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30 鳳凰暦2020年4月17日 金曜日 放課後 小鬼ダンジョン1層のとある落とし穴付近
いつもの場所で止まる。そして、ゴブリンたちに向けて、僕はマジックスキルの準備を始める。
「鈴木さん、ロープは?」
岡山さんがいつものやり方との違いを見て疑問を口にするが、僕はもうマジックスキルの準備に入ったので答えられない。
逆三角形の頂点に火、火、火、その中心に先に水、重ねるように風と、5つの簡易魔法文字を描く。
……ついてくるのは全部ゴブリンってことで。どうせ、この程度では死なないだろ? そういうレベルのはずだし。
僕の中のいろいろなムカつきを清算するためにも、ここはひとつ犠牲になってもらいたい。
「フレイムボンバー」
爆炎が通路全体を封鎖するように、前方のゴブリンへと向けて一気に駆け抜けていく。
僕はさっと岡山さんを抱き上げると、落とし穴のスイッチを踏んだ。
女の子一人を抱きかかえての着地は、かなり痛いが、ダメージは思ったよりも少ない。そのまま、隠し扉をくるりと回って、二人で隠し部屋へと消えた。これで、落とし穴は元通り。僕たちがどこに消えたかは、もう追えない。




