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RDW+RTA ~リアルダンジョンズワールド プラス リアルタイムアタック~  作者: 相生蒼尉
第4章 その2『RDW+RTA +KAG(M―SIM) ~鈴木の経営ゲー(マネジメントシミュレーション)~』

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115 鳳凰暦2020年6月13日 土曜日午後 国立ヨモツ大学附属高等学校・中学校内ダンジョンアタッカーズギルド出張所3階第3ミーティングルーム

リアリアGW期間毎日更新実施中(~5/6まで。更新時間18時)



 はぁ、というため息が聞こえた方を見た私――浦上姫乃は、そこにいた外村と目が合った。つい、すぐに目をそらしてしまう。


「何、浦上? フツー、そんな感じで目をそらす? ないっしょ? そーゆー態度ってないっしょ?」


 外村の口調が尖ってしまった。失敗だった。


 ……同じパーティーの時にいろいろとやり込められたトラウマのせいか、どうしても、外村に対する苦手意識が抜けない。スタミナ切れにさせられた上で色々と罵倒されたのだから、それも仕方がないのだと思いたい。

 いろいろと言いたいことはあるが、外村がみんなのために行動する人だということは、今では私も理解しているのだ。まあ、外村の場合は必ずしも、それだけではないのだが……。


「……ため息が、珍しいと思ったの。それだけ」

「そう? そんなことないっしょ? 何? あたしのため息、ウザかった? ねえ、ウザかった? そんなにウザかった?」

「トム、浦上さんに絡むのやめなさい。それ、悪いクセだから。今は間違いなくトムの方がウザいし。それより、何かあった?」


 平坂が外村を止めてくれた。助かった。


 まだクランミーティングが始まる前だ。メンバーは半分も集まってない。あのまま絡まれたら、かなり辛かったに違いない。


「さっき聞いたんだけどさ……2組の利尻のパーティー……2組のトップパーティーなんだけど、午前中にボス戦に挑んで、4人中3人がかなり酷い怪我。なんとかボスは倒せたみたいだけど、保健室に血だらけで入っていって、ヒールを受けたって。あたし、ここに来るまでにボス戦キャリーのお願い、3回も聞いたんだけど? あれ、予約のつもりっしょ。たぶん、利尻たちの噂がもう流れてるっしょ?」


「まあ、あの叫びを初めて聞いたら……そうなるだろうな……」

「またボスのキャリーかぁ……引き受けたくないというよりは、そればっかりはやってられないって感じかな」

「中には先輩に頼んだ子もいたみたいなんだけど、やっぱりその日の魔石全部って言われたって。あ、魔石以外のドロップも。あれば全部だってさ。伝統だけど」


「うわー、それは欲張り過ぎと思うなー」


 設楽が目を見開いてそう言った。


「設楽さんはそう言うけどね、先輩たちはもう外ダンで稼いでるから、小鬼ダンには用がないっていうか、稼げないっていうか。先生たちも先輩が小鬼ダンに入るの、嫌がるし。それと、後輩でもやっぱり追いつかれたくないってのもあるっしょ。犬ダンだと小鬼ダンの倍ぐらいは簡単に稼げるみたいなんだよねー。そりゃ、小鬼ダンのボス戦キャリーなんか、魔石の総取りでもしないと、やってらんないっしょ」


「本気でボス戦に進むつもりなら、それくらいの支払いは必要なんだよ、本当は。今年は、私たちがかなり親切に設定してるのかもね。別に安売りをしてる訳じゃないんだけど」


「そうなんだ……」

「先輩たちに頼むのは、カツアゲキャリーって言われてるな。ある意味で、ウチの学校の伝統だ」

「カツアゲとか嫌な伝統だな、おい」

「キャリーなしで大怪我するよりいいだろ?」

「確かにそーかも……」


 設楽が素直に納得する。


 しかし、本当のところはどうだろうか。


 例えば私たちの小鬼ダンへのアタックは、土日なら一人2万円ぐらい、つまり魔石全部と言われたら6万円だ。設楽の言う通り、欲張り過ぎではないだろうか。いえ、最低限の最短コースなら、もっと少ないか……。


「まあ、ボス戦で保健室行きがこれで2回目だから、無理するパーティーは減るはずだし」

「もうキャリーなしで入らないんじゃないか? 馬鹿じゃないんだからさ」


「正しく判断して無理しない分、お安くキャリーできそーなあたしたちに頼もうとするって悪循環が、ね……」

「あー、そういうことなんだな。まあ、そーなるよな」


「別に安くはないんだが、じっくり比較検討する気もないんだろうな」

「先輩たちのカツアゲキャリーは、1回でパーメンの4人、一度にキャリーするはずだからな。おれたちの一人ずつのキャリーとは違う」


「……その日の魔石とか全部で4人分の料金ってこと?」

「おれたちは一人1回で3層魔石15個、7500円分だろ? 最短でボス部屋なら2万ちょいで4人分だから、実際はおれたちの方が高いというカラクリ」

「自分たちの手元にドロップが残るから、それが完全にゼロになるよりもイメージ的に安く感じるだけ、だな」


「ボス部屋前に一人残して帰るから、帰りの分のドロップも考えると、こっちに払った分が安く思えるんだ」

「あー、なるほど。先輩たちのキャリーだと、そこも含めて奪われるような印象があるんだね……」

「実際にはキャリーされるとボス部屋から転移するから、そもそも手に入らない分なんだが」

「先輩たちだとキャリーしてもらえる曜日が限られるけど、おれたちの場合は毎日でもできるってところも大きいかもな。先輩が犬ダンに行く日にはキャリーとかしてもらえないし」


「……まあ、あたしらのキャリーが人気なのはともかくとして、実際、今は引き受けられないっしょ?」

「まあ、そうだな」

「そこをどうすんのって問題っしょ」

「あー、そうか」

「予約受付とか? それもキリがないけど……」


「……3層の魔石、換金せずに貯めておくように言うのは、どう?」


 私は思いついたことを言った。


 今、すぐには、ボス戦キャリーはできないが、いずれできるようになった時のために、準備しておいてもらう。3層魔石での支払いの準備を、だ。もちろん、そうすることで……。


「あ、それ、アリだね。納品数が減るし」


 ……外村がにやりと笑った。アリ、のポイントが、相手の納品が減ること、つまり成績が下がること、というのが外村らしくて、思わず微笑んだ。ため息よりもずっと、外村らしい。


 私もかなり、外村に毒されている気が、しないでも、ない。






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― 新着の感想 ―
[一言] 学校側の最終目的地が犬ダンで稼ぐヤツを沢山作ることだから仕方ないんだけど、鈴木がやってること見てしまってるからめちゃくちゃショボく見えるんだよなあ 鈴木さえ居なかったらすごく優秀でトップをひ…
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