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RDW+RTA ~リアルダンジョンズワールド プラス リアルタイムアタック~  作者: 相生蒼尉
第4章 その2『RDW+RTA +KAG(M―SIM) ~鈴木の経営ゲー(マネジメントシミュレーション)~』

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125 鳳凰暦2020年6月21日 日曜日 国立ヨモツ大学附属高等学校 学校祭2日目



 3年生の私――下北啼胤にとっては最後の学校祭。同時に生徒会長としての初めての学校祭。ヨモ高生としては3度目の学校祭。今回は、新イベントの開催という目玉を用意して、例年とは異なる学校祭を成功させたい、そう本気で考えていた。






 新イベントの小鬼ダンジョンタイムアタックは参加希望パーティー多数で、出場パーティーは抽選となり、学校祭前日の金曜日の昼休みに出場者抽選イベントを体育館で開催した。


 鈴木くんに頼んだ以上は、抽選をなんとかしなければならず、出場パーティーが3年生だけにならないように、各学年の最低限の枠を用意することにした。

 1年生で申し込めるパーティーは『走る除け者たちの熱狂』の中にしかいないから、申し込んだ時点で確定だ。堂々とその枠を用意しておいたので、裏取引のようなことにはなっていない。ただ、釘崎先輩には頼ってしまったのだけれど……。


 鈴木くんに対する、出場を依頼したという責任は果たせたのだけれど、同級生である3年生に対しては裏切り行為だったかもしれない。それはもう、色々な意味で。本当に申し訳ない。


 新イベントでは、申し込みの段階で希望する優勝賞品を一人ひとつ、犬ダンボスドロップ武器の中から選択して記入してもらい、優勝パーティーの4人には、2日目の15時半からの表彰式で手渡すことになっていた。予算はガッツリ確保していたのだ。会計の吉原くんのその時の顔は……忘れよう……彼のためにも……。


 賞品となる武器の準備、小鬼ダン入場ゲートの制限解除、ゲートの入退場記録による正確なアタックタイムの確認、出場者の不正監視などで、ギルドとの連携がとても重要になり、ギルドの釘崎先輩にはとてもお世話になった。

 そのせいで忙しくなった釘崎先輩は「卒業しても学校祭に関われるとは思ってなかったから楽しいよ」と笑って許してくれた。本当にいい先輩だ。私も、こうなりたい。


 そして、このイベントは、タイムアタックと名付けているが、実は単純な時間勝負ではない。


 クリアタイム順位で上位から、1位15000PT、2位10000PTというようにポイントを与え、アタック中に獲得した魔石等の換金額と順位ポイントの合計で優勝を決める形にした。


 ボスからの武器ドロップなどによる逆転――バスタードソードがドロップしたら3万円なのでかなり換金額は有利――という運の要素も取り入れたのだ。

 そういうものはほとんどドロップしないので、まさに運勝負だと言われてしまえば、そこは否定できないのだけれど、時間だけの勝負よりも面白味は出るはずだ。


 また、最短距離で得られる最低魔石数を下回ったら失格になる。最低魔石数は、ゴブ22、ゴメイ26、ソード18、アーチ9、ボス1だ。

 ただし、魔石やその他のドロップについては、学校祭のダン禁期間の特例入場になるため、出場者の成果とはならず、学校の物となる。生徒会決算の臨時収入として還元される予定だ。

 まあ、言ってしまえば、優勝パーティーへの豪華賞品の代金の一部になるのだけれど。会計の吉原くんの顔が少しでも……マシになることを祈ろう。


 アタックタイムはパーティーメンバーの中で最初に入った人のゲート通過時刻から、最後に出た人のゲート通過時刻で計算する。






 1日目の3年生パーティーや2年生パーティーは、だいたい1時間15分前後にクリアタイムが集中して、僅差だった。そういう点では面白かった。わずか1秒差で3つのパーティーが並んだ時は、思わずため息が出た。


