20 鳳凰暦2020年4月14日 火曜日夜 国立ヨモツ大学附属高等学校1年職員室
おれ――冴羽竜と4組の伊集院先生、そして学年主任の佐原先生が、雑務を片付けながら、春川先生と烏丸先生が来るのを待っていた。
「なぁ、冴羽」
「なんだよ」
「気にならねぇか?」
「何が?」
「ゴブリンソードウォリアーの魔石百個の謎」
「……それは気になる」
「どうやったと思う?」
「わからん……」
「やめとけ、二人とも」
「いや、佐原先生、気になりませんか?」
「気にはなる。だが、実現不可能としか言えん。そして、それを知ってるヤツは、どう考えても、教えてくれるとは思えん。それを解明するには……いや、なんでもない」
「そこまで言われたら気になりますって」
「……価値がある攻略情報を知るには、金がかかる。あのがめつそうなヤツを相手するとなったら、いくら要求されることか。見て見ぬふりが一番だ」
佐原先生がそう言ったところで、春川先生と烏丸先生がやってきた。
「お待たせしました」
「どうもすみませんねぇ」
「いいえ。こちらこそ。遅い時間まですみません」
佐原先生が頭を下げ、おれと伊集院先生もそれに続く。
「それで、どうでした?」
「どうでしたも何も、聞かれてびっくりしてたわよ、あの子。まあ、当然よね。『そんなこと絶対にありえません! だって、わたしの片思いですから!』って叫んで、真っ赤になって、もうかわいいったらありゃしない。まるで『ドキ☆ラブ』のヒロインみたいだったわよ」
「あのマンガ、去年まで何度附中で不要物の持ち込み問題になったか……とりあえず、必ず避妊はするように指導しました。まあ、『そ、それ以前の問題です……ま、まだ告白もしてませんから……それに、わたしなんて、ぜ、全然相手にされてませんし……』って、真っ赤でしたよね、春川先生?」
「そうね、本当に、今どきあんな子がいるのねぇ……それにしても烏丸先生、モノマネ上手ね?」
「春川先生のさっきのもそっくりでしたよ」
「あー、つまり、無理矢理どうこうってことは、ないって、ことですね?」
「あれがあの子の演技なら、アカデミー賞も真っ青よ。国民栄誉賞がいるんじゃないかしら?」
「その賞はどっちも甲乙つけがたいな。比較できんよ。いや、ありがとうございました」
二人の女性の勢いにおれと伊集院先生はぽかんとしてた。
「そうすると、あの守銭奴くんの聞き取りだけか……今回と同じ方法なら、できるか……あとは校長や学長と相談がいるな……」
佐原先生だけは次を見据えているようだった。