29 鳳凰暦2020年4月17日 金曜日 放課後 小鬼ダンジョン1層
今日の7時間目は全学年がそれぞれ学年集会で、各学年で起きている問題について考え、よりよい学年や学校にしていくための時間とされた。そして、この時間で話があったことについてより深く考えるためというよく分からない理由で、放課後は寮へと帰るよう指示が出た。地元の生徒も家に帰る。かなり強引だが、この理由だと裏で何をしてるかは想像も付かないだろうな。
もちろん、各学年で指導が必要な生徒は残され、個別の指導、または集団の指導を受けることになっている。3年生では退学者も出ることになった。加害者が退学だからといって被害者の傷がなくなるワケじゃねぇから、ケアはずっと続くだろう。
おれ――冴羽竜は学年集会の終わりに抜け出し、小鬼ダンジョンへと入った。ヨモ大の学長からの正式な依頼なので、仕方がねぇと思い込む。やりたくねぇから、だ。
足で簡易魔法文字を描き、スキル発動の準備をする。
「セグイーレ」
隠れて追跡するためのスキルだ。あまりやりたくはないが、もう、それも言うまい。
しばらく待って、鈴木と岡山が入場して、すぐに走り出した。最初の分かれ道を右に行くのが2層への近道だ。だから左に隠れていたら、二人がこっちへ曲がってきた。
焦ったが、見えないはず。そのはずなのに、走り去る鈴木がこっちを見た。そんな気がした。ゾクリと背筋が寒くなったが気のせいだと思い込むようにして、二人を追う。
走る二人は、ゴブリンとエンカウントしても戦わない。ていうか、それ、トレインじゃねぇか! こいつら何やってんだよ!
十匹以上のゴブリンが追うのをあきらめないスピードで走り続ける二人。おれはゴブリンに続いた。ゴブリンのお陰であいつらには気づかれないが、なんか複雑な気分だ。
ゴブリンと共に分かれ道を曲がる。すると、あいつらが止まっていた。あ、まずい。そう思ったが、それはもう遅かった――。