 だが、ボス戦でバスタードソードがドロップした3年2組のパーティーが、その3万円という換金額でクリアタイム順位での不利を逆転していた。

 小鬼ダンをそろって出てくる時に、これでもかとボスドロップのバスタードソードを掲げてアピールしていたのは印象的だった。


 獲得魔石数は武器ドロップと違って周囲には見えにくいので、表彰の時まで優勝パーティーがどれかはわからないようにできているが、残りの出場パーティーがバスタードソードをドロップさせない限り、このパーティーの優勝は揺るがないだろう。強運だ。


 ある意味では、出てきた時のアピールは優勝宣言のようなものかもしれない。


 ……ただし、正直なところ、この新イベントは盛り上がりには欠けた。


 私は鈴木くんが事前に言っていたことを学校祭の最中に理解した。


 このイベントは、ギルド関係者や、大学の攻略研究関係者、どこかのクランのスカウトなど、ダンジョン玄人の注目は集めたが、一般の来場者は特に興味を示さなかった。


 武闘会の方が圧倒的に人気で、訓練場の観覧席には多くの来場者が集まった。毎年、人気があることも無関係ではないのだけれど、それだけではない。

 新イベントという冠まである今年のタイムアタックが不人気なのは、武闘会に来場者を奪われている訳ではないのだ。


 理由は簡単だ。タイムアタックをしている姿が見えないから。

 なぜ私はこのことに気づかなかったのだろうか。鈴木くんは構想段階で気づいていたのに。あれほど攻略情報の奪取で追い詰められたというのに。

 そもそもダンジョン内は、録音、録画、通信などができない空間なのだという、アタッカーの常識が完全に頭から抜け落ちていた。

 タイムアタックをしてみたら面白そう、という考えに夢中になり、きっと面白いと思い込み、知っていて当然の基本を忘れていたとは本当に情けない。


 イベント会場となる小鬼ダン前広場に設置されたテントと臨時放送設備の前が盛り上がるのはだいたい1時間半に1度だけ、出場したパーティーのクリアタイムが放送されるその瞬間だけ。

 しかも、その場には、コアなダンジョン玄人と、そのパーティーメンバーの親しい友人ぐらいしかいない。小鬼ダン前の広場が元々かなり広いことによって、その寂しさは倍増していると言えた。


 武闘会の会場となっている訓練場の観覧席には、2年や3年の食べ物系の模擬店からの移動販売の売り子の声が響いているというのに、小鬼ダン前には、本当に関係者ぐらいしかいないのだ。

 せめて3年生のクラスには売り子を派遣してもらえるように交渉しておくべきだった。おそらく、売れないからという理由で断られただろうけれど。


 出場者とその関係者は楽しみ、ダンジョン玄人がどのように攻略するべきか意見を戦わせているが、私の実感としては、このイベントは失敗だった。悔しかった。






 さらに、これは私にとっては予想通りだったが、学校祭のメインイベントである武闘会ではベスト4に3年生が一人も残れないという大惨事が発生し、多くの3年生が意気消沈した。


 ここで注目された選手と、そのパーティーメンバーが有名クランから勧誘されることも多いので、武闘会での活躍は3年生にとっては重要なのだ。

 本選に出場するだけでも中堅クランから勧誘されるので、ダンジョンアタッカーを目指すのなら実質的な就職活動でもある。だから、3年生はクラスでの予選も行われているのだ。


 学校祭そのものは来場者による例年通りの盛り上がりを維持していたものの、3年生のテンションは下降気味だった。もちろん、武闘会そのものは、例年通りか、例年以上に盛り上がっていたという。


 特に、ベスト4のうち3人が1年生の女子だったことが、その盛り上がりを別の意味で支えていたと思う。


 中でも、濃紺の三つ編みお下げをふたつ揺らした1年推薦首席の美少女剣士の人気は凄かった。副会長たちが編集した閉会式のエンディング映像でもこの子がかなり使われていた。あんなに強くて、あんなに可愛いとか、許されていいのだろうか。八百万の神々は時々、贔屓が過ぎる。


 ただ、「負けた連中に、推しに負けたのなら仕方がないと、せめてそのくらいの言い訳はさせてやりたい。だから、あの子をたくさん使ったんだ」という映像制作の責任者である副会長の発言はどうかと思う。それこそ言い訳なのではないかしら? そんな副会長を白い目で見ていたのは私だけではないはずだ。






