ヲタッキーズ89 証人はシングルマザー
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第89話"証人はシングルマザー"。さて、今回は保護中の証人がギャングに襲撃されます。
デート後の襲撃に、情報漏洩を疑われた主人公は、ヒロイン達からは総スカンを食いながらも単身、解決に挑み…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 全員シングルマザー
気持ち良く酔っ払ってるリリィ。
白のカクテルドレスで目一杯おシャレした彼女はワインをぐびっと飲む。
思いついたように手を伸ばし、テーブル越しに僕の頬を撫でては微笑む。
あ、危ない!
案の定、ワイングラスをひっくり返し大騒ぎだ。白いドレスに赤いシミ。
バツの悪そうな顔をしたのも束の間、店を出る時には、堂々と腕を組む。
恋は女をタフにスルw
マンションの前で、突然キス顔になるのを、陽気に笑い飛ばして見送る。
ドアに手をかけ、クルリと振り返ると、唇が"あ・り・が・と"と動く。
バイバイ←
部屋に入りゲームをしていた7才の娘に酒臭いキスをしては嫌がられる。
リリィは、シングルマザーだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
史上最年少の首相官邸アドバイザーを務める車椅子だが国宝級の超天才、ルイナのラボ。
「気をつけて!重いわょ!」
「任せて」
「開ける?ナイフ、貸そうか?」
宅配便の大きな箱には、ルイナの著書"ヲタ友の法則"が、ギッシリと詰まっている。
「ルイナの本ょ!やっぱり紙ょね!」
「おお!ついに発売日。明日はサイン会だ」
「素敵な写真!」
裏表紙にはゴスロリで車椅子に座るルイナが著書を手にニッコリ微笑む。確かに良い絵。
「どこにサインをするのかな。ねぇテリィたんは、いつも何処にサインするの?」
「タイトルページだ。著者名の横」
「どんなサインにしょうかな?」
一応、先輩作家の僕がアドバイス。
「サインの長さは、サイン会に押しかける人数に合わせて調整しましょう。適応アルゴリズムで1人当たりの時間を出すわ。3時間のサイン会だから参加者が1000人として…」
「どーやら巻尺とストップウォッチが必要みたいだな」
「うふ…あら?テリィたん、お洒落なジャケット。ミユリ姉様とデートしてた?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。リリィのマンションで呼鈴が鳴り、娘が嫌々ゲームをポーズにして立ち上がる。
「あ。ママが出るから…きっとSATOょ」
SATOはアキバに開いた"リアルの裂け目"からヲタクを護る防衛組織だ。
身分証を確認したリリィがドアを開くと、銃口がラッパ型に開いた音波銃w
「逃げて!」「きゃー!」「ママ!」
室内に突き出された音波銃に咄嗟に掴みかかるリリィは膝を撃ち抜かれる。
倒れながらも娘を階段へと逃がすリリィ。必死に侵入者の脚にすがりつく。
「このクタバリ損ない!」
殺人音波が乱射され、リリィの白いドレスは鮮血に染まり、切り裂かれる。
警報ブザーが鳴動スル中、トドメを刺されるリリィ。娘はベッドの下へと…
侵入者のブーツが目の前を歩くw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
30分後の襲撃現場。黄色い規制テープが貼られ、制服警官が立ち、ストレッチャーには…
「ママ!ママ!返事をして!」
すがりつく少女を振り払うようにして神田消防の救急車に運び込まれるリリィは虫の息。
「南秋葉原条約機構?私は内閣情報調査室のイェガ」
「ヲタッキーズ。コチラは所轄のラギィ警部」
「襲撃犯は、官邸の保護下にある被害者にSATOを語ってドアを開けさせた」
イェガは…ガン黒だ←
「"異次元証人保護プログラム"ね?」
「YES。官邸は、リリィ・クスフと娘のセレリ・クスフを保護してた」
「しかし…娘まで撃たれたの?」
「右肩に1発食らってる」
「でも、トドメは刺されなかった?」
「警報発動後、2分で私達が到着したから」
「早いな」
「リリィには遅過ぎた。ねぇ彼女ったらホロ酔いでデートってコーデだった。相手に心当たりは?」
イェガの冷たい視線を浴び、僕は口を開く。
「デートの相手は…僕だ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「彼女は、僕が壊滅させた、フランスとロシアで指名手配されてるキャミソール姿の銀行強盗団"キャミソ・アイ"の女ボスなんだ」
「え。レオタード姿の美術品強盗"キャッツ・アイ"じゃなくて?」
「全く別物だ。単なるパクリだが…」
イェガはガン黒パワーで押してくる。
「あの強盗はRICON法の適用になってる」
「組織犯罪?何で?」
「リリィの情夫ジェクは、異次元マフィアの中堅で"リアルの裂け目"の向こう側で捜査中に消された」
「え。リリィってマフィアの情婦だったの?アキバじゃカレー屋さんだょ?」
「リリィは、夫の関係者を全て把握している最重要証人だった。"裂け目"が開いて以来、証人を失った初のケースょ」
