37 鳳凰暦2020年5月16日 土曜日夕刻 平坂駅前ファッションビル『フラットスロープ』7階レストラン街『sweets heaven fall』
なんだこれ。
すごいすごいすごいすごいすごい……。
私――矢崎絵美は、頭の中ですごいを連呼していた。
イメージしてたクレープと違って、お皿に盛られた高級感のあるヤツだった。
しかも……。
「これ、美味しい……」
「だよな? そうだよな? あー、あたしもついにこれを自腹で!」
私のつぶやきに反応したのは伊勢だ。
……確かに4月の魔石数だと、こんなところには、入れない。
伊勢は以前、このクレープを、落ち込んでた時に高千穂からごちそうになったという。流石は高千穂。私たちの影のリーダー。
あぶみと宮島の二人は、クレープだけではなく、ケーキも注文して、今、まさに頬張っている。あぶみは季節外れだがモンブランで、宮島はミルクレープだ。クレープとかなりカブってるが、宮島はそれでいいのだろうか?
「……あ」
「どうしたの、矢崎さん?」
高千穂が固まった私に気づいて声をかけてくれる。本当に、周囲をよく見てる。高千穂、すごい。
「昨日と、今日で、100万円……」
私がそう言うと、全員がその場で顔を見合わせた。
「やべぇ……改めて言われるとこれはもうダメだ……」
「あたしの中では今まさに熱狂が始まりそうかな……」
「……あたし、気づいちゃったんだけどね、あたしたち、7月の第2テストの後、みんな、上位になっちゃうんじゃないか、と思うんだよね……」
「鈴木くんは今回のテストはクラスの上位でって言ってたけど、次のテストについては、スタートダッシュの話しか、してなかったから……まさかと思うけど、クランメンバー全員をトップ10に入れるつもり、なの……?」
どう考えても、鈴木、すごい。
「鈴木先生からもう離れられないね……」
「うん。みんな、鈴木依存症」
鈴木と一緒だと、きっと、幸せになれる。




