった3つのパーティー。鹿島組、叶屋組、弓削組です。


 そもそも、先行していた鹿島組、叶屋組に、少し遅れていた弓削組を追いつかせるという嫌がらせも外村発案で実施したものでした。私も一緒に考えましたけれど。


 最短なら17時30分か40分には到達できるボス部屋へ18時頃にやってきたのは、3層魔石を多めに確保してきたから、でしょう。


 それを今から奪われるとも知らずに……。


 私たちは、いつもより早めに小鬼ダンへと突入し、それぞれのパーティーで別ルートを選択して17時45分を目標にボス部屋前に集合しました。

 どのルートを通るかは昼休みにクランミーティングで確認しておいたので、問題はありませんでした。


 ボス部屋前に集合して、クランメンバーではない鹿島たちを待ち受けていたのです。


「うおっと、混んでんな」

「先輩たちも言ってただろ、ボス部屋渋滞」


「あー、聞いたことあるね、それ。佐原先生もボス部屋の順番をちゃんと守れって言ってたし」


「……あれ? 梅田じゃん? 何? ボス戦キャリーしてもらってんの? 早くない?」

「あー、まーね」


 2組からの新メンバーのひとり、附中ダン科出身の梅田奈々が叶屋に声をかけられ、あいまいな返事を返します。より正確に言えば同じボス戦キャリーでも、これはクラン内キャリーです。そこの部分はあいまいなままで構いません。


 梅田たち2組から新しいクランメンバーが入ったと知ったら、また叶屋は自分たちもクランに入れろと言い出すに決まっています。


「……って、よく見たら他にも2組の子が何人かいるよね? あー、さはセンにキャリー、頼まれてんだっけ? ヘッドライナーは大変だねー」


 私はただ微笑みで返します。佐原先生に頼まれたというのも事実ですけれど、これはクランメンバーの育成ですから。


「3人パーティーだからってキャリーを頼まれても困るよねー。あたしら4人だから、まだキャリーとかできないしさー。あれとペア戦闘までは、なかなかねー、難しいだろーねー」


 私たちのクランの後ろに鹿島組、叶屋組、弓削組の順番で並びます。


 叶屋組も鹿島組も附中ダン科4人パーティーです。そう考えますと、附中ダン科なしの弓削組は頑張っているとも言えます。月城たちと話し合ってクランを組むところまで進んだという情報も入っています。


 叶屋は矢崎事件があったのでかなり拒否感を示したらしいのですけれど、同じパーティーの男子二人、西と新田に説得されて、渋々という感じでクラン結成を認めたらしいです。上島たち推薦男子も含めて、4つのパーティーが月城たちのクランに入っているそうです。16人です。2組からの新メンバーを加える前の私たちとほぼ同じ規模のクランです。


 まあ、その設立して間もないクランが今日でどうなるのかも楽しみです。


 グダグダとさえずる叶屋たちの話を聞き流しながら、18時3分に事態は動き始めます。


 女子パーティーの残り二人が、2組の新メンバー二人を引き連れて、リポップしたボス部屋へと入ったからです。


「……坂本さんたち、もうペア戦闘ができるのか?」


 気づいたのは弓削です。転科の首席はなかなか鋭いようです。


 気づかなかったら、3つのパーティーをまとめて沈めることもできたのでしょうけれど、気づいた弓削はどう判断するのか、ちらりと外村と視線を交わして小さくうなずき合います。対応は、臨機応変に、です。