「これまではゼロ?」
「保護下に置かれている間はね。それで今夜は何があったの?なぜ彼女を公の場に出したの?ソレも、よりによって貴方と」
「彼女が望んだ」
「テリィたんは、規則を破りセイフティハウスから彼女を連れ出してる。2ヶ月で4回も」
「自宅から出るのが違反なのか?」
「顔の知れた"国民的ヲタク"と出るのはね。リスクが無視出来ないわ」
僕は、立場がなくなるw
「どういう意味だょ?」
「襲撃犯の侵入は、テリィたんが招いたってコトを自覚して」
「ヲタクに責任を転嫁するな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ドアが開いてたルイナのラボに飛び込む。
「昨夜の襲撃事件の"捜査半径"の絞り込みを頼む!」
「え。アレ、テリィたんが殺ったの?でも、時間が経ってるから今から算出しても…ってかテリィたんココにいるし」
「とにかく、頼むょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「リリィは"リアルの裂け目"の向こう側で異次元人マフィアの大物、アルフ・レッドに関スル証言を行う予定だった」
「敵性証人だったの?ソレで保護されてたのね。アルフの罪状は?」
「恐喝、資金洗浄、薬物取引、売春…まだまだアル。リリィの情夫ジェクが情報提供に応じ殺害された。一方アルフは、近々控訴審が予定されてる」
本部のモニターに、運転席で射殺されたジェクの画像が写る。額に2発。処刑スタイルだw
「官邸は、悪党のジェクをなぜ保護下に?」
「"リアルの裂け目"のコッチでも向こうでも、巨悪を潰せるなら誰でも保護スル。ソレがウチの方針」
「"裂け目"の向こう側との外交取引の材料にもなる。19人殺しても保護した例もアル」
ソコへモニター画面からルイナが割り込む。
「テリィたんから逃走半径を頼まれたけど、本部はコチラ?」
「ルイナ。テリィたん、襲撃直前にリリィと会ってたのょ」
「マジ?聞いてない。初耳ょ!全く男って」
「リリィは、官邸の保護下にある証人。テリィたんが沈黙スルのも仕方ないわ」
「だから、彼は自分を責めてる。官邸以外で彼女の居場所を知ってた唯一の部外者だから」
ルイナは声を荒げる。
「テリィたんが襲撃を招いたと?違うわ。彼はソンなミスしないし」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は、第3新東京電力のサラリーマンで、会社初の宇宙発電所長をやっている。
宇宙勤務を終え地球に戻ると会社は僕にカウンセリングを受けるコトを求める。
「テリィ所長。また、お客さんですょ」
タイトスカートのカウンセラーが、ヤタラと脚を組替えて集中出来ないので、最近は僧院で座禅を組むコトにしている。
「ありがと、ブラザー」
「テリィたん。私のデバイス、お坊さん達に明らかに嫌われてる」
「このデバイスが持ち込む俗世を嫌っていルンだ」
デバイスは、キャタピラ付きの衣紋掛けで頭の部分のモニターにルイナが映ってるw
「証人保護下にある証人が殺された件、分類回帰ツリーを使おうと思うの」
「CART法だっけ?僕が何処で誤ったかがわかるね」
「テリィたんが誤ったのならね。とにかく、テリィたんの行動分析をスルのは気が重いわ」
「責任は感じてる。でも、真相が明らかになれば、救われるかもしれない」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋捜査本部の取調室。
「あの女狐、ついにクタばったか」
「何てコト言うの?ウソでも良いから同情しなさい。未だ死んでナイし」←
「何故だ?敵性証人が減るのは大歓迎だ」
アルフ・レッドからの事情聴取。
「ソレがアンタの殺人の動機になるわ」
「襲われたのがリリィだけならな」
「つまり?」
「俺なら当事者のリリィだけを消す。娘は巻き込まない。娘まで狙ったとなると、他の誰かの復讐だろう」
「アンタの差し金ではないと?」
「あの女のせいで"裂け目"の向こうじゃ大勢がブチ込まれた。その内の誰かの仕業だ。間違いナイ」
「その中で子供まで撃つのは?」
「知るかょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
襲撃現場。
「犯人はココにいた。タバコの吸い殻がたくさん落ちてる。ココでリリィの帰宅を待ってたんだわ」
「11時に帰宅したリリィを10分後に襲撃してる。尾行じゃなくて待ち伏せてたのね」
「うーん実は、2人はとっくに帰宅してて、11時過ぎまで待って襲ったとか?」
勝手に妄想を膨らませるのは、ヲタッキーズのエアリとマリレで共にメイド服w
ヲタッキーズは、僕の推しミユリさん率いるSATO傘下のスーパーヒロイン集団。
「リリィのファイルに、テリィたんの関与を示す封印資料があったのょねぇ」
「何ソレ?私達も中を見れないの?」
「内調の資料で"異次元証人保護プログラム"関連だった」
ふたりはメイドの勘でピンと来る。
「こりゃテリィ御主人様は…リリィと寝てるわね」
「撃ヤバ。ミユリ姉様、激ヲコパターン」
「ヲタッキーズ!」