 今日の準決勝では、大人気の美少女剣士も敗北した。


 酒田さんに上段からの打ち下ろしをぎりぎりで避けられて、鳩尾をショートソードで突き刺されて彼女の敗北が……酒田さんの勝利が、審判の先生によって宣告されてしまった時には、観覧席から大きな悲鳴が小鬼ダン前の広場まで聞こえてきたほどだ。


 私は訓練場から聞こえてくる大きな嘆きの声の響きに驚いて、後で武闘会の方にいた人たちに確認したら、その場面の出来事だったと聞いたので、直接その瞬間を見た訳ではないのだけれど。


 3年生の男子の一部が、やけくそで彼女のファンクラブを作ろうとしているという話もあるらしい……もちろん、非公認で……。


 中学では剣道で全国トップクラスだったという彼女にとっては、おそらく、酒田さんの鳩尾を狙った飛び込みでの突きが完全に想定外の攻撃だったのだろう。初見殺しというものかもしれない。


 もちろん、酒田さんの動体視力とスピードも勝因だ。


 武闘会担当の真下さんはその酒田さんの攻撃について「あれって、夫の浮気に気づいて問い詰めたら逆ギレされて~、それで感情が爆発して妻が突然包丁で夫を突き刺した~、みたいな感じでしたよ~」と、分かるような、分からないような説明をしてくれた。






 学校祭の1日目を終えた後、せめてクラスの出し物の来場者アンケートによる人気投票では勝ちたい、どこのクラスでもいいから3年の4クラスのどこかが勝ってほしい、そういう話が昨日の夕食やお風呂での3年の話題だった。

 新イベントのタイムアタックについては、私以外の3年生は勝利を確信していたので、そこまで話題にならなかった。

 それはとても、3年生として自然な思いだったと、私は感じていた。その分、みんなを裏切っているようで、私の心は晴れなかった。






 そして、2日目の学校祭のクライマックス。


 体育館のステージでの表彰式の現場で、私は無理に笑顔を作っていた。立場上、そうせざるを得なかった。


 武闘会のような全ての人の前で結果がわかるものは誰もが知るところだが、生徒会長である私には、武闘会以外の、全ての結果が既に目の前にあるのだ。

 かなり努力しないと笑顔が保てないくらいには、個人的には好ましくない結果だった。絶対にその気持ちを……その本音を……口には出せないのだけれど。


 体育館のフロアでどうなるかと期待している表情の生徒たちに、ステージ上に立つ私のこの気持ちはきっとわからない。それどころか、中には私のことが羨ましいという勘違いをしている人もいるだろう。私としては、代われるものなら今すぐ代わってほしいくらいだ。






 最初に行われる3年の研究発表の優秀賞と最優秀賞のプレゼンターはヨモ大のダンジョン学部の学部長だ。


 これは基本的に3年だけなので、そこに立つ3年も、フロアで見ている3年も誇らしい気持ちになれる。これはいい。問題ない。これがあって良かった。ありがたい。


 むしろ今年はこれを最後にすれば良かった。計画段階でこうなると分かっていれば……。






 次の、武闘会の表彰は校長先生がプレゼンターだ。


 毎年、ここは3年が胸を張る場面なのだが、今年は、違う。3位には2年首席の神谷亮くんと、1年1組、推薦首席だった設楽真鈴さん。非公認のファンクラブは本当にできてしまったのかしら?


 準優勝は1年4組の酒田あぶみさん。よく知っている。


 そして、優勝は1年4組の岡山広子さん。もちろん、よく知っている。それだけ強いということも含めて。


 目の前で結果が突き付けられた訓練場でもそうだったらしいのだが、表彰式の今もまた、3年の表情には陰りがあった。ある意味ではこの結果が予想通りだった私も、やはり心の中では落ち込んでしまったのだから、それは仕方がないことなのだろう。


 3年生の一部がやけくそで設楽真鈴さんのファンクラブを作ろうとするのも、仕方がないのかもしれない。全ての結果を知った今なら、私も、ほんの少しだけであれば共感できそうだ。


