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RDW+RTA ~リアルダンジョンズワールド プラス リアルタイムアタック~  作者: 相生蒼尉
第3章 前編 『RDW+RTA +SDTG(T―SIM) ~鈴木の育てゲー(育成シミュレーション)~』

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13 鳳凰暦2020年4月20日 月曜日夜 国立ヨモツ大学附属高等学校女子寮


 とんとんとん、と部屋のドアからノックの音が聞こえてきました。

 私――岡山広子は「はい」と返事をしながら、ドアを開けます。防犯という観点からはよろしくないかもしれませんが、ここは女子寮なので、基本、同級生か先輩の、しかも女性しかいないですから。


「岡山さん、話があるんだけど」

「さっきぶりだね、岡山さん。それと、話の後は一緒にお風呂もどうかな、と思ったんだよね」


 高千穂さんと酒田さんです。1年4組のクラスメイトで、今日の昼休みも、放課後も、寮に戻ってからの夕食も、一緒に過ごしました。

 それで改めて気づいたのですけれど、それまでわたし、ずっと一人だったのです……鈴木さんがいないところでは。


 お二人が、仲良くして下さるので、寮でも、とても、温かく、穏やかな気持ちになります。


 話というのは、ダンジョンでのことでしょう。

 夕食の時、酒田さんが「そういえば今日の岡山さんがやってたいちげ……」「酒田さん。それは後で」というように高千穂さんに会話を遮られ、ダンジョンでの攻略情報は秘密を守れる場所でしか話さないのだということを酒田さんは教えられていました。鈴木さんはそれを魔法契約までしてしまう人なのですが……。


「どうぞ、お入り下さい」


 私は二人を部屋の中へと招きました。初めての室内への来客です。


 先生がお二人、いらっしゃったことがありますけれど、あれは客というより、ある意味では尋問官でしたので。鈴木さんが驚くような濡れ衣を着せられていて、わたしは想像を絶する性被害を受けているようなお話でした。『ドキ☆ラブ』を超えるような、もう大人でないと買えない類のお話でした。先生方の尋問がうまくて、いろいろと言わなくてもよいようなことまで話したような気がしますが……。


 高千穂さんには椅子に座って頂き、酒田さんはわたしと並んでベッドに座って頂きました。飲み物などはないのでお出しできないのが残念です。今度、用意しておきましょう。


「……まず、今日はありがとう。本当に、助かった」

「うん、ありがとうね」


 二人がぺこりと頭を下げます。わたしは両手をふるふると振り、頭を上げてもらいます。


「元はと言えば、わたしがこの学校でのやり方をよく理解していなかったことが原因ですから」

「それも、あたしが早く説明すれば済んだことだし」

「高千穂さん、謝り合っても、ね? それよりも、もっと岡山さんと仲良くなりたいから、ね? だから、岡山さん、ヒロちゃんって、呼んでもいい?」

「は、はいぃ。その、どうぞ……」

「じゃ、これからもよろしくね、ヒロちゃん」

「は、はい。酒田さん」

「あたし、あぶみでいいよ、あぶみで」

「あ、あぶみさん」

「さん、も、いらないけど、でも、その方がヒロちゃんらしいね。ね、高千穂さん?」

「……この流れで、なんであたしは?」

「高千穂さんはもう、尊敬の人だから」

「うぐ……」

「たぶん、ヒロちゃんにとっての、鈴木先生が、あたしにとっての高千穂さんだから。だから、その高千穂さんをぐいっと引き上げてくれた鈴木先生と、その鈴木先生との縁を繋いでくれたヒロちゃんには感謝しかないんだよね」


 ……酒田さ……あぶみさんは、とても甘え上手のような気がします。


「本当に、鈴木さんには、感謝しか、ないです」

「そう? 感謝以上の気持ちがありそうだけどね?」

「うぅ……」

「好きなんだよね? ね?」

「………………う、はぃ」

「うんうん、わかる。どう考えても、好きになるしかないと思うね。鈴木先生、すごすぎるもんね」

「……岡山さん、本当に、もう、ロスト分は、なんとかなったの?」

「はい。ショートソード3本分、15万円ですけれど、もう、月末になっても問題ない状態です」

「え、3本? 2本じゃ?」

「いえ。実習の日の、実習の後で1本、次の土曜日の朝に1本、その次の日曜日の朝に1本で、その時に鈴木さんにゴブリンから助けて頂いて、そのまま武器のないわたしをダンジョンから救出して下さったので。それで、そのまま、一緒にダンジョンへ入って下さることになりまして」