メイドふたりが顔を見合わせてると、同じく現場調査中の内調イェガから声がかかる。
「事件の夜、東秋葉原ナンバーの車が2時間止まってたんだって。ソコに」
「誰かナンバーを見た?」
「いいえ。レンタカーとだけ」
「残念」
「でもね。フロントガラスに"神田エンペラー"の駐車許可証があったって」
「ブラボー!しかし、許可証は見てナンバーは見ないナンて」
「誰だってラブホの駐車証の方が気になるでしょ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田リバー沿いにたたずむ老舗ラブホ"エンペラー"。
破城槌を先頭に、完全武装の特殊部隊が突入w
「万世橋警察署!万世橋警察署!」
音波銃や短機関銃を構えた警官隊が突入。
食べかけのハンバーガーが散らかる部屋。
「ニセのSATOのI.D.だわ」
「奴に動きを読まれてた。マヌケのカラだわ!」
「モヌケ…ょね?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"外神田ER"で7才女子が覚醒。
肩の傷がウズき痛そうにうめく。
「テリィたん?私なら…大丈夫だけど」
「わかってる」
「ママは、何をしたの?」
セレリは、リリィの娘だ。
「イェガさんって女の人が…」
「来たのか?」
「電話してきたわ。ママが秋葉原のお友達に会ってないか聞かれた」
「ソレで会ってたのか?」
「ううん。"裂け目"を渡って以来、会ってたのはテリィたんだけ」
僕は、唇を噛む。
「何もかも現実に思えない。みんなが気遣ってくれるけど、私、何も感じないの」
「セレリ。心配しなくて良いんだょ」
「ねぇテリィたん。ママは、いつも貴方の話をしていたわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「警部!ラブホの指紋照合がアクセス拒否されましたw」
「え。何で?もう1度やってみて。検索先は?」
「桜田門のデータベースですが…フラグ付きで見られません!」
頭を抱えるオペレーターを尻目にイェガが資料を持ち込む。
「ソレ、異次元人の殺し屋ナタリょ。多分ジェクの殺害も彼。リリィの証言で有罪になってる。はい、ファイル」
「顔写真もアル…なぜ彼の指紋はデータベースでヒットしないの?」
「5年前に消去したから」
「なぜ?」
「…証人保護プログラムのため」
ラギィ警部は、吐き捨てるように逝う。
「首相官邸は、リリィの襲撃犯まで保護してるの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部でイェガのレクは続く。
「リリィの襲撃犯と目されるナタリを逮捕したのは5年前。罪状は賭博とマネロン」
「ジェク殺害は?」
「証拠不十分だった。でも、リリィがジェクの金庫から顧客リストを持ち出して、結局全員を逮捕出来た。当時、アルフ・レッドと不仲だったナタリを保護下に置いて、池袋へと移した」
「別の街ならリリィと鉢合わせしないから?ソレじゃ復讐が目的といったアルフの話は、ホントだったのね」
「誰かと違い正直だわね」
「どーゆー意味?」
毒を吐くラギィにガンを飛ばすイェガ。
「リスクを承知でナタリを保護したのでしょ?」
「YES。おかげでアルフという大物が釣れたわ」
「ナタリは、ボスを売った見返りに、池袋で新しい身分と上質の生活を手に入れた?」
「証人保護は、必要な制度なの。このプログラムのおかげで、有益な証言を多数ゲット出来るようになった」
「肩を撃たれたリリィの娘にそう言える?所詮は内部告発奨励でしょ?ナタリは、池袋で6回も逮捕されてる。ドラッグ、詐欺、暴行…やりたい放題だわ。何をやっても、最後は内調が出て来て釈放」
「全てバランスょ。証言の重要さと犯した罪を比較すべきだわ…でも、彼は確かにヤリ過ぎたカモしれない」
「何を今サラ…なぜナタリは、リリィの家に行ったのかしら?」
ラギィ警部は一言。
「先ずは、ナタリの居場所ね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SATOのギャレーでパーコレーターの煮詰まったコーヒーを飲んでる。この味が好きだ。
「テリィたん。リリィと寝たの?」
不意打ちを食らわすスピアは、ルイナの相棒でジャージの下はスク水の天才ハッカーだ。
「スピア。何を根拠に?」
「万世橋からリリィのデータってのが来たンだけど、中にテリィたんのファイルがあった」
「僕のファイル?何が描いてあった?」
「ソレが封印扱いで見れないのょ」
「あのさ。実は、僕はその件で左遷されて、以来彼女との連絡も絶ったンだ」
「でも、今回彼女から連絡があって…ふたりは1線を越えた」
「勝手に作るな!」
「でも、リリィはテリィたんといると、きっと安心出来たのね。ミユリ姉様もおっしゃってたけど、テリィたんには、スーパーヒロインを癒す何かがアル」
「みんな僕のバカテクで…」
「バカ」
前から不思議に思ってるコトを口にスル。
「ナタリは、リリィを襲撃後に"神田エンペラー"に戻ってる。未だアキバに用事があるンだ。何だろ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ギャレーから戻ったスピアは、早速データを解析中のルイナに(僕のw)疑問をぶつける。