 可愛いあの子に負けたのなら、それでいいのだ、と……。


 ただ、生徒会副会長がファンクラブ会長を名乗るのは遠慮してほしい……エンディング映像にたくさん彼女を使ったのは完全にただの私利私欲だったのでは……。






 続いて、新イベントの小鬼ダンジョンタイムアタックの表彰は、生徒会長の私がプレゼンターだ。


 発表は上位3位だが、ステージ上には1位のパーティーだけが上がり、賞品の犬ダンボスドロップ武器を一人ひとつずつ、贈呈する。


 3位に3年1組のパーティーの名前が出て、おおっと3年の集団が盛り上がった。


 続いて、3年2組のパーティーの名前が出た瞬間、おおっ、という声と、ええっ? という声が混ざった。


 そう、バスタードソードがドロップしたことを知っている者にとっては疑問がある順位だ。


「優勝は……クリアタイム57分38秒、換金額10万5300円、合計獲得ポイント12万とんで300ポイント……1年3組、伊勢五十鈴さん、宮島紅葉さん、那智水跳さん、端島住さんのパーティーです!」


 体育館のフロアはざわざわと話し声が溢れ、ステージに上がってきた4人はなんだか申し訳なさそうにしていて、プレゼンターの私は気合で貼り付けた氷の微笑だ。クライマックスだというのに盛り上がりに欠けている。欠け過ぎている。


 1年が出場を申し込んだ時点で、出場パーティー抽選会でもいろいろあったのだ。

 参加条件のひとつが外ダンへの進出だから、小鬼ダンのボス魔石50個を納品済みの上、既に犬ダンへ入っていなければならない。この時期の1年では一般的には有り得ない。


 ギルド職員の釘崎先輩が保証してくれて、他の出場申込者がようやく黙ったという経緯がある。2年や3年の中には生徒会役員だった釘崎先輩のことを知っている者も多い。その保証がなかったらどうなっていたことか。


 そして、今回のこの結果もギルドの不正監視で保証された正当なものだ。


 だが、同じクランメンバーの私にはわかる。

 これは鈴木くんに出場をお願いした私が招いた惨事なのだと。豚ダンで走り回ってオークを倒し続けるこの子たちに勝てる3年など、いないのだということも。

 私はどうして、鈴木くんに出場してほしいなどと言ってしまったのだろう。時間を戻せるのであれば今すぐ戻したい。これは私の視野の狭さが招いたことなのだ。

 あの時は、鈴木くんなら、タイムアタックとはこうだ、という姿を見せてくれると思っていて……それ以外は深く考えていなかったのだから……。


 伊勢さんたちのパーティーは、バスタードソードなどのその他のドロップもなく魔石だけで10万円超えの換金額を叩き出した。魔石だけで他の参加パーティーの4倍以上の成果だったのだ。

 それは、実質的に4人がそれぞれ最短ルート以外のルートでの、走るソロアタックをしていたからだと考えられる。しかも、ひとつ500円の3層魔石が多くなるルートだろう。

 ボス魔石だけで3つあった。おそらくボス戦は那智さんと端島さんだけがペアで挑み、伊勢さんと宮島さんはソロで挑んだのだと思う。

 実力的には那智さんと端島さんもソロで倒せるはずなのだけれど、あの二人は小鬼ダンボスのソロ討伐の経験がないから、それで避けたのか、タイムを考えてペアで挑んだのか、そのどちらかだろう。


 それはこのイベントを構想した私の……私たちの想定外のアタック方法だった。鈴木くんは常識外だというランナーズの常識を忘れていた私の責任だと思う。


 2度のボス戦のリポップ待ちとなる10分間も含めて1時間以内にクリアしているのだから、クリアタイムだけでもう明らかに格が違う。単純なアタックタイムだけならもっと早くクリアできたのだろう。

 タイムアタック担当に割り当てられた学級代表のうち、ボス魔石が3つあったことを知っている人には全員、一応、口止めはした。それでもいつかは漏れるかもしれないけれど。その中に1年生がいなかったのは不幸中の幸いとも言える。


