40 鳳凰暦2020年5月17日 日曜日午前 豚ダンジョン
午前中で切り上げる予定だと鈴木くんが言っていたので、完全に油断していたあたし――高千穂美舞は、この2時間で受けた衝撃に打ちのめされていた。
ゴブリンはもう楽勝で、コボルトも6層格が相手でも問題ない。そういう自分の成長を感じ、乗り込んできたこの豚ダン。入口の洞窟を抜けると青空と草原が広がる、フィールド型のダンジョン。
初めてのフィールド型ダンジョンに興奮を隠せないメンバーたちに、鈴木くんが今日は2時間のアタックで終えると宣言した。最初の15分間で重要事項の確認をして、最後の15分間でこの2時間の成果を確認すると。
戦ってみると、オークは、ゴブリンやコボルトとは全く違った。大きさがあたしたちと同じくらいで、しかも太っていて、なかなか倒せない。たまに10回ぐらい攻撃してやっと、ということもあった。ゴブリンやコボルトよりも、はるかに硬かった。ポーションの消費も多くなった。
2つの班に分かれて、鈴木くんと岡山さんがそれぞれを導いてくれた。そこまではいつも通りだった。最初にあたしの班は岡山さんが戦ってくれて、すごくあっさりとオークを倒した。一人で2匹、あっという間だった。
次に3匹とエンカウントして、岡山さんが2匹、またあっさりと倒して、残った1匹にあたしと酒田さんと矢崎さんで挑んだ。
矢崎さんが矢を走りながら2本放ち、その痛みにオークが反応する。
そのまま近づいた矢崎さんはオークのモーニングスターを躱して背中側へと回り込み、オークが矢崎さんを追うように背中を見せると、あたしと酒田さんがそこへバックアタック。
背中を攻撃されて、今度はあたしたちを振り返ったオークに、矢崎さんがバックアタック。
これまでやってきた基本はきっちりとできた。でも、オークはなかなか倒せない。交互にバックアタックを繰り返して、繰り返して、やっとのことで倒した。
……あたしと岡山さんには、あんなに差があるの? それが私と岡山さんの、鈴木くんとの距離の差のように思えて……。
それからも1層の草原をうろうろと走って、オークを見つけては岡山さんが1匹に絞って、あたしたちで1匹のオークを頑張って倒す。
入口付近に戻った2時間後、鈴木くんと一緒だった五十鈴たちも同じような状況だったらしい。あっちもほとんどは鈴木くんが倒してた。
オークの魔石は72個で一人10個。1個7000円だから2時間で7万円だけど、これは、実際には鈴木くんと岡山さんの戦果だ。パーティーやクランの取り決めで均等に分けるのは常識だと理解していても、心は納得できない。
「……鈴木先生。ヒロちゃんとあたしの差って、どこにありますか? 今、10個、魔石を分けてもらったけど、このままだと納得できないですね。一秒でも早く、その差を埋めたい」
酒田さんが真剣な表情で鈴木くんに問いかける。鈴木くんはそれを平然と受け流す。
「何が違うか、わからないかな?」
「……実力差は元々あったと思うんですよね。でも、ここまでの差を小鬼ダンのゴブリンでも、昨日までの犬ダンのコボルトでも、感じませんでした。豚ダンだと、それが急に、すごく差があって。脳が受け付けないくらいですね」
「興味があるなら、外のギルドのショップに寄ってから帰るといいかも。そこでいろいろと考えて、最上さんなりの答えが出たら、また相談してほしい」
……外のって……ギルド平坂支部のショップ? 昨日も一昨日も換金で外のギルドには立ち寄ったけど、何か、あったの、あそこに?