「ナタリは、未だ秋葉原にいるの?」
「テリィたんは、そう言うのょね」
「三角パス解析を適用してみようかしら。行動パターンが出るカモ」
ルイナのアイデアにポンと手を打つスピア。
「そうね!で、そのパス解析って何?美味しいの?」
「過去の犯罪歴から、ナタリの行動が予測出来るの。例えば迷路のマウス。マウスには、迷路を出たいと言う欲求がアルわ。水や交尾の欲求からね。一方で、迷路には、マウスの嫌いな電気ショックや行き止まりもアル。回避目標の方程式ょ。まだ秋葉原にいるなら、ナタリには回避目標を上回る欲求がアル」
「ソレを割り出せる?」
「やってみるわ。スピアも手伝ってょ」
うなずきながらも、スピアは思案顔だ。
「テリィたんの行動分析をスルのは、テリィたん元カノ会の会長としては気が重いわ」
「確かに重いわね」
「でも?」
「やりましょう」
「テリィたんの仮説が正しければ、リリィが襲撃されたのはテリィたん自身の責任になるわ。その結論ってヤバくね?」
「その時は、黙ってれば良いわ」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ラギィ!ルイナょ!ナタリの過去から、三角パス解析が出来たわ!」
「え。ホント?ばんざーい…って何ソレ?美味しいの?」
「池袋での犯歴と仲間。特にマネーロンダリング関連の逮捕。コレらの変数をパス解析して、ナタリが秋葉原に残った理由を探ってみた」
捜査本部のモニターに三角形の図が現れる。
その真ん中に"ゴール:ドラッグ"の文字。
「ドラッグ?」
「YES。"リアルの裂け目"に派生して出現スル"次元断層"で促成栽培したケシが、秋葉原で大量に出回りだした。今や秋葉原は第2のゴールデントライアングルょ」
「でも"次元断層ドラッグ"なら、東秋葉原中で売買されてるから…」
モニター画面の中でルイナは咳払い。
「この解析で迷惑なのは、過去は不変ってコトょ。"次元ドラッグ"の売買は池袋でも行われてるけど、関わる人間は変わるわ」
「池袋には敵性勢力がいるからね」
「だから、ナタリは組む相手を考えた。半島から来た元"喜び組"系のギャングょ。テリィたん好みの美女ぞろい」
「そりゃ元"喜び組"だモノな。池袋で成功した手口を秋葉原でも?」
「同じ要領で動くハズょ。ナタリの拠点が"神田エンペラー"とわかったから、今後の動きが読みやすい」
「スゴい。過去の行動から次の行動や場所が予測出来るのね?」
「YES。恐らくナタリは、東秋葉原にいるわ。具体的な場所の予測には、もう少し正確な変数が必要だけど」
「とりあえず、その界隈は、ストリートギャングの老舗"赤穂47"の縄張りだけど?」
「ストリートギャング?じゃ桜田門のギャング対策タスクフォースも呼びましょう」
余計な口を挟むイェガ。所轄のラギィは露骨に嫌な顔←
「じゃ私はサイン会に行くね」
「ルイナ、サイン会って、明日じゃなかったっけ?ってか、今、昼?夜?」
「やれやれ。みなさん、最後に寝たのはいつ?」
「誰と?」←
「とりわけテリィたんは、ゆっくり寝て。でも、サイン会の主役の私は行かなきゃ」
「そりゃそうだ」
第3章 ストリートギャング達
捜査本部のモニターに"いかにも悪人"ぽい2人の動画←
「ナタリが"赤穂47"と取引してる。今、奴の隣にいるのが"47"幹部のジール・ギプスょ」
「コレが14時間前の映像?リアルだな」
「ちょっと待った!私の本部で何やってんの?アンタ、誰ょ?」
ラギィが見知らぬ女に食ってかかる。
「ギャング対策タスクのフレデ・リクソ。内調に呼ばれて来たンだけど?とりあえず、握手しましょ」
しかめ面のラギィとムリヤリ握手←
「アンタ達のお陰で、3年間追って来た連中の大規模取引の相手がわかった。私達が捕まえて、所轄に引き渡すわ」
「何言ってんの?絶対ダメ。ウチのヤマょ。アンタ達こそ引っ込んでて」
「悪い話じゃナイわ。今宵、アンタ達にはナタリが手に入る。私達はジールを挙げて、3年も追ってた宿敵"赤穂47"を壊滅に追い込む」
キレイな絵を描く、フレデ・リクソ。イェガがでしゃばる。
「ラギィ、一挙両得ょ。従って。フレデに任せて」
「秋葉原で私に指図しないで」
「官邸の意向です」
横を向くラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヨドバシAKIBAの遊隣堂はドンドン小さくなるw
開店当初はフロア全体だった本屋も絶滅危惧種←
「あぁ遅刻かと思ったわ…あら、誰もいない?」
「新刊だし…出版社が宣伝してナイから。僕も"地下鉄戦隊メトロん5"の初版はこーだった」
「テリィたん。私、いつか今日を笑える日が来る?」
ガランとしてサイン会場に本が山積みになっているw
実はワケあって階下にはファンが殺到、大行列だが…
「将来、トークショーのネタになる。良いスタートだ」
「お!リアルのルイナだ!サインお願いします!」
「えぇ喜んで。貴方がファン第1号ょ!」
蒼いポロシャツが爽やかなイケメンは…モヒカン刈りだw
どーやらルイナ護衛部隊員のサクラらしい。元空挺かょ?
