31 鳳凰暦2020年4月17日 金曜日 放課後 小鬼ダンジョン1層
「くっそ、あっちぃ、ふっざけんな……」
ダンジョンの地面に、おれ――冴羽竜はのたうち回りながら、どうしようもないのに、恨み言が出てくる。
「なんでおれがこんな目に? マジでふざけんなよ? あいつゴブリンごと狙いやがったぞ? 絶対にわかっててやりやがった……」
避けられなかったマジックスキル。待ち構え、狙い澄ましていたのだから当然だ。
「中学出たばっか、それも公立出がなんでマジックスキル、しかもありゃ第三階位魔法だろうが。ありえねぇ。クソ……」
炎に焼かれながら走って逃げて、分かれ道で曲がってようやく炎から逃れた。
附中でゴブリンの魔石百個の納品を終えた連中でも、学べるのは主たる属性簡易魔法文字を一つだけ使う第一階位のスキルだ。水のライトヒールや風のライトシールドなど、簡単なものだけ。
「ぐぅ、死ぬこたぁねぇけど、保健室でヒールはかけてもらわねぇと……」
あいつがマジックスキルを使ったことは上に報告はするがそれを追及はできねぇ。なぜなら、ここには誰もいないはずだからな。あいつからすれば、知らなかった、で済む話だ。こっちは秘密を探ろうとしてたんだから、言えるはずがねぇ……。
「くそっ、絞め殺してやりてぇけど……」
おれは痛みをこらえて立ち上がり、逃げてきた通路を覗く。
「って、いねぇよ……してやられた……なんだあいつ、北モーニン共和国のスパイか……」
報告はするが、追及はできねぇ。当然、報復も認められねぇ。
「くっそ、泣き寝入りか……」
おれは悔しさに奥歯を噛みしめ、出口へとふらふらと歩き出した。
「高一のガキ二人の追跡にポーションいるとか、思う訳ねぇだろーが……」
調べれば痕跡とかもわかったかもしれないが、熱さと痛みでもうどうでもよかった。