 ……全てを話す訳にはいきませんけれど、なんとか、納得して頂かないと。


「今日は1万円を超えて……いや、でも、15万円には少し届かないような……」

「今日は、途中で訓練も入りましたから。あれがなければ、どうなりますか?」

「あ、3周できる……いや、それだとスタ……あ、ポーションで……いや、それでも少し足りないか……?」

「それは土日ですね。鈴木さんは、1日中、ダンジョンですから……」

「は……?」

「さすがは鈴木先生……」

「秘密でお願いしますね。鈴木さんお一人なら、小鬼ダンは1周、40分もかかりませんよ?」

「早過ぎるでしょ、鈴木くん……」

「寮の朝食時間の関係で、朝は7時45分に待ち合わせしていますが、鈴木さんは7時の開門と同時にダンジョンへ向かいます。わたしとの待ち合わせにはダンジョンの中から出てきます」

「さすがは鈴木先生。ダンジョンデートの待ち合わせで、そのダンジョンから現れるとか……」

「で、でーと……」

「ひょっとして『小説版ドキ☆ラブ』みたいなダンジョン前で「待った」「今来たとこだよ」みたいなやりとりとかあったりしてね」

「い、一度だけですけれど、鈴木さんが時間ぎりぎりに戻ってきて、今朝は、それがありました……」

「わぁ、あるんだね? すごい!」

「酒田さんの知りたい情報はちょっとズレてるけど……つまり朝7時スタートで寮の門限ぎりぎりの19時近くとなると、約12時間で、16か、17周くらい、か……2周を4人で割って1万円だから、2人なら……確かに休日1日で15万円はあるか……」

「それに、ボス戦だけを一人ずつでこなせば……」

「あ……その方法なら、ボスの魔石は周回数の2倍に……なるほど、それなら、できるかな……ああ、だからポーションの分、借金に、ね……でもそれだと、岡山さんからしてみれば、学校への借金が鈴木くんへの借金にすり替わっただけのような気も?」

「少なくとも、鈴木さんへの借金で退学になることはありませんし、卒業までに貯めて卒業して返せば、利子もないのです。わたしは助けて頂いたと思っています」

「うん、そうだよね……」

「あたしももう、そのお仲間だけど……まあ、いいか……」

「あ、21時になる! ね、ヒロちゃん、お風呂、行こ?」

「あ、はい。行きましょう」


 ……とりあえず、隠し部屋のことはごまかせたと思います。


 寮のお風呂は、18時から22時まで利用できます。シャワーだけなら6時から23時です。また、ロッカー棟でもシャワーは使えます。

 ただ、慣例というか、空気というか、雰囲気というか、そういうものがございまして、1年生は18時から19時までか、21時から22時までに入るようになっています。マイナールールというものらしいです。

 これは、先輩方の中には外のダンジョンへ行っている人も多く、18時からには間に合わないことと、門限の19時ぎりぎりに戻って、そのまままずお風呂を使いたいこと、それが重なって、1年生はその外れた時間を利用するとのことです。


「酒田さんはお風呂でも口を滑らせないように気を付けて」

「はーい。了解です、高千穂さん」

「心配……」

「ふふっ……」


 あれほどまでに追い詰められていたわたしがこんな風に笑えるなんて、本当に鈴木さんのお陰です。

 それにお友達と一緒にお風呂です。『ドキ☆ラブ』で憧れていたお友達との大浴場のシーンが現実のものになります。それも含めて、お友達がいるということが、本当に嬉しいです。いったい、どんな話をすることになるのでしょうか。なんだかわくわくします……『ドキ☆ラブ』のような大きさトークとか、お肌すべすべ勝負とか、なってしまうのでしょうか……。







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― 新着の感想 ―
[一言] 1章エピローグで外ダン行こうかって思ってるから高千穂さんと酒田さんも25日までに50個集まってる説あるんだよなあ 休日だから二人で行くだけかもしらんけど クラン名は卒業まで決めないのかなあ…
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