国宝級天才のルイナの外出には、特殊部隊の護衛がつく←
「サインは初体験なの!お名前は?」
「自分はSATOの…失礼、佐藤の太郎でありま…だぜ?」
「OK!"ラブ&ピース、&秋葉原"はい、ありがとう!徹夜で読まないでね!」
「thank you sir…じゃなかった、お宝ゲットうれP」←
敬礼…しかけて慌てて髪をかき上げ本を小脇に抱えて去る。
「ルイナ。僕の本にもサインを頼むょ」
「了解。時間なら十分アルし…でも、テリィたん。私に気を使わナイで」
「何で?友達にも配りたいんだ、サイン本」
「たかが本ょ」
「違う。僕のヲタ友の本だ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。和泉パーク脇に停車中の移動指揮車。
「パレスから全ユニット。ナタリが来たぞ」
「昭和通り方向からジール。プラス手下4名」
「了解。売買したら踏み込む」
カモフラージュした指揮車の中で、ヘッドセットを装着したフレデが取引現場の画像を追う。ジールが話を切り出す。
「今、金を払うわ。数えて」
ジールの手下がナタリに分厚い封筒を渡す。
「問題ないわ」
「そう…じゃサヨナラ」
次の瞬間、秒で音波銃を抜いたジールがナタリを射殺!
「ナタリが撃たれた!全ユニット、突入!」
「麻薬取締部!麻薬取締部!全員、動くな!」
「くそっ!やっちまえ!」
麻取とストリートギャングの間で銃撃戦!
圧倒的な火力で、たちまち制圧されるギャングw
いち早く逃げたジールに麻取がタックル!
「やっと捕まえたぞ、ジール!」
「お前には黙秘権がアル…」
「無駄だ。失神してる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
失神から叩き起こされ取調べを受けるジール。
「アンタ、ナタリを射殺したわね」
「あくまで正当防衛。身の危険を感じたわ」
「ウソ。アンタは正面から撃った」
「タレコミがあったの。ナタリと商売したら殺されると」
「え。アンタ、blood type BLUE?」
「いいえ。単なる真っ当なbusiness person」
「ナタリの話は、誰から聞いたの?」
「取引直前に匿名メールが来た」
「見せて」
「捨てたわ。ビジネス用のスマホは1週間で変える」
「そのビジネス用スマホに親切な匿名が警告してくれたワケ?」
「YES。つくづく人には親切にしとくモンだと思った。ナタリは、ギャングだろうとスーパーヒロインだろうと構わズ、全て殺す。ソレを信じた」
「あのね。ナタリは丸腰だった」
「え。」
「銃も音波銃も持ってなかった」
ココで初めてアワてるジール。
「じゃあ…私はハメられたんだわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マジックミラーで隔てた隣室で、全員が頭を抱える。
「ねぇイェガ。奴をウチに引き渡して。ウチで尋問スルから」
「必要ナイでしょ?ナタリは死んだし」
「ジールがホントにハメられてたら?」
「ソレを信じるの?とにかく、ジールは"赤穂47"の有力証人ょ」
ラギィは目をむく。
「まさか、ジールまで異次元証人の保護プログラムに入れるつもりなの?」
「小さな必要悪。大物狙いの時には良くアルわ」
心の底からウンザリした顔のラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は、サイン会で別れたルイナに会議アプリでボヤく。
「帝政ロシア崩壊の元凶とされるラスプーチンでさえ、僧院から追放されるコトはなかった」
「え。テリィたん、追放されそうなの?"洪水教"だっけ?」
「教祖が仲良しナンだけど、無言の圧力がねぇ」
「私のサイン本を配れば?送料は負担します」
「…サイン本の斡旋が目的?」
ルイナは小さく溜め息w
「実は、ツリー分析の答えが出ないの」
「え。でも、犯人のナタリは…」
「死んだけど、でも、テリィたんは未だ自分を責めてる」
「犯人の正体と目的が判明してルンだから、カー・パリネロ法とかお薦めカモ」
ルイナは大きく溜め息←
「内調の機密データに、テリィたんに関する封印資料があった。今回、ナタリの行動の理由が封印資料の中で語られてると思うの」
「答えが出そうだ。封印されてない資料にこそ注目すべきだ。向き合う女性が2人いる絵の真ん中を塗り潰すと…」
「あら。花瓶?」
「図地反転が必要じゃないかな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
国宝級の超天才にヒントを与えながら、スマホのコチラ側では、ラギィやらイェガやらからヤイノヤイノ攻められる僕w
「ナタリの件で、ジールに尋問したいな」
「ダメょ。証人保護プログラムに入れるから」
「なぜ急ぐんだ?」
「グズグズしてたら巨悪が逃げるわ」
「そのために人殺しまで匿って恥ずかしくないか?」
フレデとやり合う僕に切り札を切るイェガ。
「テリィたんも、証言を得るためにリリィと寝たでしょ?」
「え。テリィたん、最低」
「テリィたんは、推しだけじゃなく、証人にも手を出したのょ!」