「平坂さん。ちょっといいかな?」

「うん? どーしたの? 弓削くん?」


「さっき、坂本さんたちがボス部屋に入ったけど、2組の人はキャリー中なんだよな?」

「そうだけど?」


「それって、坂本さんたちはペアでボスを倒せるってことかな?」

「まあ、そーなるよねー」


「どうしたんだよ、弓削?」


「いや、鹿島。ちゃんと考えろよ。門限破りになるかもしれないんだから」

「は? 門限? なんで?」


 私と弓削の会話に割り込んできた鹿島が弓削に対して首を傾げています。そこに月城も近づいてきました。


「どういうことだ、弓削?」


「平坂さんのクランは、もうペア戦闘ができるんだろう? そうすると、おれたちのボス戦の順番は最後だから、門限に間に合わない可能性がある。分からないか?」


「……いや、待て。……確かに、ギリギリ、ぐらいか?」

「ギリギリなら大丈夫だろ? ボス戦のあとは転移だし?」


「そうじゃないだろう、鹿島? ギリギリで間に合わなかったら、門限破りは2日間のダン禁だぞ?」


「いや、そうだけど……」


「かといって、今から戻っても、たぶん門限には間に合わない」


「そりゃ……あー、マジ? 無理だな、確かに……ボス部屋がリポップしたんなら、3層も戻ってるか……」


 腕時計を確認した鹿島が顔を歪めました。


 そうなのです。今から最短ルートを戻ったとしても、19時の寮の門限には間に合わないでしょう。3層で稼ごうとこの時間まで粘っていたのですから。もし走ったとしても、ギリギリです。それに走るダンジョンアタックは慣れてないと罠を踏みかねません。たとえ、このダンジョンの罠が色塗りされていても、です。


 そもそもダンジョンでは走るなとしつこく教わってきたのが私たちです。走って戻るなど、考えられないでしょう。


「……どっちにしても、ギリギリ間に合うように、転移してから走るしかない」


「それがクランリーダーの判断か、月城?」


 弓削が目を細めて月城をにらみます。月城がクランリーダーですか。実力的にはそうなるのでしょうね。パーティーリーダーとは兼任していないところは面白い考え方です。


「……それしかないだろ?」

「なら、おれたちの順番を先に回してほしい」


「は? いや、それは……」


「クランリーダーの判断で門限破りの危険をおれたちのパーティーに押し付けるのか?」

「う……」


「どうなんだ?」

「ちょっと! そんならあたしらも先がいいんだけど?」


 叶屋も加わって見事に揉めています。新しくクランを組んだばかりで、この人たちは信頼関係を積み重ねてきた訳ではありません。そして、叶屋や月城はかなり自己中心的です。まあ、これは外村の狙い通りとも言えます。よく考え抜いた作戦です。


 そもそも、叶屋たちは弓削たちを育成して、その後、附中ダン科の4人で組みました。鹿島たちのように、弓削たちの育成に手を抜いた訳ではありませんけれど、育成終了後はあっさりと弓削たちに別れを告げたそうですから、弓削たちからしてみれば、世話にはなったけれど結局は捨てられたような印象だと思います。


 また、叶屋個人は矢崎に対する月城たちの一件で、これまでに散々鹿島組を罵倒しています。教室ではもちろん、女子寮でも、です。


 この人たちに加えて、推薦男子でのクランということですけれど、互いの間に溝ばかりで、いつ崩壊してもおかしくないクランです。


 今の様子を見ているとできそうもないとは思います。それでも、正しくクラン運営をされてしまうと、本当に追いつかれてしまう可能性があります。ただでさえ、後追いをする者は真似をするだけですから労力が少ないのです。早めに潰して、クランとしての動きを遅らせることが私たちにとっても重要です。


「女子寮の方が男子寮よりも遠いんだからさ、あたしらを先にしてよ?」

「いや、おれたちのパーティーにも会田がいるだろ?」


「そっちはあさみん一人じゃん? あたしらは女子二人なんだよ?」

「どっちにしろ女子寮までの距離は変わんねーだろ」


「おれたちにも三隅がいる。なら、女子4人で組んで先に行かせられないか?」


「弓削くん、そういう急造パーティーであれとのボス戦がこなせると思ってんの? ダンジョン、ナメてない?」


「……だが、そうしないと女子寮の門限に間に合わない」


「だからってそんな危険なことはできないって! あ、それならさ、あさみんと三隅ちゃんは桃花に頼んでキャリーしてもらえばいいじゃん。それでそっちは男子3人でボス戦やれば? あたしらに女子だけの急造パーティーをさせようってんなら、自分らは3人でもできるよね? そもそも、こんな時間まで3層で粘ってたのは月城の指示でしょ?」


「それは、そうなんだが……平坂、キャリーを頼めるか?」


 月城たちの視線が私の方に向きました。答えは当然――。


「この前までと同じで、ひとり、3層魔石15個ならいいよ?」


「なっ……いや、おれたち、門限が……」


 そんなことを口走ったのは鹿島です。


「は? それはそっちの都合で、あたしらには関係ないっしょ?」


 冷たく切り返すのは外村。

 月城たちと私たちのにらみ合いになります。


「……何? 鹿島、アンタ? ボス戦の順番、守らないつもり? そういうつもりなら、先生に報告するけど?」


「そりゃねぇだろ……」


「いや、それはない……ただ、門限破りは厳しい。だから、今回だけは助けると思って、代償なしでキャリーをしてくれないか?」


 鹿島ではなく、月城がルール違反はしないと宣言しました。まあ、当然です。ダンジョンでは証拠は残らないとはいえ、ここにはお互い、たくさんの味方がいます。それに、そちら側は一枚岩ではなさそうですから。


