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RDW+RTA ~リアルダンジョンズワールド プラス リアルタイムアタック~  作者: 相生蒼尉
第4章 その2『RDW+RTA +KAG(M―SIM) ~鈴木の経営ゲー(マネジメントシミュレーション)~』

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87 鳳凰暦2020年6月4日 木曜日午後 国立ヨモツ大学附属高等学校校長室

※相生初商業化記念5日間連続1日3話更新祭り実施中!(5日目、最終日)

更新時間は6時、12時、18時です。読み飛ばしのないようご注意ください。



 わし――佐原秀樹は、目の前の、この高校生が、どう考えても高校生だとは思えなかった。民間企業の交渉担当だとしか思えん。本当に、鈴木はいったい何者なんだ?


 意気揚々とやってきたヨモ大の後藤教授は、換金した魔石の数から鈴木たちが犬ダンの外周通路に挑んでいることや、ギルドとの取引の記録から、ポーション類や高価な地獄ダンドロップの武器を用意して利用していることなど、鈴木がやっている攻略の一面を言い当てて、鈴木を攻めた。

 鈴木は収入ばかり前面に出しているが、実際には支出もかなりの額がある、と。それならこのメソッドの利益面は正しいとは言えないはずだ、と。


 だが、それに対して鈴木は……。


「そういう支出は『特進コース』の生徒が個人で負担すればいいし、それだけ稼げる仕組みです。学校の負担にはなりませんから、後藤教授の言ってることは的外れですね。『特進コース』では退学にさせずに、必要な物品を与えてそれは後払いにすればいいだけ。育成後はご覧の通り、十分に稼げるんです。全く問題ありません」


 ……と、学校ではなく生徒が個人で負担すると言い切ったのだ。大量のポーション類や200万前後の地獄ダンドロップの武器を、だ。あんなものを個人で負担させる気だったのか? こいつ、正気か?


「……そんなことができると思うのかね? 君は?」


「僕が今、実際にやってますよね? 先生が先程、それを指摘なさったのではないですか? それとも、この高校にも、ヨモツ大学にも、高校生の僕が用意できる程度の資金の準備ができないとでも?」


 そう言われて、後藤教授は黙らざるを得なかった。わしも同じだ。確かに、鈴木はそれを実行してしまっている。


 たかが高校生が一人で成し遂げていることを、ヨモ大やヨモ大附属が金銭的に負担できないなどと言えるはずがない。


 一度、後藤教授が勢いを失うと、そこからは鈴木の独壇場だった。


 実験対象者はダンジョン未経験者であること。


 初日はダンジョンへ入らず、スポーツテストを実施すること。


 このあたりは後藤教授が嬉しそうにうなずいた。攻略研究の教授だからな。わしは心の中でそんなに簡単に釣られてどうする、と思っとったが。

 どうやら鈴木はついでに自分の課題研究も済ませてしまうつもりらしい。

 こいつの感覚だと、億単位の取引であったとしても、ついでに何かができるレベルのものらしい。わしには到底、そういう感覚は理解できん。


 期間内で小鬼ダンジョン等のクリアができるようになること。


 サポートと一緒にクリアできて1億円以上2億円未満、実験対象者だけでクリアできたら2億円以上3億円未満、というように、鈴木は攻略情報をその実験での達成度によって買取価格を決めるつもりだった。

 このクリアはボス魔石50個という意味ではなく、小鬼ダンジョンのボス部屋でボスを倒して転移することだ。


 期間内に犬ダンジョンのクリアができたら3億円以上4億円未満、期間内に豚ダンジョンで一人あたり10個以上の魔石を1日で納品できれば4億円以上、そう決まった。

 このへんの金額はかなり鈴木が粘ったが、後藤教授も譲らなかった。金額は、限界があるので後藤教授も譲る訳にはいかんのだろう。


 また、実験対象者の拘束期間は16日間で、初日はスポーツテストのみ、6日間のダンジョンアタック、スポーツテストだけでダンジョンアタック禁止の休息日を挟んで、6日間のダンジョンアタック、15日目にスポーツテスト、16日目には大学からの聞き取り調査も加えた。


 後藤教授が求めた聞き取り調査に鈴木が難色を示すかと思ったが、鈴木は平然と受け入れた。


 鈴木に言わせれば今、この時点で契約を結ぶことは合意が済んでいるし、16日目の時点では既に最低額は決まっているのだから問題ないそうだ。


 わしにはもはやその考え方についていけん。


 しかし、実質的なアタック期間は12日間だけだ。本当に豚ダンまで進めるのか疑問が残る。いや、疑問が残るからこそ、高額の交渉になるのか……。


「……本当に君が、被験者となる実験対象者を集めるつもりなのかね? いや、事前にこちら側のスパイのような存在を抱え込みたくないというのは、鈴木くんの立場を考えると、もちろん理解できるのだけどね?」


 ……実際に、春の取引の時に冴羽を送り込んだ前科が後藤教授にはある。鈴木はそれに気づいていたはずだから、それをここで口に出すのは後藤教授もなかなか面の皮が厚い。この人も、わしには理解できんタイプかもしれん。


「僕が8人、対象者を見つけられなかったら、その時はヨモ大の学生から探して追加して下さい」


「……わかった。そうしよう」


 そう答えた後藤教授は、とても疲れているように見えた。少なくとも、今回の交渉開始前の意気揚々とした表情は欠片も残ってはいなかった。


 鈴木は高校生だが、高校生だと思って接してはならん。改めて、わしはそう心に刻んだ。だが、それは本当に、教師と生徒として……または、教師として……あってよい関係性なんだろうか? そんな疑問がわしの頭からは消えなかったのだった。






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