「とにかく、ジールと話をさせてくれ」
「既に移送手続きに入ってる。関係書類が揃うまで4時間あげるわ」
第4章 襲撃、その前に
「ジールの移送は4時間後です」
「しかし、ジールが取引相手を理由もなく殺すかしら」
「うーん確かにハメられたのカモしれないな」
僕は、腕組み考える。
「リリィを殺そうとしたナタリは、実は誰かにハメられてたとか」
「となると…ナタリの死を望むのは誰かしら」
「その誰かは、リリィの死も望んでた」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「大丈夫。私、荷物なら自分で取りに行けるわ。テリィたんはココで待ってて」
「そうか」
「私なら何も心配いらないから」
リリィの娘、セレルに付き添い襲撃現場にいる。
母娘は、マンションを引き払うコトになってる。
「セレル。逆に僕を気遣ってる?」
「ごめんね。私はママからの遺伝でblood type BLUE。ギフテッドょ。そして、私のスーパーパワーは…」
「テレパスだょな。僕の心も読んでるワケだ」
「ママの心もね…つまり、ママがテリィたんにメロメロなコトも」
「でも、ソレで僕の罪の意識は重くなるばかりだ」
「知ってる」
「痛みの深さは変わらないんだょ」
「ずっと一生?」
「人生ってソンなモンさ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、取調室ではアルフ・レッドが吠えている。
「警部さん。リリィは殺されても仕方のない女ナンだ!」
「そりゃアンタの敵性証人だモンね」
「何処の世界でも裏切り者を許しちゃダメだ」
ソコに突然、内調のイェガが乱入w
「STOP!ソコまで。ラギィ、彼の身柄を返して」
「ちょっと待って。取り調べ中ょ!彼は事件解決の鍵なのに!」
「相互協力になってナイ。連れ出して」
アルフがニヤニヤ笑い。
「おっと内調と所轄で内輪モメか?何処も大変だな。どっちの女が勝つか高みの見物だ」
「ウチがジールの身柄をゲットしたら返してあげるわ」
「勝手にして!」
机を蹴飛ばすラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は、セレルを見送り、ルイナのラボを訪問。
「リリィはアルフの指示で襲撃されたと思うの?」
「YES。ルイナに見つけて欲しいのは、アルフとジールの接点だ。ナタリ殺しも何か出て来るカモしれない」
「OK。"複合生産シュミレーター"を適用すれば、アルフの犯歴から次の犯罪を予測出来るわ。えっと変数は…」
僕は、描き散らかした黒板の1つを指差す。
「おっと。コレは何だ?テリィがどーしたとか…」
「あ。ソレはテリィたんの分類ツリーと回帰ツリーょ。途中だけど」
「僕を分析してるのか?」
「リリィの襲撃にテリィたんの責任が無いコトの証明をしてるの」
「…ソレで?」
「先ず、事件について調べたわ。関係者との接点を数値化しながらテリィたんの結論を分析した。テリィたんの結論に至るプロセスを木の成長に例えると、ある結論に至るまで選択は多様に分岐する。そこで、各選択の価値を数値に置換して比較しながら刈込んでみた。つまり、起こり得たコトを予測したワケ。結果として、テリィたんの決断や行動が、リリィ襲撃を招いた確率は、かなり低いってコトがわかった」
「そりゃありがたいけど…この空白は?」
僕は、ツリーにポッカリ空いた空白を指差す。
「ソコは…変数の不確定要素に起因スル空白部分ょ。ねぇテリィたん。リリィとの関係で、何か隠してナイ?ミユリ姉様には黙っとくから教えて」
僕は、考え込む。
「実は…アル」←
「oh yeh!」
「話せば、ジールとアルフの接点もわかルンだろーな」
「モチロン」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜。捜査本部に呼び出される内調のイェガ。
「何?ジールなら既に保護したけど」
「アルフ・レッドのファイルに何度も同じ名前が出て来る。イェガ。貴女の名前ょ」
「待って、ラギィ警部。何の話?」
いつもは太々しいイェガだが、明らかに動揺してるw
「ジールは、ナタリと面識があった。でも、ナタリが秋葉原に来た記録がナイの。何故か消えてる。誰かさんの指紋と同様、貴方が抹消したのでしょ?」
「私を疑うの?侮辱だわ」
「いくらで買収されたの?」
ズバリ切り込むラギィ警部。
「何を的外れなコトを」
「事実でしょ?」
「わかったわ…あのね、アルフにはね。もともと2人を襲う動機がナイの」
「笑える。敵性証人が2人も減れば控訴審では、かなーり有利なハズ」
イェガは、躊躇いがちに話す。
「あのね。控訴審はなくなった。半島系のマフィアを一掃するため、アルフは司法取引に応じたの」
「げ。とゆーコトは、アルフも証人保護プログラムに入るの?」
「内密にして。だから、私は貴女達の敵じゃないわ。私はシロょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「僕はシロだ!」
ルイナのラボにミユリさんがいるw
ルイナに語った話は全部筒抜けか?