 だからといって、代償なしなどというのは理解不能です。


「モモっちが言ったっしょ? ひとり3層魔石15個。なんなら、急な頼みなんだから予定外ってことでもっと増やしてもいいくらいなんだけど? さっきの話だとそっちは3層、いっぱい戦ってきたみたいだし?」


「それは、おれらの魔石を増やすためで……」


「だからあたしらに無償でキャリーしろって? 意味わかんないっしょ? なんでそっちの魔石を増やすためにあたしらがキャリーすんのさ? 馬鹿にしてんの?」


 そこで、ボス部屋がリポップしました。


「平坂、外村。すまないが先に行くから、あと、頼んだ。鹿島、月城、平坂たちに無理は言うなよ?」


「気をつけてね」


 18時9分。私の一言に飯干が軽く手を上げて応え、2組からの新メンバーの二人と、2組のクラン外キャリーの一人を連れてボス部屋へと入りました。


 一瞬で弓削の表情が変わりました。どうやら気づいたようです。転科首席の弓削は本当になかなか優秀なようです。頭の回転が早いですね。月城よりも弓削の方がリーダー向きなのではないでしょうか。


「……平坂さん、外村さん。おれたち4人のキャリーを頼みたい」

「おい、弓削⁉」


「3層魔石15個、4人分で60個だけど、大丈夫?」


「いや、足りないな。明日、足りない分を……」


「いや、後払いはダメっしょ」


「……なら、1層と2層の魔石でなんとか頼みたい」


「1層なら6個、2層なら3個で、3層1個分。100円増し」


「……わかった。それで」


「おい、弓削、それは流石に……もうちょっと交渉してから……」


 弓削が三隅から魔石を受け取って、それを外村に差し出します。足りないということは、今日集めた3層魔石は全てあきらめたということです。外村がその魔石を確認します。おそらく、1層や2層も含めて、弓削たちが今日集めた魔石のほとんどを差し出したはずです。先輩方を頼るカツアゲキャリーに近い状態でしょう。


「弓削ぇー、勝手なことすんなよ?」


「鹿島、よく考えろ? 門限破りのダン禁は次の日から二日間だぞ? しかも木曜の振休がダン禁になる。ボス部屋の渋滞が避けられる日にダン禁とか、そっちの方が大損だ。で、おれたちのキャリー分の魔石はクランで補償してくれ、月城」


「待て、弓削。それは簡単には認められない」


「門限破りよりマシだろう? ダン禁になったら2日分の魔石を補償してくれるのか? それがダメならおれたちはクランを抜けるぞ」

「あ、いや……」


「ちゃんと見てたか? さっき、飯干のやつ、2組を3人連れて入ったんだぞ?」

「え……?」


「ペアどころか、ソロだ。飯干がボス戦をソロでできるなら、他にもまだボス戦のソロができる人は平坂さんのクランにはいるはずだろう? おれたちの順番が最後なら門限破りは確実だ。さっきから月城は順番を変えるつもりはないみたいだしな。つまり現状でできることは、門限破りのダン禁で2日分の魔石がなくなるか、門限を守るためにキャリーしてもらって1日分の魔石で済ませるか、だ。おれが間違ってるって言えるか?」


「あ……」


「おー、弓削くんって、なかなか鋭いねぇ~。あ、魔石、確認したし、三條場くんのパーティーで弓削くんたちの4人、二人ずつキャリーするから。門限はこれで余裕っしょ」


 魔石を奪い取った外村がいい笑顔を弓削に向けました。月城クランは、結成後間もなく崩壊の危機を迎えたようです。外村の笑顔も納得です。クラン全体の利益よりも、自分の利益に未練がある月城ではクラン活動を正常に動かしていくことは難しいでしょう。


 そもそも、単に4つのパーティーを集めただけであって、クランという存在とはかけ離れたものでしかないのでしょうけれど……。






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― 新着の感想 ―
[良い点] こんなバカやってるから鈴木くんに一生追い付けないって、いつ気付けるんでしょうかねぇ…(嘲笑
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