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RDW+RTA ~リアルダンジョンズワールド プラス リアルタイムアタック~  作者: 相生蒼尉
第4章 その1『RDW+RTA +KAG(M―SIM) ~鈴木の経営ゲー(マネジメントシミュレーション)~』

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3 鳳凰暦2020年5月7日 木曜日夜 平坂家(分家)



 気持ちを落ち着けるために読んでいた『小説版ドキ☆ラブ』を私――平坂桃花はそっと閉じます。もうそろそろ眠る時間です。


 明日の7校時のLHRがかなり、精神的に負担になっているようです。学級代表は本当にストレス要因です。自分が情けなくなりますけれど、私はどうも、ストレス耐性が足りていないようです。


 4月に育成パーティーを決める時、その根回しでいろいろと苦しんだ記憶が蘇ります。あれも大きなストレス要因でした。こういう時、寮生だったのなら、根回しの時間も増えるのですけれど。


 あの時は、みなさんがそこまで勝手なことを言うのなら、私も少しくらい、自分勝手に動いてもいいでしょうと、そうやって行動した結果、いろいろと失敗してしまいました。


 それについてはもう解決しましたし、今ではよい経験だったと思えます。結果としては、かなり、最高の状態に近いパーティーが組めていると思います。私たちは。


 後は、そこに彼が加わって下さるのであれば、間違いなく、最高なのですけれど……今は、それを望める状況ではなさそうです……。


 今度のLHRは学校祭に向けて、決めなければならないことがあります。いっそ、学校祭などなければよいのに、とも思います。また、勝手なことを言い出す人がたくさんいることでしょう。


 とりあえず、確実に決めなければならないことは、クラスの出し物と武闘会の出場者3名です。1組なら、武闘会の出場者は黙っていてもどうにかなります。出たがる者がいますから。月城とか。


 クラスの出し物については、腹案として用意したトリックアート撮影会で、最終的に決着をつけたいと考えています。そして、こっそり、撮影当番の時間を彼と同じ時間にして、たっぷり彼を観察するのです。それくらいは許されると思います。


 外村が掴んでいる裏情報によると、男子数人がメイド喫茶を提案しようと企んでいるそうです。男子寮での根回しがあったことも確認済みです。


 それほどやりたいのであれば、いくらでもメイド服で女装すればよいのです。私たちにメイド服を着せようと企んで、男子の票を集めて多数決で押し切ろうとは……外村が裏情報を先に掴んでくれていなかったら、大変なことになっていました。


 学年全体では男女70人ずつで均等なのですけれど、1組は男子22人、女子13人と、完全に男子が多いクラスです。4組ではそれが男女逆になっています。


 基本的に、身体能力では男性が有利なのです。それは性差ですから、仕方がありませんけれど、そのせいで多数決に負けるというのは、納得ができません。


 もう、先に数人の男子は押さえました。私たちと同じクランである彼らが裏切ることはないでしょう。クランメンバーの女子たちからあれだけ冷たい視線を浴びたのです。メイド服へのこだわりなど捨て去ってしまったことでしょう。


 こういう時、クラン活動に挑戦して良かったと心から思います。使える駒となる男子がいるのはありがたいことです。正直なところ、普段はあまり役に立たないのです。こういう時くらいは活躍してほしいです。


 使えない上に余計なことを仕出かす人が多くて、本当に男子のほとんどは役に立ちませんから。


 思い出すとまた気持ちが荒れます。もう一度『小説版ドキ☆ラブ』を少しだけ読み直した方がいいでしょうか。就寝時間をこれ以上遅らせたくはないのですけれど。


 そういえば『らのべのんにゅうす☆』で『小説版ドキ☆ラブ』のライトスパイク先生が、続編となる『小説版ドキ☆ラブ2』を出すという話がありました。発売情報はしっかりと確認しておかなければなりません。最近、ダンジョンで忙しいのでうっかり忘れてしまいそうですから。


 今朝からはテスト週間に入りましたので、ダン禁になりましたし、テスト勉強は必要ですけれど、ダンジョンでの忙しさは緩和されました。また、設楽との朝ダンジョンもしばらくはお休みです。


 それはつまり、彼と登校できるチャンスが再びやってきた、と、そういうことなのです。かけがえのない彼の観察の機会です。


 ですから、私、今朝はどの時間にすべきか悩みに悩んで、さすがにテスト週間のダン禁で7時ということはないでしょうと、あのいつもの、私と彼にとって、いつもの、あの交差点で7時45分から、彼が通りかかる偶然を待ち続けました。ええ、偶然、です。約束はしておりませんから、偶然に頼る、それしかないのです。


 ……偶然だけあって、今回はその偶然が発生しませんでしたけれど。


 7時45分から8時15分まで30分間、待ち続け、平坂北中の中学生や、桃喰小の小学生にジロジロと見られながら、ずっと、ずっと耐えました。耐え続けました。


 それなのに、彼が通りかかるはずの偶然は起こりませんでした。おかしいです。彼が登校時、あの交差点を通る偶然は、彼が学校を休まない限り発生するはずなのです。あそこが彼の登校ルートであることは既に把握しています。


 せっかく話題も用意したというのに。今回は中世で活躍した『東条征世』です。『女将軍』と呼ばれた歴史上の名アタッカーです。今度こそ、素晴らしい人物に違いありません。


 ……私もわかってはいるのです。時間を間違えたのでしょう。私が。彼ではなく、私が。


 思い返せば、設楽が言っていたのです。公立中出身者は意外と登校するのが早いのだと。部活動の朝練でそれが体に染み付いているのだ、と。


 附中ダン科出身の私は、まだ、公立中の感覚がよくわかっておりませんでした。


 7時45分を選択したのが間違いでした。テスト週間は一週間しかありません。土日も含まれますので5日間です。これが終わればまた設楽との朝ダンが始まります。それまでの少ない機会に彼との登校を実現させなければなりません。


 彼と登校できれば、学級代表としてのストレスも綺麗に消え去る気がいたします。


 そして、設楽との約束がある火曜日以外の、テスト週間での彼との登校をなんとしても約束するのです。頑張るのです、桃花。あなたならできます。失われてしまった彼の観察時間を、せめてテスト週間だけでも、取り戻すのです。


 明日は7時半です。この時間なら確実でしょう。お手伝いの千代さんには既に早めの朝食を頼みました。


 嫌なことは忘れて、明日、朝から彼を近くで観察できることだけを考えて眠るとしましょう。


 ……そういえば、担任の冴羽先生の御髪が、ちょっと、アレになっていました。私、以前、神宮に向かって何かを願った記憶があるような気がします。アレ、私のせいでは、ありませんよ、ね?






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― 新着の感想 ―
[一言] ある意味願いが叶っておりますね。 禿げればいいという願いが。 それにしても、若禿だとこのはげーーーとか言われてしまいそうですな
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