「で、イェガもシロだったのかー。やっぱり、ツリーに不確定要素があると正確な分析は難しいわ」
「ソンなコトより、ルイナ。テリィ様の責任は?」
「あ。ミユリ姉様、安心して。同じ不確定要素はアルけど、重大なミスはなかったと思うわ」
ミユリさんが突っ込む。
「さっきから連発してる不確定要素って?」
「内調のファイルにある封印資料ょ姉様」
「まぁ。でも、首相官邸アドバイザーのルイナなら、当然アクセス権が付与されてるわょね?」
げ。ミユリさん、鋭い。知ってて僕を責めてたのかw
「で、でも見てないモン!」
「わかった!僕から話す。あのファイルには、彼女がセーラー戦士のコスプレでコミケに逝った写真が…」
「え。コミケでセーラー戦士を?で、テリィ様も"合わせ"を?」
「嗜み程度には」←
「まさか、襲撃された夜も?」
「友人として会ってただけ!」
「テリィ様は、私がスーパーヒロインに変身した"ムーンライトセレナーダー"のコスプレには御不満なのね…」
「わ。待ってくれ!5階です、じゃなかった、誤解だから」
「私、元カノのエリスさんが変身した"アキバキラー"にも敗北したし…」
「ソレ、もう何話も前の話だょね?余り引きずると読者が引くから気にするな」←
「無理です」
「とにかく!僕は彼女を利用などしてないから」
「ソレは、わかっています。ソレにリリィさんと"コスプレ合わせ"をしたコトで、アキバの半島系マフィアを一掃出来るのかもしれないのでしょ?」
ココで哀れに思ったかルイナが車椅子から助け船←
「私の分類回帰ツリーに因れば、テリィたんが"コスプレ合わせ"をしてなければ、リリィ&セレルの母娘は5年前に殺されていた可能性もあるの」
「おぉ!刈り込まれた可能性の中にはソンな…」
「だから、テリィたんが自分を責めるコトは、リリィの勇気ある決断を辱めるコトになると思う」
良いコト逝うなー。さすが超天才だ。ホレボレ←
「で。テリィたんの封印資料だけど、リリィ母娘のセイフティハウスの住所も明記されてたワケ」
「げ。ルイナの他にもファイルを見た奴がいるか?」
「アクセス資格があればね」
「ルイナ。閲覧履歴はもう調べたのでしょ?教えて」
「はい、姉様。この手のファイルは閲覧すると、電子指紋が残ります…で。この人」
僕とミユリさんは、思わズ顔を見合わせる。
「この人がテリィ様を…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ジールは?」
「コレから移送するトコロだ」
「OK。ちょっと話が」
万世橋の駐車場で、イェガはフレデに話を持ちかける。
「ねぇ私も入れてょ」
「え。何に?」
「封印資料を見たわ。アンタはナタリと通じてた。その上でジールに取引内容を密告した。ついでに、彼の犯歴も抹消してあげた。そうでしょ?」
「おいおい。何で俺があんな街のクズと組まなきゃいけないンだ?」
「お金欲しさょ。だから、リリィのセイフティハウスの場所も教えた。ナタリにジールとの取引に行かせて、ジールに殺させた。ねぇ大した戦略家ょね?黙ってて欲しければ、私に口止め料を払って」
瞬間キョトンとしたフレデは、突然笑い出し空を見上げる。
ビル屋上で双眼鏡に集音マイクのラギィが慌てて身を隠すw
「惜しかったな、新橋鮫!すまんが、全部お見通しだ!」
屋上で頭を抱えるラギィ警部。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
イェガが平謝り←
「私の芝居が下手だったわ。ごめんね」
「フレデだけが、リリィの資料を読んでた。でも、奴を挙げるには自白が必要だわ。畜生、絶対奴に償わせてやる」
「ジールは接見室では、おかしな所作はなかったのかな?」
焦燥感が募る捜査本部。僕は視点を変えてみる。
「ジールの訪問者は?」
「数人です。母親、友人。それに愛人も」
「待て待て待て。その愛人との接見画像、少し巻き戻して。そこ。その愛人が机に広げてるモノは何?」
ガングロ愛人が、雑誌の見開きを見せているが、ソコには暴走族の落書きみたいなサイケデリックな絵が描かれている。
「この絵は暗号ょ。メッセージが隠されてる」
「ストリートギャングは、よく絵の中に暗号を隠すわ」
「ステガノグラフィーかしら」
捜査本部のモニターから会議アプリでルイナの声。
「ちょっと見せて。その絵を拡大出来る?」
「刑務所の外の手下が持つ別の絵に、あの絵を重ねるとボスからのメッセージが浮かび上がるって仕掛けょ」
「OK。じゃイメージアルゴリズムで、その"手下が持つ別の絵"とやらを探ってみるわ」
「ソンなコト、出来るの?」
「ホラ、例えば古生物学者って、骨を完全に掘り出すまで、ソレが何の骨かわからないでしょ?私のアルゴリズムは、基本は損傷した画像の修復法ナンだけど、グレースケール画像も鮮明化出来るの。迷彩図から暗号を浮かび上がせられるわ」
「長くかかる?」