 トドメに、この4人が事前に申し込んだ賞品は、犬ダンボスドロップ武器で最も高価な30万円のハルバードだ。4人とも、同じ。合計で120万円。会計の吉原くんがため息を吐いた姿が忘れられない……。


 唯一の救いは、少なくともこの4人が集めた魔石の換金分となる約10万円が臨時収入として生徒会会計に組み込まれて、賞品の代金の弁済につながることくらいだろうか……ただ、それも含めたこの新イベントのタイムアタックでの全ての魔石とバスタードソードの換金額の全額でも、賞品の代金の半分にも届かないのだけれど……。






 残るは来場者アンケートによる各クラスの出し物の人気投票だけとなった。プレゼンターは後援会会長が務める。


 今となっては、3年はせめてこれだけは3年が、と期待している。

 今年の学校祭で3年4組が出した『犬ダン迷路シミュレータ』はヨモ大ダンジョン学部の攻略研究科が100万円で買い取ることが決まっている目玉の出し物だ。期待するのも当然だ。


 3位の発表で3年1組のフルーツクレープの名前が出た時は歓声が上がった。何種類ものフルーツの中から3つ選んで注文できるという種類の多さと、クレープというシンプルなスイーツが人気だった。


 しかし、2位の発表で3年4組の『犬ダン迷路シミュレータ』の名前が出た瞬間、3年の歓声は悲鳴に変わった。あれで1位になれないのなら、どうやったら1位になれるのか、と。


 ……単純に、1度に4人しか体験できず、一人あたりの時間もかかり、行列と待ち時間が長過ぎたため、アンケートではそこまで突き抜けた人気が出なかったのだ。


 実は、アンケートの自由記述欄では『犬ダン迷路シミュレータ』の行列に対する不満が一番多かった。やりたいことができないと逆に不満を貯め込むものだ。その待ち時間だけでなく、通行の邪魔だったというのも大きい。


 そして、アンケートでの1位は、1年3組の『斬られ屋』だった……。


 これは、来場者の満足度がとてつもなく高かった。


 自由記述欄では、子どもが楽しそうだった、という保護者の声。

 ストレスの発散になった、という大人の声。

 やはりヨモ大附属の生徒は強い、という感嘆の声。

 待ち時間も中の様子が見えてそれも楽しかったし、待ち時間がそもそもあんまりないのがいい、という、とある別の出し物への隠れた不満の声。VRシステムの中が外から見えるはずがないというのに……。


 私はこの結果を知った時、シンプルイズベスト、という言葉が頭に浮かんだ。


 しかし、ステージ上で表彰された1年3組の学級代表の大津くんの表情がものすごく微妙だったことも、私の心に影を落とした。


 せっかく表彰されるのだから、せめてもっとにこやかに笑っていてほしいものである。表彰されなかった3年生の気持ちも考えてくれたらいいのに……。






 こうして、私たち3年にとっては屈辱に塗れた最後の学校祭は終わった。いつか、これも、いい思い出だったと笑える日がくると信じたい。今は、無理……。


 閉式後、ギルドの釘崎先輩のところへ御礼を伝えに行くと、ついさっき伊勢さんたちが賞品のハルバードを換金していたとため息混じりに釘崎先輩から教えられて、私はギルドの受付ブースの中でがくりと膝をついた。真のトドメはこれだった。


 確かに、地獄ダン武器を使っているあの子たちに、犬ダンボスドロップ武器は不要だろう。しかし、流石にこれは、酷いと思う。


 私は鈴木くんが苦手だから、直接は何も言えないけれど……。


 まさか、ダン禁の学校祭の日に、イベントの賞品を換金して稼ぐなんて! あなたは鬼なの? それとも悪魔なの? 鈴木くん⁉






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― 新着の感想 ―
鈴木くんはダンジョンジャン鬼ー
[良い点] 視野狭窄が不味いものだと実例を出して示してくれている。 一瞬ビジネス講座の駄目な例としてのシチュエーションを読んでいるのかと錯覚したw [気になる点] シミュレータに外周通路の情報があれば…
[良い点] 慈悲は無い( ^ω^) 最後の止めまでついて、お後がよろしいようで。
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