「ちょっとコーヒーでも飲んでて…あら、出来た。意外に、というか超簡単でした。裏メイド通り108」
今度はイェガが大声を出す。
「ソコは…ジールのセイフティハウスの住所ょ」
「なぜジールはソレを手下に教えるのかしら?コレから手下を裏切るのに」
「全てジールの策略だ。最初からジールは脱獄するつもりだった。でも、蔵前橋から脱獄するより、保護プログラム先のセイフティハウスから逃げ出す方が簡単だから」
冴え渡る推論に、ミユリさんがホレボレという顔←
「"赤穂47"のギャングが内調のセイフティハウスを襲撃スルつもりだ。ミユリさん、ヲタッキーズの出番だ」
「はい、テリィ様」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
裏メイド通りを疾駆スル黒いSUV。
中には武器満載のギャングの手下。
「危ねぇ!」
突然、目の前にアキバ風メイドが2人"舞い降りる"。
「やっちまえ!」
急停車したSUVから拳銃、短機関銃…ん?ロケット砲まで構えた手下どもが転がり出る。
同時に数台の黒のSUVが路地から飛び出して進路を塞ぎ、中から警官隊が続々飛び出す!
「万世橋警察署!万世橋警察署!全員動くな!武器を捨てろ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
裏メイド通り108。マンションのドアがノックされる。
「どなた?」
「ヲタッキーズょ…あ、メイド服だけどデリの誤配じゃないから!ってか動くな!ジール・ギプス、逮捕スル。両手を後ろに!」
「念のために言っておくけど、アンタの手下は来ない。一足先に全員、蔵前橋重刑務所だから」
ガックリと首をたれるジール。
何も知らないフレデが慌てる。
「何の容疑だ!ウチの罪人だぞ!」
「だから、殺人未遂」
「殺人?誰の?」
「アンタょ」
呆気にとられるフレデに逆上したジールが食ってかかる。
「野郎、ハメやがったな!"赤穂47"を怒らせて生きてられると思うな!お前、必ず殺すぞ。覚悟しとけ!」
大騒ぎしつつ連行されて逝くジール。
イェガがフレデの肩をポン!と叩く。
「ヲタッキーズは、アンタの命の恩人ょ」
「私は、誰もハメてない!」
「ラギィ、ストリートギャングを怒らせた奴の平均寿命は?」
「もって数日ね」
フレデが態度を豹変させる。
「証人保護プログラムを要請スル」
「自白が先ょ」
「保護プログラムとの引き換えが条件だ」
「では、蔵前橋の雑居房へどーぞ。元警官は、1夜ももたないわ」
「…ナゼだ?!」
「何の自覚もナイのか?」
「ジールは"赤穂47"壊滅の鍵だ。ヲタッキーズだって妥協はスルだろ?」
「人命以外ならね」
「"赤穂47"の壊滅で、何千人もの命が救われるハズだった。ソレら犠牲者は、今後君達のせいで死ぬ。君達は、ソレを背負えるのか?」
ミユリさんが答える。
「無理だわ。だって、ウチのTOときたら、リリィの襲撃すら背負えないのだから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したらヤタラ居心地が良くなり、僕を含む常連が沈殿して困ってるw
「あれ?ミユリさん、ネットやってるの?珍しいな」
「はい。ちょっち気になるコトがあって…」
「え。オークション?」
ミユリさんはメイド長なので、カウンターの中でPCを開きながらも、何やら忙しくしている。もちろんメイド服だ←
「うわっ!スゴい!1万円だわ!」
「え。何が?ミユリさんの勝負パンツ?」←
「うーん少し近いカモ」
ルイナのサイン本だけど、まさか1万円って…
あれ?裏表紙の著者近影が…コスプレだょ?
「ミユリさん、ルイナがムーンライトセレナーダーのコスプレしてるょ!車椅子のスーパーヒロイン?こりゃ病んでるな!」
「でしょ?実はルイナに頼まれて…1000冊に1冊、コスプレバージョンの近影を紛らせてるらしいです」
「そりゃまたアコギな…じゃなかった迷アイデアだ!落札は4日後?わ、もう2万円超えてるw」
こりゃタイヘンだ。とりあえず10冊、買っとこう←
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"証人保護プログラム"をテーマに、証人で異次元マフィアの情婦、その娘、証言で追い詰められた異次元ギャングの大物、小物、証人保護を申請するストリートギャング、同じくギャング対策タスクフォース、彼等を追う超天才やハッカー、敏腕警部にヲタッキーズなどが登場しました。
さらに、超天才の本のベストセラー騒ぎや主人公と証人の間の微妙な恋愛感情などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、コロナ第7波?を迎える秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。